心が打たれる終盤の囁き声
いよいよ本連載、今年最後の記事となります。そしてこの号の発売日は12月25日。メリークリスマス!
というわけで、時期的にクリスマスソングを取り上げてみようと思ったのですが、この連載の守備範囲である昭和歌謡の中に、クリスマスソングは案外少ないのです。
あの過剰に浮き足だっていた「クリスマスブーム」は、平成、1990年代のものだったと、つくづく感じたのでした。
そんな中、見つけた「クリスマス歌謡」。菊池桃子のサードシングル。
’84年11月の発売なので、歌詞に出てくる「クリスマスイヴ」は同年の12月24日ということでしょう。休日だったら盛り上がったのでしょうが、残念、月曜日なのでした。
チェッカーズと中森明菜が、歌謡界を席巻する中、菊池桃子ブームがジワジワと来ています。
ファーストシングル『青春のいじわる』が最高13位、2枚目『SUMMER EYES』が7位、この『雪にかいたLOVE LETTER』で3位にのぼりつめる。
そして翌年の『卒業—GRADUATION—』で、ついに首位を獲得。菊池桃子が、アイドル界のど真ん中に君臨することになるのです。
これら3枚のシングルの作詞は秋元康(作曲もすべて林哲司)。菊池桃子の成功を受けて、翌’85年、おニャン子クラブ、とんねるず、小泉今日子などでヒットを連発。こちらも時代のど真ん中に君臨する、ちょっと手前の時期。
まずタイトル『雪にかいたLOVE LETTER』に「上手い!」と思ってしまいます。このあたりの仕掛けについて、なぜか私が当時買った秋元康の本『SOLD OUT!!』(扶桑社)に、こう書かれていました。
──何だか聞いたことあるな、と思った君は大正解。パット・ブーンの往年の名曲『砂に書いたラブレター』の、ハッキリ言ってパクリだ。こういうスタンダードからの流用というのは耳へのひっかかりが強いから、うまくやれば効果は高い。
余計なこと言わなくてもいいのにと思ってしまいますが(笑)、でもそういう本なのです。
また最後に「メリークリスマス」と菊池桃子がウィスパーするのですが、そこについても、
──「…メリー・クリスマス」とウィスパーさせるのをポイントにした。(中略)他のアイドルだとイヤミになりそうな手口だけど、桃子に「メリー・クリスマス」なんてつぶやかせたら、グッとくるだろうと思ったわけだ。
などと、また余計なことを書いていたりする。なんで私は当時、こんな本買ったのだろう…(笑)。
と、そんなこんなで、菊池桃子と秋元康が、翌年揃って大ブレイクするのに向けた、いわば導火線のような1曲なのでした。
さて、グリコ・森永事件とロス五輪にロス疑惑で大騒ぎだった1年が暮れていきます。’84年のメリークリスマス! そして’85年、いや’26年、よいお年をお迎えください。
「週刊実話」1月8・15日号より
スージー鈴木/音楽評論家
1966(昭和41)年、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。
