迂回から日常のなかの非日常が浮かび上がる
なぜこのご本を作ろうと思ったのか、どうして迂回を追っているのか……。その理由はご本には一言も書いてありません。最初のページから最後のページまで迂回の事例だけが載っています。
調査の条件なども記載がないため、おそらく対象のエリア全体を網羅的に調査するという目的でもないと思われます。一方で、迂回を記録するためには「通常のルート」と「変更されたルート」の比較が必要です。ご本では、その比較をきちんと整理した図解で示しているので、バスが走っている土地を知らなくても、いつもとの違いが直感的に伝わります。
またご本を読むと、迂回が実施される理由は水道工事やガス管取替工事、七夕祭り、さくら祭り、マラソン大会や駅伝大会などが目に付きます。地域の生活基盤のメンテナンスから、お祭りに人々が集うにぎわい、そして道そのものが舞台になるスポーツ大会など、日常の中に非日常が起こっている瞬間がバスの迂回というテーマによって、ぱっと浮かび上がります。
暮らしの中に溶け込み、許容される異変の丁寧な記録
制作にあたっては、実際に迂回の現場を訪れていらっしゃいます。写真には迂回するバスの横を駅伝の選手たちが走っている姿や、咲き誇る桜の前の通行止めの立て札など、リアルなその場の光景がしっかり収められています。
さらにコメントでは、バス停に迂回の告知がなされていたかどうかなど、現地に行っているからこその細やかな記載もあります。淡々とさえ見えるほどのすっきりとした情報に絞られた紙面から、バスが暮らしに溶け込み、いつもと変わらないときも、いつもと違うときも人々に寄り添って、より良いルートを探していることが感じられました。
臨時で発生したバスのルート変更の記録はなかなかまとめて残りづらい情報です。あるとき、ある街の、ちょっとした異変の記録は、さっぱりとしていながら、人の営みの痕跡を追う興味深さをにじませているように思いました。

