さまざまな女性像、全員に共感。周りにもこういう人がいるかも
恋に戸惑う男女の姿も共感できて印象的

本作に登場する女性たちの描かれ方も印象的。弟の死により現実を見なくなった母親(安藤裕子さん)のはかない表情、山吹(高杉さん)と正反対の生き方をしている伊藤万理華さん、深川麻衣さんが演じる人物像。
それぞれが異なる価値観を持ち、「こうあるべき」という枠に当てはめられていません。「こういう女性は確かに、現実にも存在するよね」と感じていると、物語のリアリティが次第に増してきます。
誰かに寄り添おうとする人。
距離を取ることで自分を守ろうとする人。
感情を整理しきれないまま、立ち止まる人。
ヒコロヒーさんが登場する時間は短いが存在感がある

どの姿も一方的に肯定も否定もされず、ただ静かに描かれます。特に山吹(高杉さん)の姉・紅役、向里祐香さんの演技には、「自分も映画の中のキャストだったら、姉の紅と同じ行動をとったかも‥」と感じながらとても見入ってしまいました。そしてヒコロヒーさんのぼくとつな演技も味があります。
祖母の葬式の帰りに、バスの中で、あるパプニングが起きますが、そのシーンの画像が映画を見る前と後では、別のものに見えてきます。登場人物それぞれの心情に共感できると、その1枚の画がとても尊く、家族には正解や不正解はなく、ただ存在するだけでとても愛おしいものなのだなと思えてきます。
全国で公開中の映画『架空の犬と嘘をつく猫』

『架空の犬と嘘をつく猫』は、明確な答えを示す映画ではありません。監督の演出もまた、感情を過剰にあおることはなく、音楽やカメラワークは控えめで、沈黙や視線、会話の間に漂う小さな違和感が、物語を静かに前へ進めていきます。
その代わり、家族との関係や、自分自身が抱えてきた小さな嘘について、考える時間を与えてくれます。
観終わったあと、誰かの顔がふと浮かんだり、少しだけ連絡を取りたくなったりする。そんな静かな余韻こそが、この映画の魅力。派手さはありませんが、確実に心に残る一本。日常の中で立ち止まりたくなったときに、ぜひ劇場を訪れてみてください。
全ての画像提供:©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会、配給:ポニーキャニオン

