
野生動物の世界では、双子の誕生は決して珍しくありません。
しかし、ことマウンテンゴリラとなると話は別です。
このほど、アフリカ最古の国立公園として知られるビルンガ国立公園(Virunga National Park)で、極めて稀なマウンテンゴリラの双子が誕生しました。
絶滅危惧種の未来にとって、この出来事はどのような意味を持つのでしょうか。
目次
- 発見された「奇跡の双子」
- 双子の母「マフコ」の過酷な人生
発見された「奇跡の双子」
双子が確認されたのは2026年1月3日のことです。
【実際の画像がこちら】
コンゴ民主共和国にあるビルンガ国立公園でマウンテンゴリラの健康状態を見守るコミュニティ・トラッカーたちが、成体メスのマフコが新生児を抱いている姿を発見しました。
詳しく調査した結果、生まれたのは2頭のオスで、いずれも健康状態は良好と判断されています。
マウンテンゴリラにおける双子の誕生は非常に珍しく、全出産の約1%程度と考えられています。
公園内で双子が確認された前例は2020年9月までさかのぼり、今回の誕生は2026年に入って最初の出産例でもありました。
この双子は「バゲニ・ファミリー」と呼ばれるグループに属しており、今回の誕生によって家族の個体数は59頭に増加しました。
これはビルンガ国立公園で最大規模の家族群です。
一方で、双子の育児は母親にとって大きな負担となります。
幼いゴリラは世話や移動のすべてを母親に依存しており、とくに生後数か月間は生存のハードルが高い時期です。
双子の母「マフコ」の過酷な人生
母親のマフコは2003年生まれで、これまでに7頭を出産しています。
実は彼女自身も、過酷な運命を生き抜いてきたゴリラです。
4歳のとき、武装した人間によって母親を失い、その後も家族の分裂などを経験しながら成長してきました。
実はマフコは2016年にも双子を出産していますが、そのときの子どもたちは誕生からわずか1週間で命を落としています。
この経験があるからこそ、今回の双子に対しては、公園側も特別な警戒態勢を敷いています。
レンジャーによる追加の監視と保護措置が取られ、必要に応じて支援が行われる体制が整えられています。
マウンテンゴリラは野生に1,100頭未満しか残っておらず、国際的なレッドリストでは「絶滅危惧種」に分類されています。
ビルンガ国立公園での保全活動は、こうした危機的状況の中で続けられてきました。
同公園は、欧州連合やUNESCOの支援を受け、密猟対策や地域連携を進めています。
その成果として、マウンテンゴリラの個体数は過去10年で緩やかな回復傾向を見せています。
今回誕生した双子は、単なる珍しいニュースではありません。
危険と隣り合わせの環境の中で、命がつながれたという事実そのものが、保全活動の積み重ねが確かに実を結びつつあることを示しています。
極めて稀な双子の誕生は、マウンテンゴリラの未来に灯った、小さくも確かな希望のサインと言えるでしょう。
参考文献
Incredibly Rare Mountain Gorilla Twins Have Just Been Born In The Wild
https://www.iflscience.com/incredibly-rare-mountain-gorilla-twins-have-just-been-born-in-the-wild-82168
Rare Birth of Twin Mountain Gorillas at Virunga National Park
https://virunga.org/news/birth-of-twin-mountain-gorillas/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

