
恐竜とともに、白亜紀の終わりで姿を消したとされてきたアンモナイト。
教科書的には「巨大隕石の衝突で一斉に絶滅した生物」の代表例です。
しかしポーランド科学アカデミー(PAN)の最新研究により、この常識が揺らぎ始めています。
実はアンモナイトの一部は、あの地球史最大級の大惨事をくぐり抜け、しばらくの間は生き延びていた可能性があるというのです。
研究の詳細は2025年12月31日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
目次
- アンモナイトは隕石衝突を生き延びていた?
- どれくらいの期間、生き延びたのか
アンモナイトは隕石衝突を生き延びていた?
約6600万年前、直径10キロメートル級の巨大隕石が現在のメキシコ・ユカタン半島に衝突し、地球上の生物の約75%が絶滅しました。
この出来事は「白亜紀–古第三紀境界(K–Pg境界)」として知られています。
アンモナイトも、このとき完全に姿を消したと長年考えられてきました。
ところが、デンマークのスティーブンス・クリントと呼ばれる海岸の断崖では、K–Pg境界のすぐ上に位置する地層からアンモナイトの化石が見つかっています。
【発見されたアンモナイトの画像がこちら】
問題は、それらが本当に「隕石衝突後に生きていた個体」なのか、それとも古い地層から崩れ落ちて再び埋もれた「再堆積化石」なのかという点でした。
今回の研究では、この疑問を解くため、化石の見た目だけでなく、殻の内部を埋める微細な堆積物まで詳しく調べています。
その結果、殻の中の泥には、隕石衝突後の時代に特徴的な海綿動物の微小な骨針が多く含まれていることが分かりました。
一方、衝突以前の地層に多いコケムシ類はほとんど見られませんでした。
どれくらいの期間、生き延びたのか
この違いは決定的です。
もしアンモナイトが古い地層から削り取られて再堆積したのであれば、殻の内部にも白亜紀型の生物の痕跡が多く残るはずです。
しかし実際には、周囲の岩石と同じ「衝突後の海」を示す特徴がそろっていました。
研究チームは、これらのアンモナイトをその場で生きていた「自生的な個体」と結論づけています。
年代の推定から、これらのアンモナイトは隕石衝突から少なくとも約6万8000年後まで生存していたと考えられます。
これは、世界で確認されている中でも最も遅い時期まで生き残ったアンモナイトの記録です。
ただし、その後の地層からは姿を消しており、最終的には回復することなく絶滅したとみられます。
研究者たちはこれを「生き延びたが復活できなかった集団」と位置づけています。
今回の研究は、アンモナイトが「隕石で即座に絶滅した生物」ではなかった可能性を示しました。
地球規模の大災害のあと、彼らはしばらくの間、傷ついた海で生き続けていたのです。
では、隕石ではないとすれば、最後にアンモナイトを絶滅させた要因は何だったのでしょうか。
その答えは、まだ地層の中に眠っています。
参考文献
Ammonites survived asteroid impact that killed off dinosaurs, new evidence suggests
https://phys.org/news/2026-01-ammonites-survived-asteroid-impact-dinosaurs.html
元論文
Ammonite survival across the Cretaceous–Paleogene boundary confirmed by new data from Denmark
https://doi.org/10.1038/s41598-025-34479-1
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

