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CCA作品賞受賞の『ワン・バトル・アフター・アナザー』に迫るNetflix優秀作品群  (vol.80)

CCA作品賞受賞の『ワン・バトル・アフター・アナザー』に迫るNetflix優秀作品群 (vol.80)

年末から前例のない大雨が続いたカリフォルニア州。年明け最初に開催されたオスカー前哨戦の第31回クリティックス・チョイス賞 (Critics Choice Awards―放送映像協会) の会場はサンタモニカ・エアポートにある空港格納庫バーカー・ハンガー。煌びやかなドレスをまとった女優たちの中で、映画部門の若手俳優賞にノミネートされた、映画『レンタル・ファミリー』(2025) の女優シャノン・マヒナ・ゴーマンがHIKARI監督と2人で春を呼ぶようなドレスで登場。華やかな2人の姿は全米興収でトップ5入りしたほどのヒット映画を代表し、存在感抜群。HIKARI監督は、「次は日本での劇場公開が勝負です !」と意気込み、セレブ溢れる会場で印象的だった。

(全て著者撮影)

4部門受賞『フランケンシュタイン』の技あり !ギレルモ・デル・トロ監督チーム

Netflix製作の主要映画は今年は粒揃い。まずは奇才ギレルモ・デル・トロ監督が丹念に作り描いた『フランケンシュタイン』(2025)。豪華なキャストと見事なゴシック・ファンタジーに仕上がっているこの映画は、2時間30分という長さから、配信途中で重すぎて、へこたれる人もいたかもしれない。しかし、映画は第2章のクリーチャーズ・テイル (フランケンシュタインの怪物目線) から圧倒的にドラマチックなストーリー性に富み、運命に従って生き続けなくてはならないフランケンシュタインの怪物の肉体的、そして精神的な受難が大きく浮き彫りになっていて見応えがある。

『フランケンシュタイン』

クリティックス・チョイスの助演男優賞は、作品賞受賞で候補として注目されていた『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025) のショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ他の候補者を抜いてフランケンシュタインの怪物役の長身ジェイコブ・エロルディが堂々受賞。彼の演技に魅了された批評家が多くいることが結果で現れていた。そのほか、デル・トロ監督の映画の世界観を創り上げる上で大きな力となった、美術賞受賞のタマラ・デヴェレルとシェイン・ヴィアウ、衣装デザイン賞受賞のケイト・ホーリー、ヘア&メイクアップ賞はマイク・ヒル、ジョーダン・サミュエル、クリオナ・フューレイが受賞。なお、デル・トロ監督は1月3日から開催されたパームスプリングス映画祭で、実兄の急死を発表し、CCA賞には出席していなかった。

Netflixは授賞式の翌日に『フランケンシュタイン』のセット、衣装や参考文献、原作のメアリー・シェリーの初版本などをハリウッド、サンセット大通りの一角に展示公開し、CCAメンバーを招待。今週末はゴールデン・グローブ賞、そしてノミネーションが発表されたばかり (西海岸現地時間:2026年1月7日) の俳優賞 (旧SAG 全米映画俳優組合賞ー今年から名前変更だそう)、そして3月15日のオスカーの受賞式に向けてさらにキャンペーンの勢いも増している。

(著者撮影)

Netflixが買収しようとしているワーナー・ブラザーズの2025年の映画ラインナップは見応えのある作品が多かった。『ワン・バトル・アフター・アナザー』は作品賞、監督賞、脚色賞と、ポール・トーマス・アンダーソン監督への評価がオスカーまで続くことはほぼ確実。そして、このコラムでいち早く全米人気を紹介した『罪人たち』(2025) も力強い。クリティックス・チョイスではノミネーションの数がトップで、堂々4部門を受賞。ギター奏者として怪奇な吸血鬼の饗宴の中でサバイバルを強いられる新人俳優マイルズ・ケイトンが若手俳優賞を受賞。脚本賞はライアン・クーグラー監督。キャスティング&アンサンブル賞にフランシーン・マイスラー。作曲賞に、『ブラック・パンサー』や『オッペンハイマー』でもお馴染みの人気映画作曲家ルドウィグ・ゴランソンが受賞した。さらに、日本のワーナー・ブラザース最後の洋画配給作品となった『WEAPONS/ウェポンズ』 (2026) のエイミー・マディガンが助演女優賞を受賞し、ワーナー作品の秀作人気は明らかだった。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』 『WEAPONS/ウェポンズ』

なお、注目の主演男優賞には、『ワン・バトル・アフター・アナザー』のレオナルド・ディカプリオを抜いて、『マーティ・シュープリーム 世界をつかめ』のティモシー・シャラメが受賞。主演女優賞には『ハムネット』のジェシー・バックリーが受賞し、オスカー本命が噂されている。

『マーティ・シュープリーム 世界をつかめ』 『ハムネット』

映画『トレイン・ドリームズ』の監督チーム

静かなセンセーションを沸き起こし、このコラムでも紹介した映画『シンシン/Sing Sing』(2024) 。グレッグ・クェダーとクリント・ベントリーの脚本・監督チーム作品の『シンシン/Sing Sing』は、グレッグ・クェダーが監督。今年、Netflixで配信した新たな意欲作『トレイン・ドリームズ』 (2025) は、クリント・ベントリーが監督。Netflixがオスカーに向けて推していたジョージ・クルーニー主演、ノア・バウムバック監督の『ジェイ・ケリー』やキャスリン・ビグロー監督最新作『ハウス・オブ・ダイナマイト』などの有名どころの作品を抜いて、批評家から大絶賛された。

本作は作品賞、脚色賞、主演男優賞ほかにもノミネートされるほど、注目度が急上昇し、クリティックス・チョイスではその美しい映像美に魅せられ、撮影賞をアドルフォ・ヴェローゾが受賞。その丹念に撮影された叙情的な作品のクォリティは新年に観る映画にふさわしい、静かで力強い作品。

物語の原作はデニス・ジョンソンの人気小説。舞台は20世紀初頭のアメリカ、アイダホ州の森の中。主人公ロバートは材木伐採の仕事につき、アメリカが産業国家となっていくその底辺で働く労働者。高くそびえ立つ森林を伐採する人間たちの、夢と野望。日雇いのような短期の仕事で、さまざまな人間、そして自然界とふれあい始めるロバートは中国人労働者への差別を目の当たりにしたり、年老いた白人労働者 (ウィリアム・メイシー) と、年を超えた友情を育む。木を伐採する過程で、自らが自然を破壊し、自然がいつか自らを破壊していくのではと、どこかで不安を感じながら生きる受身なアメリカ人の姿は、最近描かれる人物像とも大きく違って、とても良心的。

自然の脅威、さらには、生死を通じてロバートを包む幽玄的なものとの対話がこの映画の中で淡々と続けられていく。求めていた家族とその「幸せ」とはという問いとともに、残酷な天命の下で生き続けなくてはならないロバートの、ある意味、『フランケンシュタイン』と似た哲学的会話が繰り広げられる感動作となっていて、必見である。

配信元: otocoto

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