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【解説】2026年の新しいF1マシンはどうなる? そのテクノロジーを解説する

【解説】2026年の新しいF1マシンはどうなる? そのテクノロジーを解説する

F1に新たなレギュレーションが導入されるにあたり、どこか不安感が漂っている。2026年シーズンを戦うF1マシンのレギュレーションは、その誕生の過程が決して順調だったわけではなく、多くの懸念が指摘されてきたことも事実だ。

 F1を取り巻く景色は変わり、我々がここ数年慣れ親しんできたモノとは大きく異なるモノとなるだろう。それが良いモノなのか悪いモノなのか、それは実際に走り出してみないと分からないし、主観的な部分もある。昨年までのグラウンド・エフェクトカーが好みではなかった人にとっては、新しい世代のマシンは魅力的に映るかもしれないし、シンプルさを求める人にとっては、何やら複雑すぎて分からない……ということになる可能性もある。まあレースが面白ければ、気にはならないかもしれないが。

 新しいルールをしっかり理解するためには、それ相応の知識が必要となる。本稿はその理解を手助けすることを目的としている。既に技術的な複雑さをある程度把握している人にとっても、今季の観戦に活かすことができる新たな視点や発見が、いくつか見つかるかもしれない。

■アクティブエアロ

 F1は2026年シーズンから、フロントウイングとリヤウイングの両方が、ドライバーのステアリング操作によって可動する仕組みを採用する。基本的には、2025年までリヤウイングに採用されてきたDRS(空気抵抗削減システム/ドラッグ・リダクション・システム)はそのままに、2009年シーズンに採用されていた可動式のフロントウイングを組み合わせたようなものだ。

 ただ使用方法はDRSとは異なる。各サーキットには「ストレートモード」を使える区間が指定され、それ以外の部分では「コーナーモード」を使って走ることになる。

 ストレートモードが使える区間では、フロントおよびリヤウイングの角度が浅くなり、空気抵抗が削減される。つまり最高速が伸びることになるわけで、このモードは指定された区間であれば全ドライバーが使うことができる。DRS時代のような”前のマシンまで1秒以内に近づいた時”というような制限はないわけだ。

 コーナーに近づき、アクセルを戻してブレーキングを始めると、前後ウイングは立つ格好となり、空気抵抗とダウンフォースが増えることになる。

 ただこのアクティブエアロは、単にウイングを動かす仕組みを用意すればいいというものではない。非常に複雑な課題もある。

 ストレートモードとコーナーモードの両方で最適なパフォーマンスを生むためのウイングのデザインをどうするのかというのは、実に難しいはずだ。また、ウイングを動かすことによって乱れる気流を、モードの切り替わりと同時にいかにウイングに沿うように流すかという点も重要である。モードが切り替わった瞬間にしっかりと気流が安定しなければ、マシンの挙動が不安定になってしまう可能性があるのだ。

■フラットフロア

 2026年からF1マシンの底の形状が大きく変わることになる。

 2022年から2025年までは、ベンチュリトンネルを備えたフロアを搭載しており、ここでの”グラウンドエフェクト”を有効活用して、巨大なダウンフォースを発生させていた。

 しかし2026年からは、2021年まで採用されていた”フラットフロア”に似たモノに回帰する。

 このフラットフロアは、後端にディフューザーを装着することが許されており、これによってダウンフォースを発生することができる。しかし2025年までのベンチュリトンネルと比べると、そのダウンフォース発生量は著しく小さくなる。2021年までは、マシンを大きく前傾姿勢にして、いわゆる”レーキ”を生じさせてダウンフォースを生むという手法も採られていた。

■パワーユニット

 パワーユニットにも変更が加えられる。

 エンジンはこれまで同様、1.6リッターのV6ターボエンジンである。しかし圧縮比が変わり、さらに燃料流量も実質的に絞られるため、出力は約400kW(536馬力)程度になるはずだ。一方で電動パワーは増加。MGU-K(運動エネルギー回生システム)は大幅に強化され、350kW(469馬力)となる。

 一般的には、エンジンと電動モーターの出力が均等になるという触れ込みであるが、実際にはまだエンジンの出力の方が大きい。とはいえ、電動パワーの出力が大きく増えるのは間違いなく、各チームは電装部品の効率性に関して、より多くの可能性を探る機会を得られる。

 2025年まではターボチャージャーに直接取り付ける形で、MGU-H(熱エネルギー回生システム)が搭載されていた。このMGU-Hは、2026年からは廃止されることになる。これで困るのは、ターボラグのコントロールがしにくくなるということだ。

 MGU-Hは発電するだけでなく、モーターとしても稼働させることができた。これによってターボラグをコントロールすることができていたのだが、2026年からはこれができなくなる。

■ブースト&チャージモード

 これは昨年までのパワーユニットで見られたことと基本的には同じだ。しかし手動でコントロールできる領域が大きくなる。

 これまでもチームは、回生とエネルギー放出のタイミングのマッピングをいくつか用意し、ドライバーは状況に応じてそのマッピングの中から最適なモノを選択していた。またドライバーは、ステアリングホイールに取り付けられた”オーバーテイク”ボタンを使い、より積極的に電動パワーを使うということも珍しいものではなかった。それにより、他車を攻撃したり、防御する際に活かしたのだ。

 ただ今季からは電動パワーが350kWに引き上げられる。そのため、ドライバーが手動で調整する範囲が増えることになるだろう。

■オーバーテイクモード

 これは昨年までのDRSに代わる機能であり、実質的にはプッシュ・トゥ・パス。電動モーターの最高出力350kWを、より長時間使えるようになる。

 2026年はMGU-Kの最高出力が、速度によって増減することがレギュレーションにより定められている。290km/hまでは制限はないものの、それ以上のスピードとなると徐々にMGU-Kの出力が絞られ、355km/hになるとゼロとなる。

 しかし前のマシンから1秒以内まで接近した際、コース上の指定された区間で、このオーバーテイクモードを使うことができる。この際には337km/hまでは350kWのフルパワーを使えることになり、その後は徐々に電動パワーの出力は絞られ、やはり355km/hでゼロとなる。

 つまりオーバーテイクモードを使ったマシンは、すぐ前を走るマシンよりも速く最高速に到達することができるようになる。ただこれがDRSと同じ効果をもたらすかどうかは分からない。消費されるエネルギー量を考えれば、後続のマシンが毎周オーバーテイクモードを起動できるとも限らない。

■持続可能燃料

 2026年からのF1マシンは、FIAが100%持続可能な燃料として定義した「先進的な持続可能なコンポーネント」を使わなければならない。

 この燃料には複数の種類がある。

 ひとつはバイオ燃料だ。このバイオ燃料は全て「第二世代」のバイオ燃料でなければいけない。その原料は非食用バイオマスまたは都市廃棄物から得られるモノでなければいけない。世界の食料事情に影響を及ぼすことを避ける狙いがあるのだ。具体的には、人間が消化できない高セルロース系農作物や、バイオ燃料用に栽培された作物などがそれにあたる。

 非生物由来の燃料も使うことができる。合成燃料もしくはeフューエルと呼ばれるものだ。これは持続可能電力を用いて調達された水素と炭素を用いて製造する燃料である。

 これは炭素をいかに回収するかということが難題となる。空気中の二酸化炭素を炭素源とすることもできるが、そのためのダイレクト・エアキャプチャーという方法には大量のエネルギーが必要であるため、その有効性については議論が分かれる部分でもある。

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