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【実話】ライオン、トラ、クマの3頭が家族になった話

【実話】ライオン、トラ、クマの3頭が家族になった話

ライオン、トラ、クマが家族になった話 / Credit:Canva

現在では、AI生成による「ありえない動物動画」がSNSを席巻しています。

ライオンとウサギが仲良く踊ったり、天敵同士が抱き合ったりと、現実では起こり得ない光景が“本物らしく”作られる時代です。

しかし実は、それ以上に「ありえない」と思える出来事が、現実の世界で本当に起きていました。

アメリカ・ジョージア州の動物保護施設Noah’s Ark Animal Sanctuaryで、ライオン、トラ、クマという本来なら決して共存しない3頭の捕食動物が、長い年月にわたって家族のように暮らし、その物語は20年以上続いたのです。

この出来事は、動物の行動が「生物学的な常識」だけでは説明できないことを示す、象徴的な実例になりました。

目次

  • 救出されたライオン、トラ、クマの「あり得ない絆」の始まり
  • トラウマが生んだ家族、そして別れ

救出されたライオン、トラ、クマの「あり得ない絆」の始まり

物語は2001年、アメリカ・アトランタで起きた麻薬取締の現場から始まります。

警察が踏み込んだ住宅の地下室で見つかったのは、3頭の幼い野生動物でした。

アフリカライオン、ベンガルトラ、そしてアメリカグマ。自然界であれば、出会うこと自体が異例で、遭遇すれば命の危険すらある組み合わせです。

彼らの状態は悲惨でした。

トラのシア・カーンは栄養失調で骨ばり、寄生虫にも侵されていました。

ライオンのレオは、成長に合わない狭い檻に閉じ込められ、鼻には金網に押し付け続けたことでできた感染傷がありました。

クマのバルーはさらに深刻で、幼い頃に装着されたハーネスが外されないまま成長し、体に食い込んでしまい、外科手術が必要な状態だったのです。

彼らは動物を売る犯人たちにとって、ただの「在庫品」でした。

そして救出後、3頭はジョージア州のノアズ・アーク・アニマル・サンクチュアリに引き取られました。

通常であれば、種ごとに分けて飼育するのが動物福祉と安全管理の基本です。

ライオンもトラもクマも、いずれも大型の捕食動物であり、同じ場所に入れてしまうとケガや命の危険につながるおそれがあります。

そこでスタッフは、当然の判断として3頭を別々のスペースに分けようとしました。

ところが、このとき予想外の事態が起こります。

3頭はそれぞれ食事を拒み、不安定になり、落ち着きを失って互いを呼ぶような鳴き声を上げ始めたのです。

地下室で共に過ごした時間の中で、すでに強い心理的な結びつきができてしまっていたと考えられます。

専門家たちは悩みました。

ライオン、トラ、クマを一緒に飼うなど、動物園学の教科書には載っていません。

安全面からいえば、分けて飼育するほうが“正しい”ように思えます。

それでも最終的に、施設は「例外的に同居を続ける」という決断を下します。

3頭の生きる意欲そのものが、3頭が一緒にいることに強く結びついていると判断されたからです。

(次項では実際の様子が記録された動画のリンクもあります)

トラウマが生んだ家族、そして別れ

生物学的に見れば、この関係は「成立しないはず」でした。

トラは単独性が強く、他の捕食者を排除します。

クマも基本的には孤立的で、成獣同士が長く一緒に過ごすことはありません。

ライオンは社会性を持ちますが、それは同種に限られ、他種の捕食者には敵対的です。

それでも3頭は争うどころか、明らかな親和行動を示しました。

一緒に食事をし、体を寄せ合って眠り、互いの体を舐めて毛づくろいをしました。

トラのシア・カーンがクマのバルーの肩に頭をこすりつけ、ライオンのレオがバルーに舐められながら眠る光景は、施設を訪れた人々を驚かせました。

これらは、相手を「安全な存在」と認識していなければ見られない行動です。

背景にあったのは、幼少期に共有した極度のトラウマ体験でした。

暗く閉ざされた地下室で、飢えや恐怖、痛みにさらされる中、そばにいたのは互いだけでした。

このような状況では、強いストレス反応と同時に、「一緒にいると恐怖が和らぐ」という学習が起こります。

結果として、相手の存在そのものが安心の源となり、種を超えた強固な結びつきが形成されたと考えられます。

この3頭は施設で本当に幸せな時間を過ごしました。

それでも年月が流れ、別れの時が訪れます。

2016年、ライオンのレオが肝臓の腫瘍で亡くなりました。

残された2頭は、レオがよく過ごしていた場所の近くに留まり、活動量を落としたといいます。

2018年にはトラのシア・カーンが高齢と体調悪化で死亡し、クマのバルーが初めて完全な「独り」になります。

それでもバルーは穏やかに余生を送り、訪問者と触れ合いながら、やがて2025年の春に介助の末、静かに生涯を終えました。

3頭は最終的に同じ場所に埋葬されています。

ライオン、トラ、クマという「あり得ない組み合わせ」が長い年月、家族として暮らした事実は、自然界のルールが絶対ではないことを示しています。

参考文献

The Heartwarming Story of How a Lion, a Tiger, and a Bear Defied Biology and Became Best Friends
https://www.zmescience.com/ecology/lion-tiger-and-bear-share-impressing-friendship/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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