
北条司原作の伝説的作品「キャッツ・アイ」の完全新作アニメが9月26日に配信開始し、“令和版キャッツ・アイ”が早くも話題を集めている。「キャッツ・アイ」といえば、1981年から1984年まで「週刊少年ジャンプ」で連載された人気漫画。北条は「シティーハンター」シリーズや「エンジェル・ハート」「SPLASH」「F.COMPO」などの名作を生み出している漫画家だが、「キャッツ・アイ」が連載デビュー作だ。読み切りで始まったが、大きな反響を受けて“連載”が決定し、当時福岡に住んでいた北条は急きょ上京。北条にとっても活動拠点を変えてしまった大きなターニングポイントの作品だった。そんな「キャッツ・アイ」シリーズを振り返ってみる。
■主人公は美人怪盗三姉妹
同作の主人公は、ある時は喫茶店「キャッツアイ」を経営し、またある時は美術品を狙う“怪盗”の顔を持つ美人三姉妹(来生三姉妹)。次女の瞳はストレートの黒髪が特徴的で、もちろん運動神経も抜群。犬鳴警察署の刑事・内海敏夫が恋人ということもあって、三姉妹の中でも物語の中では一番中心となる人物。長女・泪(るい)はふんわりとしたウェーブがかかった髪形で、色気、艶っぽさが漂う大人の女性といった感じ。冷静な判断ができる慎重な性格で、“司令塔”的な役割を担っている。
三女の愛は高校生。ショートカットの活発で明るい“愛されキャラ”。泪や瞳と比べるとまだまだ幼い部分も多く、危なっかしい行動に出ることも。コンピューターなどの機械に強いので、そういった頭の良さ、回転の速さも大きな特徴となっている。
この三姉妹は何でもいいから盗むというのではなく、画家だった亡き父親の絵を取り戻すというのが目的なので、ターゲットにする美術品はしっかりと厳選されたもの。盗む前にネコの絵と「CAT’S EYE」の名前が入った“キャッツカード”で予告するのも特徴。そして体にピッタリフィットしたレオタードを着ているのも強烈な印象を与えてくれている。
北条自身はレオタードではなくボディースーツのようなものとして描いていたようで、当メディアのインタビューでも明かしているが「編集部が“レオタード”と言っていたので、そう伝わっていったんだと思います。みんなが“レオタード”って言うから、だんだんとレオタードっぽい形になっていったところはあります」とのこと。
瞳の恋人・俊夫は犬鳴警察署の「キャッツ特捜班」に所属し、キャッツ・アイを捕まえることに専念。俊夫は瞳たちがキャッツであることを知らず、キャッツを捕まえたら瞳にプロポーズしようと考えている。刑事と泥棒の禁断の恋、捕まえてプロポーズしたいが捕まえてキャッツの正体を知ってしまったら恋が終わってしまう…。「キャッツ・アイ」は警察との追いかけっこもそうだが、瞳と俊夫の恋の行方も大きな見どころだと言える。
1983年7月に日本テレビ系でテレビアニメ化され、「キャッツ・アイ」人気が爆発。1984年3月まで放送され、さらに第2期が1984年10月から1985年7月まで放送された。杏里が歌う主題歌「CAT’S EYE」もオリコンのウイークリーシングルランキングで1位を記録する大ヒットとなった。
■早見優、未唯mieらで初の実写ドラマ化
1988年には「CAT’S EYE キャッツ・アイ ミッドナイトは恋のアバンチュール」(日本テレビ系)というタイトルで実写ドラマ化されている。瞳を早見優、泪をピンク・レディーの未唯mie、愛を立花理佐、俊夫を故・西城秀樹さんが演じた。映像ソフト化されていないので貴重な作品に。
むしろ実写版としておなじみなのは、1997年に公開された映画「CAT’S EYE キャッツ・アイ」だろう。「夢みるように眠りたい」「私立探偵濱マイク」などを手掛けた林海象が監督を務め、愛を内田有紀、瞳を稲森いずみ、泪を藤原紀香が演じた。今も第一線で活躍中の3人が28年前の作品で顔をそろえていた。なお、この作品は瞳ではなく、三女の愛が主人公として描かれていて、レオタードではなく黒のレザースーツで猫耳付きというところが原作と異なっている。主題歌は杏里による「CAT’S EYE-2000-」で、こちらは最初のアニメを継承したものになった。
ちなみに、この作品で泪を演じた藤原は、2024年に明治座創業150周年ファイナル公演として上演された舞台「メイジ・ザ・キャッツアイ」に瞳役で出演。物語の舞台を明治時代に移した作品で、剛力彩芽(愛役)、高島礼子(泪役)と共演したことも記憶に新しい。
■2024年にはフランスで実写ドラマ化
アニメ「キャッツ・アイ」はアジアやヨーロッパなど海外でも人気が高く、特に日本の漫画・アニメのファンが多いフランスでは、2019年に北条の「シティーハンター」を「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」として実写映画化。「キャッツ・アイ」も実写ドラマ化された。
2024年11月にフランスのテレビ局TF1で「CAT’S EYES」として放送されたフランス版キャッツ・アイは、「運命の炎」「彼女たちの戦火」などで知られるアレクサンドル・ローランが監督を務め、三姉妹をカミーユ・ルー、コンスタンス・ラべ、クレール・ロマンが演じた。製作費は2500万ユーロ(約40億円)に及ぶというから、相当気合の入ったプロジェクトと言っていい。
三姉妹の名前は最初のアニメ放送時に付けられた名前がフランスで定着しているため、瞳は「タム」、泪は「シリア」、愛は「アレクシア」に。フランス警察の組織犯罪対策部(BRB)所属のクエンティンが“俊夫”にあたるキャラクター。物語は2023年のパリを舞台にしたオリジナルストーリーで、エッフェル塔やルーヴル美術館などの人気観光スポットも多く登場する。舞台や名前は違えども、美しい夜景をバックに三姉妹がさっそうと活躍する姿は魅力十分だ。
■令和版キャッツ・アイが誕生
そういった歴史、軌跡がある「キャッツ・アイ」がディズニープラスのスターで令和に新作アニメとしてよみがえった。喫茶店「キャッツアイ」を経営する美人三姉妹という部分を含め、原作へのリスペクトを感じる仕上がりになっている。愛が使う機械が令和らしく進化していて、犬鳴警察署の様子もモニターで見られるようになっているが、キャッツと俊夫たちとの追っかけっこ、瞳と俊夫の禁断の恋といった見どころはそのまま。
しかもメガネ姿が印象的な女性刑事の浅谷光子と、“ねずみ”ことフリーライターの神谷真人が登場する。特に神谷は原作での人気キャラの一人だが最初のアニメ作品には登場していなかったので、“待望の!”という言葉がふさわしいくらい楽しみにしているファンも多いはず。オープニングテーマはAdoが歌う「MAGIC」で、エンディングもAdoによる「CAT’S EYE」のカバーというところも初代アニメへのリスペクトが感じられる。
瞳を小松未可子、泪を小清水亜美、愛を花守ゆみり、俊夫を佐藤拓也、浅谷を日笠陽子、神谷を小西克幸が担当。原作リスペクトに加え、令和版ならではのアップデートされた要素もあって、“期待”しかない「キャッツ・アイ」を楽しんでもらいたい。
◆文=田中隆信
※記事内、作品名の「キャッツ・アイ」の『・』はハートマークが正式表記


