ミラノ・コルティナ2026オリンピックの観戦をより楽しむために、競技の特徴や見どころポイント、ルールなど、フリースタイルスキー・モーグル&デュアルモーグルの基礎知識をつけておこう。
■モーグル(Mougle)とは? そのおもしろさ

不規則な斜面を制する「総合力」の競技
フリースタイルスキーのなかで最初に五輪種目となった(1992年アルベールビル五輪より)モーグルは、ジャッジが評価するのは、①ターン ②エア ③スピードの3つの要素。これらをかけ合わせて得点を決めるハイブリッド種目だ。モーグルは、コブが連続する急斜面を高速で滑り降りながら、ターン・エア・スピードを総合的に競う競技だ。1992年アルベールビル大会から五輪種目として定着し、フリースタイルスキーの原点ともいえる存在である。
競技では、コブ斜面でのターンの正確さ、途中2カ所で行われるジャンプの完成度、そして滑走タイムが評価対象となる。スピードだけでも、技術だけでも勝てない。3要素を高い次元でまとめる総合力が問われる。
モーグルの魅力は、荒れた斜面を正確に制御する技術にある。コブは一つとして同じ形がなく、常に次の一手を判断し続けなければならない。瞬時の判断力と、身体の反射的な反応が勝負を分ける。難しさは、ミスの許容範囲が極端に狭いことだ。わずかなバランスの崩れが、ラインの乱れやスピードロスにつながる。さらに、空中技も求められるため、滑りとジャンプを同時に完成させる必要がある。
観戦では、選手の上半身の安定とライン取りに注目したい。ブレの少ない滑りは、それだけで技術の高さを物語る。速さの中に正確さがあるかどうかが見極めポイントだ。
動画で実際の様子を見てみよう!
ミラノ・コルティナオリンピックならではの着目ポイント
ミラノ・コルティナオリンピックのモーグルは、競技の性格そのものが一段階進化した大会になる。注目点は、通常のモーグルの「技の進化」、そしてなんといっても新種目デュアルモーグルの登場だ。
近年のモーグルは、バックフル+ツイスト、コーク系、2ndエアでの高難度ひねりなど、フリースタイル色の強いエアが当たり前になった。「きれいに飛ぶ」「大きく飛ぶ」だけでは点が伸びず、高難度かつ完成度の高さが明確に評価される。しかし、エアが進化しても、得点比重の6割はターンなのだ。高難度エアを入れてもモーグルラインが乱れない、スピードと安定感を融和させた滑りは勝利への鉄則だ。
高難度エアを2本揃えることができ、ターン技術が突出していてスピードも文句なしに速い、大舞台でミスをしない完成度の高さを兼ね備える、まさに総合力のある選手が表彰台に上がることになるだろう。

新種目のデュアルモーグルは、別競技とも言っていい魅力と見どころの違いがある。なんといっても、2人の直接対決が生むバトルの緊張感がたまらない。
2人が同時に滑走することで、デュアルは観ている者でも選手の技術力の違いがよくわかるのが面白い。ターンのキレ、コブのなかでの安定感、エアの迫力、着地のクリーンさ、どちらが早くゴールするかでスピードの差は歴然だ。デュアルで勝てる選手は、プレッシャーや他者との闘いに対して強いメンタリティを持ち、スタートからトップスピードに乗ることができ、柔軟な対応力も備えながら、相手を意識して滑れる戦略とレース感覚を持つ勝負師だ。
■モーグル|デュアルモーグルの試合形式とジャッジ方式
モーグルの試合形式とジャッジ方式
予選から決勝まではこのような流れで争われる。
〈予選1〉全選手が1本ずつ滑り、上位10名の決勝1進出が決まる
↓
〈予選2〉予選1で11位以下だった全選手が1本ずつ滑り、上位10名の決勝1進出が決まる
予選1でのスコアは順位に反映されない(以下同様)
↓
〈決勝1〉予選1と予選2を通過した20名が1本ずつ滑り、上位12名が決勝2へ進出する
↓
〈決勝2〉決勝1を通過した12名が1本ずつ滑り、上位6名が決勝3へ進出する
↓
〈決勝3〉決勝2を通過した6名が1本ずつ滑り、最終順位を決定する
五輪は通常のWーCUPと異なり、予選1で10名が、予選2で10名がそれぞれ決勝1に進む権利を得るという変則的なシステムだ。一度は失敗してもチャンスが確保されるため、実力のある選手は漏れなく決勝に残る。そして、決勝ラウンドは〈決勝1〉20名→〈決勝2〉12名→〈決勝3〉6名と絞られていく。優勝するためには、五輪は通常のWーCUPよりも最低でも1回は多く滑る必要があるのだ。
五輪は急斜面のロングコースとなるケースがほとんどで、第1エア後のミドルセクションが勝負の分かれ目になりやすい。優勝するには、ここでハイスピード&ノーミスのターンを最低4回は繰り返さなければならない。モーグル観戦では、ミドルセクションこそもっともハラハラするポイントだといえる。
採点の方法
採点される要素は「ターン」「エア」「タイム」の3要素。配点は合計100点のところ、ターンが最も比重が高く60%、エアとタイム(スピード)がそれぞれ20%だ。ターンは、「ライン取り」ストレートなラインを滑っているか、「滑りのクオリティの完成度」「下半身を使ったコブの吸収動作」や「上半身のバランス」が評価される。
2つのエアは、技の「難度」と「完成度」の両方が評価される。回転数や軸がテクニカルなエアトリックを飛んでも、空中でのグラブやスタイル、着地などを含めての完成度が備わっていなければ高い得点は出ない。タイムは唯一客観的な数値データ、いかにコースを速く滑り降りるかが評価される。
ターン・エア・タイムの3要素をいかにハイレベルで揃えるかが勝負を決める。そのあたりにも着目すると観戦がよりおもしろくなるだろう。

デュアルモーグルの試合形式とジャッジ方式
デュアルモーグルは、2人同時滑走のトーナメント方式で行われる。
〈予選(シーディング)〉
全選手が1本ずつ単独滑走を行い、タイムと完成度によって
トーナメントの組み合わせ(シード順位)を決定する
↓
〈決勝トーナメント1回戦(例:ベスト16)〉
予選順位に基づき2人1組で同時滑走。
勝者が準々決勝へ進出
↓
〈準々決勝〉
同時滑走で勝者が準決勝へ進出
↓
〈準決勝〉
同時滑走で勝者が決勝へ、敗者は3位決定戦へ
↓
〈決勝/3位決定戦〉
同時滑走で最終順位(1~4位)を決定
採点の方法
基本は「総合評価での勝敗判定」となる。通常モーグルのような点数の合算表示は行わず、2人を直接比較して勝者を決める。評価は、以下の3要素を総合的に比較して行われる。
①ターン(約50%)モーグル上でのスピードコントロールや正確さ、ライン取り、安定感
② エア(約25%)2回のジャンプの何度や空中姿勢、着地のクリーンさ
③ スピード(約25%)
複数のジャッジがどちらが優れていたかを判定し、多数決方式で勝者を決定する。
