WEC(世界耐久選手権)第7戦富士6時間レース予選を前に、シリーズのオーガナイザーであるACO(フランス西部自動車クラブ)とトヨタが特別記者会見を開き、MissionH24プロジェクトの今後について説明した。
ACOが主要パートナーを務めるMissionH24プロジェクトは、スポーツカーレースにおける水素利用の枠組みを構築することが目的。モータースポーツにおける代替燃料として水素を活用することを提案し、水素燃料電池を搭載したプロトタイプカーを開発している。
今年6月のル・マン24時間レースの際には、トヨタがMissionH24プロジェクトと提携することが発表しており、プロジェクト3台目の「H2EVO」の開発に技術協力することになる。
ACOのピエール・フィヨン会長は、会見で次のように語った。
「WECの歴史において、重要な100戦目となるこの特別な富士で、水素について語れることを嬉しく思う。水素はすでにWECの未来の一部となっており、2028年からはこのエネルギー源に特化したカテゴリーが新たに加わる」
「今年6月のル・マン24時間の場で、MissionH24とトヨタの提携を発表した。改めてお礼を言いたい。今こそ行動の時だ」
トヨタからは、TOYOTA GAZOO Racing Europe副会長の中嶋一貴が登壇。主に空力や冷却といった領域でプロジェクトに協力していくと説明した。
「モータースポーツで培ってきた私たちの専門知識を活かして、特に空力面と冷却システムに焦点を充てた技術協力を通じて、MissionH24プロジェクトの強化に協力したいと思います」
「ACOはモータースポーツにおける水素技術の先駆者であり、私たちもその強い意志を共有しています。技術面だけの貢献にとどまらず、水素の可能性を他の分野にも広げるパートナーシップを築いていくことを目指しています」
「トヨタはカーボンニュートラルの実現が、自動車が社会に必要とされ続けるために必要不可欠だと考えており、またそのためには複数の選択肢が必要だと考えています。私たちは水素技術をそのひとつとして、今後も推進していきたいと思います」
「安全性が担保されなければならないのは間違いないですが、たとえば今使っているガソリンが安全なのか、というような話なんだと思います。長い間使ってきた中でいろんな知恵で安全に扱えるようになってきている。水素に関しても同じように、まずやってみて、それを積み重ねて将来の選択肢が増えることを期待する、そこを目指してやっていくことが大事なんだと思います」
MissionH24プロジェクトのテクニカルディレクターであるバセル・アスランが、トヨタとの提携について、そして今後のプランについて説明。2026年中にH24EVOのシェイクダウンを実施する予定だと語った。
「6月に始まったトヨタとの提携は、今のところ日々のメールの交換や、毎週ビデオ会議を行なっている段階だ。両者間でおよそ10名のエンジニアがこのプロジェクトに関わっている」
「この提携でいくつかの開発項目が検討されるようになり、まず燃料電池の冷却に注力している。今の車両設計だと、空気の排出が不十分であることが分かった。より効率的に排気できるようにルーバーの形状や開口部の位置を変更することで、冷却効率を上げることができている」
「11月にマシンの骨格設計や冷却システムの構造を確定させ、冷却に影響を与える空力もこの時点で決定する予定だ。2026年2月にH24EVOのボディワーク、カウルを決め、空力性能を確定させる。その後、2026年中に車両を風洞でテストし、走行テストまで実施する予定だ」
「クルマ全体の詳細なテストを経て、2027年中にこの車両の性能を最大限に発揮し、2027年の中盤以降にはレースに出られるかもしれない。ただ、現時点で決まっているモノはない」
トヨタ自身も、今年のル・マンで液体水素を内燃機関で燃焼させるテストカー「GR LH2 Racing Concept」を発表。水素カテゴリー誕生に向けて歩みを進めている。
なお水素カテゴリーのレギュレーションが固まる時期について聞かれたフィヨン会長は、それについては「来年の早々だ」と答えた。

