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「週末寝だめ」が本当にうつ予防になるかもしれない

「週末寝だめ」が本当にうつ予防になるかもしれない

「週末寝だめ」が本当にうつ予防になるかもしれない
「週末寝だめ」が本当にうつ予防になるかもしれない / Credit:Canva

アメリカのオレゴン大学(UO)とニューヨーク州立大学アップステート医科大学(SUNY Upstate)で行われた研究によって、「週末寝だめ」が、若者の心を守る「バリア」になっている可能性が示唆されました。

研究によれば、週末に少しでも睡眠不足を補っている16〜24歳のグループは、まったく寝だめしない同年代グループに比べて「うつっぽい状態」と感じる確率(オッズ)が約40%も低かったことが示されています。

理想的には毎日十分な睡眠をとるのが一番ですが、それが難しい現実において、週末の寝だめで不足分を補うことが若者のメンタルヘルスを支えるセーフティーネットになる可能性があります。

研究内容の詳細は2025年11月3日に『Journal of Affective Disorders』にて発表されました。

目次

  • 「週末寝だめ」は意味があるのか?
  • 週末の寝だめが「うつ状態」に4割の差をつけた

「週末寝だめ」は意味があるのか?

「週末寝だめ」は意味があるのか?
「週末寝だめ」は意味があるのか? / Credit:Canva

ようやく起きても頭がぼんやりしていて、授業中はずっと眠い。

週末だけは「お昼まで寝かせて…」と心の中でつぶやきながら、思いきり寝だめをする──そんな生活パターンに心当たりがある人は多いと思います。

実は、これは怠けではなく、からだのほうが「そう設計されている」面があります。

思春期から19歳前後にかけて、体内時計(24時間リズム)は自然に後ろにずれていき、多くの10代は「やや夜型寄り」になります。

本当は夜遅くに眠くなり、朝は8時くらいまで寝ていたいのに、学校の始業時間は変わりません。

その結果、「本来のリズムより早く起きなければならない」状態が続き、睡眠不足が慢性化していきます。

コラム:10代は夜型になりやすいって本当?

「最近の子は夜更かしなだけでは?」と思う方もいるかもしれませんが「多くの10代が“やや夜型寄り”になるのは、生物学的にかなり本当」です。統計によれば10代になるとそれ以前の「子どものころと比べて、自然な眠気の時計が1〜2時間程度後ろにずれやすい」ことが知られています。たとえば小学生のころは21〜22時くらいに眠くなっていた子が、中学生になると23〜24時ごろにならないと本気で眠くならない、といった変化です。これは、思春期のはじまりごろから眠気スイッチの役目をするメラトニン(睡眠ホルモン)が、以前より遅い時間になってから出始めるようになるためです。(※夜型化は19歳前後でピークでその後は年齢と共に朝型になっていく)一方で、学校の始業時間や朝練の時間は子どものころとあまり変わりません。その結果、「体内時計は後ろにずれたのに、社会の時計はそのまま」というズレが生まれ、慢性的な寝不足になりやすくなります。少なくない人たちは夜型になったのが10代の頃だったという経験を持っているのは生物学的な裏付けがあったのです。

また興味深いことに、10〜24歳のうつ病や「うつっぽさ」による心の負担が、世界的に増加傾向にあると報告する研究が増えています。

過去の研究をまとめたメタ分析では、「週末に寝だめをしている人は、していない人よりうつになるリスク(抑うつ症状のオッズ)が平均で2割ほど低い」という結果が出ていましたが、10代だけを見ると「寝だめが多いほど悪化していそう」「2時間以上の寝だめだけが良さそう」など、研究によって結果はやや食い違っていました。

そこで今回の研究者たちは、「アメリカの“ふつうの”16〜24歳全体を代表するデータを使って、週末寝だめと『毎日うつっぽい』の関係をきれいに調べ直してみよう」と考えました。

もし、「ほどほどの週末寝だめ」が本当に心の負担を軽くしているのだとしたら、週末の寝坊について親や教師も見直すかもしれません。

週末の寝だめが「うつ状態」に4割の差をつけた

週末の寝だめが「うつ状態」に4割の差をつけた
週末の寝だめが「うつ状態」に4割の差をつけた / Credit:Canva

まず研究チームは、アメリカ疾病対策センター(CDC)が行っている全米健康栄養調査NHANES(エヌヘインズ)2021〜2023年のデータから、16〜24歳の若者1087人を取り出しました。

参加者は、平日と週末それぞれについて「ふだん何時に寝て、何時に起きているか」を答え、さらに「ほぼ毎日、悲しい・憂うつだと感じるかどうか」も自己報告しました。

また「週末寝だめ」を定義として平日の1日あたりの睡眠時間よりも週末のほうが長ければ「週末寝だめあり」、変わらないか短ければ「週末寝だめなし」としました。

結果、週末寝だめをしている若者は、していない若者に比べて、「ほぼ毎日うつっぽい」と答える確率のオッズ比が約40%低いことがわかりました。

(※「週末寝だめなし」グループのうつっぽくなる率を1としたとき、「週末寝だめあり」グループのオッズが 0.6 くらいだったという感じです)

この結果は週末寝だめが、うつっぽさから守ってくれるバリアのように働き得ることを示唆しています。

しかし、だからと言って週末寝だめが全てを解決するわけではありません。

研究では平日から「推奨に近い十分な長さ」で「遅すぎず早すぎない時間帯」に眠れている若者では、「毎日うつっぽい」と感じる割合に対して、週末寝だめのよりも2倍の効果を発揮していました。

つまり、「最強ルート」はやはり平日からちゃんと寝ることですが、それが難しい人にとって、「週末に少しでも借金を返す」は、次善の策として意味があるだろう、ということになります。

今回の研究は親や先生にとっては、「週末の朝に子どもを無理に起こすべきかどうか」を考え直すきっかけになるかもしれません。

親や教師は休日の朝にダラダラ寝ている若者に対して文句を言うことがありますが、先に見たように、実は週末寝だめによって心と体を辛うじて守っていたのかもしれないからです。

もしかしたら未来の世界では、週末に布団にくるまる若者を見て、「だらしない」ではなく「平日の睡眠借金を返しているのだな」と見なされるようになっているかもしれません。

元論文

Weekend catch-up sleep and depressive symptoms in late adolescence and young adulthood: Results from the National Health and Nutrition Examination Survey
https://doi.org/10.1016/j.jad.2025.120613

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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