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最初は『風立ちぬ』と同日公開予定だった『かぐや姫の物語』 発案の鈴木敏夫に高畑勲が言った事とは 結果的にプラスの面も

最初は『風立ちぬ』と同日公開予定だった『かぐや姫の物語』 発案の鈴木敏夫に高畑勲が言った事とは 結果的にプラスの面も


『かぐや姫の物語』静止画より (C)2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK

【画像】え…「そうだっけ?」「めっちゃ可愛い」 コチラが他の高畑勲作品にも出てきていた「かぐや姫」です

公開延期のおかげでようやく高畑勲と仕事ができたのは

 2026年1月9日の「金曜ロードショー」にて、スタジオジブリの高畑勲監督の遺作『かぐや姫の物語』(2013年)が放送されます。本作は高畑監督が東映動画(現:東映アニメーション)に入社して間もない1959年、内田吐夢監督が『竹取物語』のアニメ映画化のプロット案を募ったときから温めていた物語で、2005年から本格的に企画が動き出し8年の歳月をかけて完成した映画でした。

 スタジオジブリの作品としては最長の137分・1423カットで、製作費は日本のアニメーション史上最高額の51.5億円がかかっています。スケッチのような荒々しい線の絵とキャラクターが生き生きと動く実験的なアニメーションゆえに、制作が難航したことはさまざまな書籍で語られてきました。

 そんな『かぐや姫の物語』は一時期、同年の宮崎駿監督作品『風立ちぬ』と同日公開されると宣伝されていた時期があります。それはプロデューサーの鈴木敏夫さんと西村義明さんの、戦略的な狙いもあったようです。

 2012年の12月13日、スタジオジブリは『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』の正式な製作発表会見を行いました。その際、この2作は2013年夏に同日公開されると発表されています。

 2本同時公開の案を出した鈴木プロデューサーは、会見で「同日公開はお互いの刺激のため。いい作品ができる手段だと思っている」と語っていました。また、西村プロデューサーは劇場パンフレットのインタビューで、「(2本同時公開は)高畑さんを奮起させるための、鈴木さんと僕の大博打だった」と振り返っています。

 1988年の『となりのトトロ』『火垂るの墓』のような同時上映形式の予定ではなかったものの、実現すれば大きな盛り上がりを見せたはずです。しかし、結果的に巨匠ふたりの映画が同日に公開されることはなく、『風立ちぬ』は2013年7月20日、『かぐや姫の物語』は同年11月23日に封切られています。『かぐや姫の物語』の公開日が決まったのは、『風立ちぬ』上映中の8月19日のことでした。

 鈴木プロデューサーは『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』のなかで、同日公開の案を高畑監督本人に説明しに行った際、「そうやって煽って、この作品を公開しようということですか」と言われたことを語っています。鈴木プロデューサーが「そうです。お金もかかってますし、お客さんに来てもらって(製作費の)回収もしたいですからね」と返すと、高畑監督はそういうことには協力したくないと言ったそうです。

 実際のところ、記者会見があった2012年末の時点で完成していた絵コンテは約1020カットの96分ぶんだけで、残り40分のカットがまだできていない状態でした。7月の公開は難しかったと思われます。

 また、公開が延びたため、『風立ちぬ』含む宮崎作品でおなじみの作曲家・久石譲さんが、高畑作品に初めて参加できたというプラスの面もありました。『風立ちぬ』と同日公開では、さすがの久石さんも両方の音楽を作ることは不可能でしたが、2013年2月に『かぐや姫の物語』の公開延期が決まったため、久石さんが音楽を担当することが決定したそうです。

 もともと『風の谷のナウシカ』(1984年)制作時に、作曲家に久石さんを推薦したのは高畑監督だったため、久石さんは公開当時のインタビューで「30年越しの夢が叶った気分」と語っていました。

 鈴木プロデューサーの案が実現していれば、夏休みに『風立ちぬ』と『かぐや姫の物語』をはしごして鑑賞するという体験もできましたが、結果的には公開時期がずれたことで作品としてはベストの状態になったといえるでしょう。

参考書籍:『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』(文藝春秋)

配信元: マグミクス

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