クリスマスの忘れられない一言

娘さんが真実を知ったらどう思うんだろう(写真:iStock)
デートや旅行は平日に。時間の融通が利く2人だからこそ、関係は深まった。しかし、幸せな分だけ、別れの瞬間が苦しくなる。
「彼をエントランスまで送って、ひとりで部屋に戻ると、まだ悠馬くんの香りが残っているんです。彼は何事もなかったように、奥さんと娘さんが待つ家に帰って、手料理を食べるんだと思うと…正直、つらかったです」
クリスマスは、彼がホテルの一室をリザーブしてくれて、ランチを楽しんだ。
だが、その帰り際、忘れられない一言を投げかけられたという。
――そういえばさ、娘へのクリスマスプレゼント、一緒に選んでくれない?
――えっ?
久美さんは、一瞬、言葉を失った。
自分が今、どの立場に立たされているのか、わからなくなったからだ。
結局、学校にも持っていける、高級ブランドの限定デザインの魔法瓶を選んだ。
実用的で、長く使えるもの。娘さんの日常に、何の違和感もなく溶け込む贈り物だった。
クリスマス、そして年末年始…寂しさは募るばかり

何を振り回されてるんだろう(写真:iStock)
クリスマスランチの帰り道、久美さんはワインを何本も買いこみ、寂しさを誤魔化すように飲み明かした。
「不倫がここまで苦しいものだとは思いませんでした。電車で彼の娘さんと同じ制服の女の子を見ると、胸がざわついて…恨めしい気持ちになってしまって」
不安に耐えきれず、カカオに『声が聴きたい。電話していい?』と送ると、返ってきたのは『電話は無理。メッセージだけで』という冷たい返事だった。
「7歳も年上なのに、何を振り回されてるんだろうって。自分に腹が立ちました」
不安がピークに達したのは、年末年始だった。
「彼からは『妻の実家の京都に帰省する』と言われていました。私は苛立ちや不満を見せずに、『ご家族との時間を楽しんで』と、言葉を選んで送り出したんです。でも…それが大間違いでした」
勘違いしたのか、彼は、新幹線から撮った富士山の写真を皮切りに、京都タワー、清水寺、八坂神社、祇園の町並みなどの観光ガイドのような美しい写真を何枚も送ってくる。
その端には、明らかに奥さんらしき影が映りこんでいた。
「これ以上、嫉妬させないで…って思いました。彼なりに、私を寂しがらせないための写真だったのかもしれません。でも結果的に、私は12月29日から完全な放置状態。メッセージは途切れ、こちらから送る勇気もなくて…」
大みそかも独り。都内の自宅でカップ麺の年越しそばをすすりながら紅白歌合戦を流し見し、気を紛らわすように執筆をする。テレビの向こうには家族団らんの映像があふれているのに、自分の部屋だけが、取り残されたように静まり返っていた。
「こんなに空しい年越しは、初めてでした」
