
韓国に実在する、国家権力と裏社会、善悪の境界で暗躍する存在“ヤダン”。野心に取り憑かれ、闇に落ちた“検事”。権力の罠にはまり、正義を見失った“刑事”。正義と悪、忠誠と裏切り、復讐と欲望、そして3人の狂気が交錯するなか、すべてを奪われた“ヤダン”が仕掛ける、壮絶にして華麗な復讐劇が描かれる。エンドロールが終わると自然に拍手が湧き起こるなど、上映後の会場は熱気ムンムン。メンバーは客席の間を通ってステージに到着し、大歓声を浴びた。

『ラブリセット 30日後、離婚します』(23)や、Netflixドラマ「イカゲーム」「椿の花咲く頃」などで知られるカン・ハヌルが“ヤダン”イ・ガンスに扮し、これまでの爽やかなイメージを一新させるようなダークで過激なキャラクターを演じきった。カン・ハヌルは、自身のファンミーティングなどでの公式来日はあるものの、出演作の日本公開にあわせて来日して舞台挨拶をするのは今回が初めてのこと。「皆さん、こんばんは。カン・ハヌルです。ありがとうございます!」と日本語で挨拶したカン・ハヌルは、「この映画は韓国でもありがたいことにたくさんの方に愛していただけました。こうして日本の皆さんにご挨拶できて、とても光栄です。劇場をいっぱいに埋めてくださって、本当にありがとうございます」と興奮にあふれた会場を見渡して、感激しきり。

『破墓 パミョ』(24)、『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(17)など様々な作品で記憶に残る演技を披露してきたユ・ヘジンは、出世欲に燃える検事ク・グァニを演じた。ユ・ヘジンも「こんばんは!」と日本語で挨拶し、「本当に映画館をいっぱいにしてくださいましたね」と笑顔。ユ・ヘジンも、出演作の日本公開にあわせて舞台挨拶をするのは初めてだという。「商業映画の公開にあわせて、このようにオフィシャルで舞台挨拶をさせていただくのは今回が初めて。とても楽しみにしていましたし、少し緊張もしています」と照れ笑いをのぞかせていた。

“ヤダン”は韓国に実在する存在だというが、カン・ハヌルは「韓国において私自身、そして私の周りにいる人たちも、“ヤダン”と言われる人たちの存在をまったく知りませんでした。おそらく、いまも知らない人たちがたくさんいるんじゃないかなと思います」とコメント。演じるうえでは「そんな“ヤダン”という存在を、どうしたら映画をご覧になる皆さんによりわかりやすく、ストーリーについてこられるようにうまく表現できるだろうか」と思案したそうで、「そこが一番、難しかったところです」と明かした。

ユ・ヘジンも「監督が“ヤダン”についてリサーチをして、シナリオを書き上げました。この作品に触れて怖くもありましたが、とても興味が湧いた」というが、本作ならではの魅力は「なんといっても、カン・ハヌルさんが“ヤダン”を演じていること」と共演者を絶賛。「パク・ヘジュンさんなど、すばらしい俳優さんたちとご一緒できました。またすばらしい監督ともご一緒できた」と充実感をにじませた。ビョングク監督は、すぐれた映画だと思えるものには「ジャンル的なおもしろみがあることが大切。そして作品のなかに、社会が持つ空気をいかにうまく込められるかということ」という2つの要素があると分析。「本作は、観客の皆さんが途中で携帯をのぞくようなことがないような映画にしたい思っていましたが、それは果たしてうまくいったでしょうか?」と語りかけると、会場からは映画の感動を伝えるように拍手が上がっていた。

また「今後チャンスがあれば、日本で仕事をしてみたい監督や俳優さんはいますか?」という質問が投げかけられると、カン・ハヌルは「あまりにも多くて…」と悩みながら、「新垣結衣さま。星野源さま。監督では、新海誠監督や小島秀夫監督。機会があれば、ぜひご一緒したいと思う方はたくさんいます」とラブコール。「お願いします!」と日本語で呼びかけた。ジブリ作品が好きだというユ・ヘジンは、「宮崎駿監督とご一緒してみたいです」と切り出しつつ、「トトロ、紅の豚…いまご一緒したい俳優さんの名前をあげました」と茶目っ気たっぷりに語り、会場も大爆笑。続けて「是枝裕和監督の作品もとても好きです。機会があるかわかりませんが、もしご一緒できたら本当に光栄です」と希望を口にした。「俳優もしている」というビョングク監督は、「最近『国宝』を観ました。すごく、すごく、すごくよかったです。李相日監督は学校の1年後輩にあたります。李相日監督の作品にキャスティングされたら、ぜひ出演したいです」と熱っぽく話していた。

日本の滞在も楽しんでいる様子の3人。「日本を旅行するのが好き」と目尻を下げたカン・ハヌルは「最近は白川郷にも行った」のだとか。「まだ行っていないところでは、長野に行ってみたいです」と願望を吐露。ユ・ヘジンは「昨日、おとといと軽井沢に行ってきた」と明かし、「温泉もとてもよかった。街中をジョギングして走る感じもすごくよかったですし、駅で食べたうどんが本当においしくて。軽井沢が大好きになりました」とお気に入りの場所ができたとのこと。

飛び交う歓声にも笑顔で応えるなど、会場が登壇者の素顔に魅了されっぱなしだったこの日。サプライズでハイタッチ会が行われるひと幕もあった。カン・ハヌルが箱から「G」の紙を引き当て、G列に座った全員がステージに上がり、次々と3人とハイタッチ。ユ・ヘジンは「韓国でも公開にあわせて舞台挨拶をたくさんするんですが、このようにハイタッチをするという文化は韓国にはないので、私にとって初めてのことになりました。とても新鮮でした」と大いに楽しんだと語り、会場を盛り上げていた。
取材・文/成田おり枝
