少子高齢化に伴う地方の過疎化の解決策として、2009年度に総務省が制度化したのが「地域おこし協力隊」。都市部から地域おこしに協力してくれる人材を募集して、住民票を移して暮らしてもらいながら、地域の活性化をすすめていくというもの。そんな中、福島県矢祭町では、スポーツをフックとした「地域おこし協力隊」を募集したという。その具体的な施策や効果について取材した。
きっかけはスポーツ人口の減少
小学校で年間を通して行われるようになった、放課後の総合運動教室「地域おこし協力隊」で募集される人材は、各自治体さまざまだ。たとえば地元の特産品生産業や、農林水産業に従事する人。あるいは、その土地の新たな商品開発やその販売戦略を担う人。またはインバウンド観光向けの情報発信に協力する人など。任期は一般的に1~3年だが、移住者は自身の経験や能力を活かした仕事に就きながら、その土地で理想とする暮らしや生きがいを見つけることができるので、そのまま定住・定着することも少なくないという。そんな中、福島県の最南端に位置する、人口約5,000人の矢祭町では、2023年にスポーツをフックにした「地域おこし協力隊」を募集した。なぜスポーツだったのか、その理由を矢祭町教育委員会教育課長の高宮由佳さんは次のように語る。
「人口減少も大きな課題ではあるのですが、スポーツ人口の減少が顕著だということがありました。例えば野球やソフトボールなどの団体スポーツは人数が集まらないために、町内の大会が開けなくなるなどのケースも。スポーツに触れる機会が減るということは、町民の健康問題にもかかわります。ですからスポーツで地域を盛り上げてくれる人材が必要ではないかということで、新たな試みとして『スポーツを通じたまちづくりを推進する協力隊』を募集してみようということになりました」(高宮さん)
その結果、採用されたのが山形県鶴岡市出身で、以前は小学校の教師をしていたという鳴瀬望さんだった。
ランニングイベントに親子で参加する家族も
早朝、みんなで集まってランニングをする朝ランの光景矢祭町の「スポーツを通じたまちづくりを推進する協力隊」に任命された鳴瀬さんの任期は3年。そこで最初の1年は地域を知り、人々に溶け込むことに力を注いだという。
「鳴瀬さん自身が町を知ろうとして町内のいろいろなスポーツ関係団体の集まりにまめに顔を出すなど、積極的に交流をはかってくださったので、スムーズに溶け込んでいただけました。また、1年目の終わり頃には小学校のスポーツクラブで陸上教室を立ち上げていただいたので、子どもたちだけでなく、親御さんとも顔見知りになったようです」(高宮さん)
「地域おこし協力隊」にはさまざまなジャンルがあるが、比較的短い時間で、幅広い世代の町民と距離を縮めることができたのもスポーツならではではないかと高宮さん。町民とすっかり顔なじみになった鳴瀬さんは、その後、朝ランや夕ランなどのイベントを開催した。
「たとえば朝ランは、2週間に1回、土曜日の朝の6時に集合して、みんなで3キロ走りましょうというイベントです。最初はあまり人が集まらなかったのですが、鳴瀬さんがいろいろなPRをしてくれて、今では幅広い世代の方が集まっています。最近はお子さんに誘われて『じゃあ自分も走ろうかな』と思ってくださる方も多いようで、親子連れの参加がとても増えています。みんな和気あいあいとやっていますね」(高宮さん)
