メリットよりデメリットを訴求せよ!?
人は利益から得られる満足よりも損失から受けるダメージのほうが大きいことから、損失をより嫌う「損失回避性」があることは前述しました。
この心理を突いた手法はCMでもよく見られます。つまり、この商品を使うとこんなメリットがありますと訴えるのではなく、この商品を使わないとこんなに損をしますと訴える手法です。
こうしたCMや広告は、とくに洗剤や医薬品、サプリメント、エチケット商品などによくみられますが、一般的な商品についても有効です。
たとえば「この靴をはけば、長時間歩いても疲れません」と「あなたがすぐに歩き疲れるのは自分に合った靴をはいていないからです」では、どちらが心に響くかといえば、デメリットを訴求した後者のほうです。
私たちは損をすることに敏感です。したがって、そこにこそ効果的な訴求ポイントがひそんでいるのです。
定額のストリーミングサービスが流行る理由 なぜ人はギャンブルをやめられない?
人は何かにお金をつぎ込むと、その分を取り戻そうとします。これを「サンクコスト効果」といいます。サンクコストとは、回収できないコストのことです。
パチンコに代表されるギャンブルなどは、そうした人間の性質によって成り立っていますが、一般のビジネスでもサンクコスト効果は利用されています。
定額料金で動画や音楽を配信するストリーミングサービスもそのひとつでしょう。
「お金を払っているのだから、モトを取ろう」と、せっせと私たちは動画を見ます。すでに支払ったお金は取り戻せませんが、その支払っただけの満足感を得ようとするわけです。
毎週、あるいは隔週で刊行される分冊百科の本も、サンクコスト効果を巧みに利用したビジネスです。
1号ずつそろえていき、すべてそろえばまとまった百科事典として完成します。最近は付録で1号ずつパーツが送られてきて、ミニチュアモデルなどを完成させていくタイプも増えています。
これを完成させるには途中でやめるわけにはいきません。「ここまで続けてきて、いまさらやめられるか」という、まさにサンクコストを突いたビジネスといえます。

