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スキーシーズンのクマに関して、冬眠の実態とバックカントリーで知っておくべきこと

バックカントリーでのリスク

「クマが冬眠している場所ってどこだろう?」「まさか、ツアー中に雪山でクマに遭うなんてこと、ないよね?」 「万が一目の前にクマが出てきたらどうすればいいのだろう」

今シーズン、バックカントリーを滑ろうと予定しているユーザーは、こんなことを気にしたり、心配したりする人はすくなくないのではないか。

坪田教授はいう。

「基本的には山に入るということ自体がクマのリスクがあるということですから、どこにいてもクマの冬眠の巣穴があると思ってもらって、山に入ってもらったほうがいいです。

とにかくクマの冬眠の穴を踏み抜かないようにするしかないんですけれども、これが難しい。クマがどこで冬眠しているかは、我々でもわからないんです。基本的には山の奥深いところですが、彼らはおそらく夏から秋の間に自分の冬眠する場所を決めていると思います。

クマが冬眠によく使う樹洞

一番多いのはやはり木の根張りをうまく利用して穴を作ることです。また、大きな木が枯れてくると、そのなかが空洞になっていることがある。そういった大木の根元の穴、樹洞も結構使います。まず、そういうところには近づかないよう要注意です。

けれど、岩穴を使うこともありますし、地面にすこしだけ穴を掘っていたり、開けた急斜面にも巣穴を掘ることもある。つまり、それこそ雪山を歩いていれば、どこでもクマの巣穴はあるかもしれない、と考えたほうがいいということです」

もしものときに備えておくべきこと

この足跡はまさしく……

坪田教授の話から、たとえ厳冬期であっても、また山のどんな場所でも警戒が必要なことがわかった。ましてや冬眠から目覚め始める3月以降は、リスクも高まっていく……。
山に入るならば、しておくべき備えや心構えは、どのようなことだろう。

「クマ撃退スプレーは必ず持っていってもらったほうがいいですね。

最近は結構まがい物が出てますので注意が必要です。日本政府が推奨しているものはないですが、アメリカのEPA(環境保護庁)登録のスプレーで「COUNTER ASSAULT(カウンターアソールト)」というクマ撃退スプレーは、北米でクマ遭遇対策の定番とされる製品で、野生動物対策の専門家にも評価が高いスプレーです。

いま2万円近くの値をつけて一番高いのですが、日本国内でも手に入ります。最近、日本国産でも例えば「熊一目散」など、海外製品と同等のスペックのスプレーも出ています。価格が9,000〜15,000円前後と、これくらいするものであれば品質的に大丈夫ですが、結構安いものも市販されていて、催涙スプレーなんかは絶対ダメですね」

クマ撃退スプレーは、唐辛子成分のカプサイシンという化学物質を含んでおり、強烈な刺激臭と、目や鼻、のどの粘膜を直撃すると激痛を引き起こすため、スプレーを振りかけられるとクマが逃げていく、という仕組み。

「スプレーはすくなくともクマから5~10mの射程で、7、8秒は振りかけないと効果がありません。もうこれは最後の最後の手段です。もしもクマと遭遇してしまったら、とにかく落ち着いて行動することです。背中を見せて走って逃げない。それが絶対必要なんです。クマの行動を見つつ、距離をすこしずつ開けるような振る舞いをする、行動をとることです」

カウンターアソールト・ストロンガー CA290  
https://e-mot.co.jp/product/02191/
熊一目散 
https://kumaichimokusan.com/

熊鈴はどうだろう?

「ベルは、人がクマのいる場所に入っていくときに、先にこちらの存在を知らせるために音を鳴らすわけです。冬眠しているときに鈴を鳴らしていても意味がないですが、クマが活動を再開しているかもしれない時期以降は、ベルも携行しておくといいでしょう。

あとは、当然ですが、山に持ち込む食べ物はきちんと管理することも重要です。食べ残しなどを放置して、絶対にクマの口にさせないように。

『冬だから安全・安心』とは言い切れません。『山に入る=クマの生息域に侵入している』という事実は、冬でも変わらないからです。バックカントリーに出かける際は、林野庁の出している資料なども参考に、十分な備えと心構えで山に入ってほしいですね」

林野庁「クマに遭遇しないために」
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kokusei/attach/pdf/nyuurin-3.pdf

教えてくれた人

坪田 敏男(つぼた としお)

北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室・教授/北海道大学総合博物館・館長

1961年大阪生まれ。北海道大学大学院獣医学研究科博士課程を修了。獣医学博士。2007年4月より現職。専門は野生動物医学。とくにクマ類の繁殖と生態に関する研究は40年来のライフワーク。野生動物疾病学会(WDA)アジアパシフィックセクション代表、日本野生動物医学会会長、日本獣医学会野生動物学分科会会長、日本クマネットワーク代表を歴任、現在は北海道獣医師会野生動物部会長、ヒグマの会会長、野生動物リハビリテーター協会会長などを兼任。主な著書は『【新装版】日本のクマ−ヒグマとツキノワグマの生物学−』(東大出版会)、『ホッキョクグマ−生態と行動の完全ガイド−』(東大出版会)など。

新刊『クマとともに-ホッキョクグマ、ヒグマ、ツキノワグマの未来-』著:坪田敏男・佐藤喜和・山﨑晃司(東京大学出版会,2026)が1月23日に発刊予定。

配信元: STEEP

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