まだまだいる、お笑いの狂人たち
ジャルジャルとトム・ブラウンについても著書『現代お笑い論』では取り上げましたね。
ワタナベエンターテインメントの若手芸人をもっと取り上げてくれって? おっといけねぇ、ナベプロのマネージャー達からの圧を感じてしまいました。いや、あのね、M-1で出会った面白い若手芸人がまだまだいるんだよ。
たとえば真空ジェシカは、異常者の漫才。陰の異常者と陽の異常者。ただ異常者が二人揃うとまともに見える凄さ。あくまでも正統な漫才をやっているように見せて誰よりも狂っているスタイルに落とし込む漫才。天才です。
ロングコートダディも狂っている。狂っているといえば、おいでやすこがの小田なんて大声を出す狂人。あの大声をうるさいという人がいるが、うるさくないんだ。うるさいはずのボリュームで怒鳴っているんだが、うるさくなくて面白い。だから売れたのです。
NON STYLEは漫才も好きだし、嫌われキャラなのに愛されているという井上君の不思議なキャラもいい。同じ嫌われキャラでも、本当に視聴者から嫌われてしまったにもかかわらず、しぶとく活躍している相席スタートの山添君とか、彼の目は異常者の目。
って私は異常者好きなのか? いや、芸人は普通の目つきじゃ駄目なんだ。でも髭男爵の山田ルイ53世は「グッとラック!」にレギュラー出演してもらったからわかるが、優しい目をしていたなあ。そうか、相方のひぐち君が異常な目つきだから、それで売れたのか。
付き合いから言えばロンドンブーツ1号2号の淳さんについても触れないと失礼だろう。まあ彼の魅力は薄っぺらに見えて実はやはり薄っぺらなところ。でも「野暮も貫き通せば粋になる」という言葉と同じで、「薄っぺらも貫き通せば深みが出てくる」という状態にロンブー淳はなっている。
何が言いたいかというと、お笑い芸人全員について書いちゃいられねぇんですよ。
「盗めるものじゃねえぞ」
立川談志の金言。芸を「盗むにも盗む奴の力量が必要だ」
ワタナベエンターテインメントの若手芸人は沢山いる。2024年のワタナベお笑いNo1決定戦の準決勝を見届け人という形で見させて頂いたが、本当に面白かった。事によるとM-1よりも──お世辞ではなく──面白いんじゃないかと思ったほどだ。まあ、後々落ち着いて考えるとやはりM-1の方が面白いんだけど。だけど、一瞬でもそう思えるほど勢いはあった。優勝したのはAマッソ。彼女達の漫才は才気が先走っている。
でね、こんなに面白い芸人が揃っているのになかなか売れない、M-1の決勝にもあまり進むことが出来ないのは何故か? 個々のキャラが薄い。つまりインパクトが薄い。
準決勝の中で江戸川ジャンクジャンクのネタの面白さには舌を巻いた。でも一番覚えているのはちゃんぴおんず。ピンク色のスーツを着てかなりベタな笑いをやる。日本一おもしろい大崎君なんかは「水曜日のダウンタウン」の常連だ。
つまりね、かまいたちの時に感じたような「上手さ」が前面に出てしまっている芸人が多い。ワタナベエンターテインメントのお笑いスクール出身が多いからテクニックを学びすぎちゃったのかなあ。
そもそもお笑いなんて学ぶものじゃありません。落語もそうよ。学んだやつは売れません。感じ取るものです。
「芸は盗むもの」ってことか?
いや、これは違います。談志も言っておりました。
「盗めるものじゃねえぞ」
「盗むにも盗む奴の力量が必要だ」
とね。若いうちは盗む力がないから、感じ取るしかないのです。
私は弟子に何も教えません。すると彼らは何もしません。感じ取ろうともしない。だから売れない。上手くならない。
弟子だけで20人くらいいる。それだけでも大変なのに、ワタナベエンターテインメントの若手まで手が回りませんよ。もっと売れたら、M-1で最後の決戦まで行ったら書いてやる。偉そうだな。何様だ志らく!
文/立川志らく

