
深海に棲むはずのレアな魚が、水面近くに現れたようです。
2025年の年末、米カリフォルニア州モントレー湾で、通常は水深数百メートルに生息する“幻の深海魚”が、わずか数メートルの浅さで目撃されました。
その正体は「キング・オブ・ザ・サーモン」と呼ばれる極めて珍しい魚の幼魚です。
名前だけ聞くとサケの仲間のようですが、実はまったく別の生き物でした。
目次
- 深海の王が、なぜ水面近くに?
- 「キング・オブ・ザ・サーモン」の正体とは?
深海の王が、なぜ水面近くに?
この出来事が起きたのは、カリフォルニア州モントレー湾のマカビー・ビーチ沖です。
ダイバーのテッド・ジュダー氏が妻とともに潜水の準備をしていたところ、水深約4.6メートルという浅い場所で、銀色に輝く細長い魚が、岸と平行にうねりながら泳いでいるのを発見しました。
その姿は、まるで「銀色のナイフの刃」が水中を漂っているかのようだったといいます。
【画像の一覧はこちらから閲覧できます】
ジュダー氏は横から全体像を見ようとしましたが、その魚は常に最も細い断面をこちらに向け、巧みに体の向きを変えていたそうです。
追い回してしまうことを避け、距離を保ちながら撮影された映像と写真が、その後大きな注目を集めました。
当初は、リュウグウノツカイの幼魚ではないかとも考えられましたが、写真はやがてMonterey Bay Aquariumの研究者の目に留まります。
魚類学者たちによる検討の結果、この個体は「キング・オブ・ザ・サーモン(Trachipterus altivelis)」の幼魚であると判明しました。
「キング・オブ・ザ・サーモン」の正体とは?
キング・オブ・ザ・サーモンは、体がリボンのように細長い深海魚で、通常は沖合の水深数百メートルから最大約900メートル付近に生息しています。
人間が活動する海域とはほとんど重ならないため、生きた姿が観察されること自体が非常に珍しい魚です。

ここで注意したいのが名前です。
名前は似ていますが、キングサーモン(マスノスケ)とは全く違います。
キング・オブ・ザ・サーモンはサケ科ではなく、フリソデウオ科(リボンフィッシュ)の仲間で、生物学的には全く別の系統に属します。
では、なぜ「サーモンの王」という名前が付いたのでしょうか。
その由来は、太平洋岸北西部に暮らす先住民であるMakahの伝承にあります。
彼らは、このめったに姿を見せない魚が、サケたちを産卵場へ導く存在だと信じていました。
災いを予兆するとされる深海魚の伝説が多い中で、この魚の名前は珍しく、希望に満ちた意味を持っています。
深海という“別世界”の住人が、ふとした偶然で人の目の前に現れる。
今回の発見は、私たちが知っている海がいまだ未知に満ちていることを改めて示しました。
キング・オブ・ザ・サーモンの幼魚が、なぜ浅瀬に現れたのか、その理由はまだ分かっていません。
しかし、この一瞬の出会いが、深海生物の生態を理解する新たな手がかりになるかもしれません。
参考文献
California Diver Spots Rare Deep-Sea King-Of-The-Salmon Just 4.6 Meters Below The Surface
https://www.iflscience.com/california-diver-spots-rare-deep-sea-king-of-the-salmon-just-46-meters-below-the-surface-82183
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

