高市早苗総理の台湾有事を巡る国会答弁を理由として、中国商務省は1月6日に、日本向けの軍民両用(デュアルユース)品目の輸出規制強化を発表した。ハイテク製品の製造に不可欠なレアアース(希土類)関連製品の日本向け輸出を巡り、輸出許可審査の厳格化がされるとの見方も出ており、産業界には不安が広がる。米国によるベネズエラ攻撃をはじめ、不安定化する国際情勢に、高市総理はどのように向き合うのか。
輸出規制が3か月で、経済的損失は計6600億円程度の試算も…
「中国に簡単に妥協できないし、高市さんが、難しい外交を強いられる局面なのは間違いない」
中国の対日輸出規制を巡り、自民党の参院ベテラン議員は筆者の取材に対して、こう語った。
中国商務省は、軍事力の強化につながるすべての輸出を禁止するとしている。軍事と民間の双方で利用されるGPS機器などが想定されるが、対象となりうる品目は幅広く、中でもハイテク製品の製造に不可欠なレアアースが禁輸となる可能性を巡り、経済界からは不安の声が高まっている。
TBSの報道によれば、ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は日中の経済団体による祝賀会で、「レアアースはありとあらゆる物の部品に全部入っているのではないか。こういう携帯なんかも含めて。ものすごく心配している」と語り、日本政府に対して、早期の対応を望んだという。
レアアースはスマホや電気自動車(EV)をはじめ、現代のあらゆるハイテク機器に使用されている。その多くが中国で産出されており、日本のレアアース輸入の対中依存度は約7割とされる。
中国は2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件後に、事実上の対日輸出規制禁輸措置に踏み切ったことがあり、経済的な影響は多大だった。
野村総合研究所の木内登英氏は、報道各社の取材に対して、レアアースの対日輸出規制が3か月間続けば、経済的損失は計6600億円程度になるとの試算を出している。
前出の自民党参院ベテラン議員はこう語る。
「米国などを通じて、レアアースを確保するといった取り組みも必要になるかもしれない。ただ、トランプ政権の中国への向き合い方も不明瞭で、注視が必要だ。米国のベネズエラ攻撃を巡り、トランプ大統領は“ドンロー主義”を掲げ、西半球の支配力を徹底させると言っている。
その一方で、中国のやっていることに積極的に関与しないという姿勢をとる可能性だってある。いずれにせよ流動的なことが多く、外交は高市政権にとって大きな課題となるでしょう」(前出・自民党参院ベテラン議員)
元防衛相「米政権によるベネズエラ侵攻は『力による現状変更』そのもの」
その米国によるベネズエラ攻撃も国際的に問題となっている。米軍が、ベネズエラで作戦を展開し、マドゥロ大統領を拘束した。国連のグテーレス事務総長は「アメリカの軍事行動は地域に深刻な影響を与える可能性がある」と憂慮する声明を発表。国際社会では、米国の行動は、国連憲章や国際法に違反しているとも指摘されている。
自民党の小野寺五典元防衛相は1月4日に自身のXで「米政権によるベネズエラ侵攻は『力による現状変更』そのもので、中露を非難する論拠に矛盾します。仮に中国が台湾に対して力による現状変更を試みた場合、米国が強く対抗してもトランプ政権では国際世論をまとめるのは難しく、ますます東アジアが不安定化する懸念があります」と非難した。
まさしく、台湾有事のような「力による現状変更」が行なわれた時に、米国は中国を批判できなくなるという指摘だ。
しかし、高市総理の反応は鈍いままだ。
高市総理は1月5日の年頭記者会見で、「我が国は、従来から、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値や原則を尊重してきた」と発言したものの、米国の軍事作戦についての評価は避けている。
こうした総理の言動について、自民党幹部の一人は筆者の取材に対して、「米国の行動は誰がみても褒められる話ではないが、日本が先陣をきって対応すべき話ではないのも事実。世界情勢をみながら、当面は様子見するしかないのではないか」と語った。
自民党中堅議員も「事実上、何も反応してない。事実関係や真相が整理できていないという部分もある」とみる。米国への配慮から、しばらくは慎重な発言を積み重ねるしかないのだろう。

