昨年末にニコラ・ヨキッチが左ヒザを痛めて長期離脱となったところへ、控えセンターのヨナス・ヴァランチュナスもふくらはぎの肉離れを発症。キャメロン・ジョンソンもヒザのケガで欠場中と、1か月以上もの療養を要する負傷者が続出しているデンバー・ナゲッツ。
さらに頼みのジャマール・マレーも足首を痛め、現地1月5日のフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦は、控えメンバー中心で挑むこととなった。
先発の中で最も高身長のダロン・ホルムズ二世でも206cmというスモールラインナップではあったが、元MVPのジョエル・エンビードや今季好調のタイリース・マキシーらを擁する相手に好発進を切ると、外のシュートがテンポよく決まって序盤からリードを奪う。
しかし徐々に差を詰められて、前半は58-58とイーブンで終了。その後もタイトな攻防戦は続き、第3クォーターに一時シクサーズが9点差をつけて突き放しにかかるも、ナゲッツは懸命に喰らいついた。
第4クォーターは逆にナゲッツが優位に進め、残り2分を切って120-115と5点のリードを手にする。ところが相手のルーキー、VJ・エッジコムにビッグショットを決められ、続いてマキシーにもペネトレーションを許し、オーバータイムへともつれこむ展開に。
延長戦は直前に追いついた側が勢いに乗ることが多いが、ここでもナゲッツの面々はアグレッシブに立ち向かった。
最後は1点ビハインドの残り5秒、ブルース・ブラウンの速攻からのレイアップに対するエンビードのブロックがゴールテンディングと判定され、125-124の1点差でナゲッツが劇的な勝利を手にした。
3連勝中と好調だったシクサーズの敵地で奪った価値ある白星。しかも2枚看板を筆頭に主力がほぼ不在という状況で、オーバータイムの死闘を制した奮闘に、デイビッド・アデルマンHC(ヘッドコーチ)は試合後、「自分は長年この世界にいるが、今日は自分がこれまで関わってきたNBAの試合の中で、最高の勝利のひとつだ」と、感極まった表情で選手たちを称えた。
「出場した全員が試合に何かをもたらした。ただひたすらに勝利を求めて戦い続けた。どれほど君たちのことを誇りに思っているか言葉では言い表せない。
主力のほとんどがプレーできないとわかった状態で我々はここに乗り込んだ。勝つために来た。どの試合にも、我々は勝つために試合に挑んでいるんだ...もうこの辺でやめておくよ。感情的になりそうだからね。それほど、本当にこの試合はスペシャルだった。実に素晴らしかった」 一方の選手たちは、この試合で勝ち星を掴むことができたのは、アデルマンHCの手腕の賜物だと感じていた。
ベンチスタートながら21得点、8リバウンド、2スティール、2ブロックという目覚ましい活躍を披露したジーク・ナジもその1人だ。
「彼(アデルマンHC)が俺たちに力を与えてくれる。アグレッシブに、自分たちのプレーをするように背中を押してくれるんだ。彼は(この試合に勝てると)信じていたし、俺たちも自分たちの力を信じていた。そして俺たちは、自分たちに何ができるかわかっていた。彼が自分たちを信じてアグレッシブに戦うよう後押ししてくれることで、俺たちは自信を持って、全力でプレーできたんだ」
2020年のドラフト全体22位でナゲッツから指名を受けて入団した24歳のナジは、今季で6年目。チーム内ではヨキッチ、マレーに次ぐ古株だが、出場時間は毎年平均10分前後とバックアッパーに定着している。そんななかで、今季初めて30分以上コートに立つ時間を与えられた試合でキャリアハイに並ぶ21得点をマークしてみせた。
「彼(アデルマンHC)はいつも言っているんだ。『このチームは層が厚くてタレント揃いだから、いつ何時でも、誰かが主役になれるんだ』ってね。そしてそのメッセージを、常に発信し続けてくれている。
だから、試合に出られなくても、自分に実力がないからじゃなくて、その日はただそういう流れだっただけなんだって思える。そしていざ出番がくれば、彼は全幅の信頼を寄せてくれる。だから自信を持ってコートに出てプレーすることができるんだ」
シクサーズ戦の前まで今季平均3.8点だったジェイレン・ピケットも、この試合でキャリアハイの29得点を叩き出した。211cmのエンビードをかわして決めた鮮やかなステップバックスリーなど、計7本の長距離弾はチームに勢いをもたらした。さらに決勝点をあげたブラウンも、シーズンハイの19得点を奪っている。
アデルマンHCやナジの言葉通り、チャンスを与えられれば結果を出せるのだということを、それぞれが証明してみせた。
「今から20年くらいたって、みんなが歳を取った頃、ビールでも飲みながらこの試合のことを振り返る。これはそんな出来事になったと思う」
アデルマンHCは、そんな情緒的な表現で試合後のインタビューを締めくくった。バックアッパーとしてチームを支えるメンバーが総出で勝利を掴み取ったこの一戦は、ナゲッツに、結果に勝る勲章を与えたようだ。
文●小川由紀子
ナゲッツファン安堵…左ヒザ負傷のヨキッチは“最悪の事態”を免れ最低4週間の離脱。しかし先発4人を欠く危機的状況に<DUNKSHOOT>

