住民3000人の生活をブルドーザーが襲う「大階段計画」
そして、この記事の本質的な「闇」は、2026年以降に本格化する「栄光のファサード」の正面玄関建設にある。ガウディが遺したとされる構想図に基づき、委員会は聖堂の正面から向かいの街区にかけて、長さ約100メートルに及ぶ「大階段」を建設しようとしている。
問題は、その計画予定地に現在、一般の住民が暮らすアパートメントが林立していることだ。
「聖堂が完成するという美名の下に、私たちの家を破壊し、3,000人もの住民を路頭に迷わせようとしています。これはもはや信仰ではなく、テロです」
そう憤るのは、住民反対運動の幹部だ。
「計画が実行されれば、隣接する2つの街区が完全に取り壊されます。委員会は『ガウディの遺志だ』と言い張りますが、内戦で焼失した後の設計図に、これほど大規模な立ち退きを伴う階段が本当にあったのか、専門家の間でも意見が分かれています。私たちは、観光客のための『景観』を作るために、自分たちの生活を差し出すつもりはありません」
現在、バルセロナ市議会はこの問題に明確な回答を出せていない。2026年の塔の完成を祝う一方で、その足元では、数千人の住民が「いつ家を追われるか」という恐怖に怯えながら、反対運動を続けているのだ。
「未完」という名の金脈を掘り尽くした後の虚無
サグラダ・ファミリアは、ガウディの死後「解釈の建築」となった。というのも、設計図の一部がスペインの内戦で消失しており、今作られているものがガウディの頭の中にあったものか、それとも現代の建築家たちが3Dモデリングで作り上げた「ガウディ風のレプリカ」なのか分からないからだ。
「完成してしまえば、この建築が持っていた『永遠の未完成』というロマンは消え去ります。その時、観光客は今と同じ熱量で訪れるでしょうか」(前出のベテランガイド)
2026年、高らかに鳴り響くであろう完成の鐘。しかしその音は、追放される3,000人の住民にとって、あるいはガウディ本人にとっても、祝砲ではなく「終わりの始まり」を告げる弔鐘に聞こえるのかもしれない。
