おせちが食べきれない

もう食べられない(写真:iStock)
友人の沙織(38)は、元日の昼過ぎにぽつりと言った。
「正月ってさ…一気に現実見せてくるよね」
彼女の目の前には、おせちの重箱。黒豆、数の子、伊達巻。どれも嫌いじゃない。むしろ好きだ。なのに二日目には、胃がずっしり重い。
「昔は三が日ずっと食べ続けられたのにさ。今は一段で限界」
そう言いながら、胃薬を探し始める姿に、笑っていいのか分からなくなる。
こたつに入れば入ったで、今度は腰が痛い。立ち上がるたびに「よいしょ」という声が、無意識に出る。
「え、今の私のお母さんと同じ動きしてない?」
沙織はそう言って、自分で自分にツッコミを入れていた。
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消えゆく年賀状にしんみり

昔はたくさん書いたけれど(写真:iStock)
正月三が日というのは不思議な期間だ。仕事は休み。予定も少ない。なのに、心も体もまったく休まらない。むしろ、普段は見ないものを、これでもかと突きつけられる。
例えば、年賀状。かつては、ポストを開けるのが楽しみだった。「誰から来てるかな」そんなワクワクがあった。
でも今はどうだろう。そもそも枚数が少ない。出す人も減ったし、来る人も減った。
「今年、10枚も来てないかも」
沙織はそう言って笑ったが、どこか複雑そうだった。交友関係が整理された証拠。それは成長でもあり、老いでもある。
