アメリカがベネズエラに侵攻し、マドゥロ大統領を軍事作戦で拘束・連行したとの一報が伝わるとほぼ同時に、韓国を中心に「北朝鮮の金正恩総書記を第二のマドゥロにできるか」の議論が沸騰したという。そして「隠し核を持つ北朝鮮の首脳拘束は事実上不可能」という結論が出された。韓国特派員が明かす。
「これは韓国の独立系メディア『サンドタイムズ』が伝えたものです。それによれば、韓国で北朝鮮研究、外交安保分野で大きな影響力のある民間シンクタンク、宗研究所の鄭成長副所長の話をもとに記事化。アメリカがベネズエラ同様の作戦で金総書記を拘束しても、北で大きな力を持つ総書記の妹、金与正党副部長がアメリカを核で脅し、解放を求めるということです」
一方で「サンドタイムズ」は、北朝鮮が今回の事件を機に、さらに北朝鮮内部の結束と正恩氏周辺の武装強化が図られる、との見方も展開している。軍事アナリストはこれをどうみるか。
「論理的にはアメリカの軍事作戦による拘束・連行は、北朝鮮でも可能です。例えば北朝鮮はアヘンの製造・輸出の共謀、仮想通貨取引所のハッキングによる数十億ドルの窃盗、偽札偽造などが指摘されています。ただ、たびたびのミサイル発射で分かるように、北朝鮮はアメリカをも射程に入れる長距離弾道ミサイル、核爆弾を数十発持ち、実戦能力を持つ。これは世界の誰もが疑わないことです。だからアメリカが北にベネズエラと同じことをすれば最悪の場合、核戦争になる可能性があり、最終的にアメリカは実行不可能となる、との見方が強いわけです」
北朝鮮はウクライナ戦争への協力を機に、ロシアと「万が一、一方が他国に武力侵略された場合は武力攻撃する」という軍事同盟を結んだ。
「そのため金総書記が拘束となれば、ロシアも核攻撃に加わる可能性があります」(前出・軍事アナリスト)
結果、アメリカはやる気があっても、ベネズエラのようにはできないというのだ。軍事アナリストがさらに続ける。
「アメリカにとって本当に脅威で邪魔な存在ならば、軍事力だけでない排除方法を取るでしょう。つまり軍事作戦プラス経済制裁、そして内部からの反乱の三つを組み合わせたもの。北はそれを恐れている」
一方で、欧州の軍関係者はこう漏らすのだった。
「アメリカと一部の国が核ミサイルを無力化する兵器を開発中で、まもなく完成が近いという話がある。そうなると、核の威嚇で動いてきた世界が大きくゲームチェンジする」
この核無力化の話は10年ほど前から出ていたというが、現実は核の威嚇が増大している。そこに今回はベネズエラの拘束作戦が加わり、事態はさらに混沌としてきた。世界はますます、きな臭くなりつつあるのだ。
(田村建光)

