それでも立ち止まらなかったのは「本当のやりがい」を見つけたから
想定外の出費の中、地域の人々の想いに応えるために旅館再建を決めたスザンヌさん。しかし、実際に動き出してみると、当初想像していた以上に大きなやりがいを感じるようになっていきました。
それは、龍栄荘を単に「かつての旅館として再建する」ことではなく、「河内という町全体の魅力を発信する拠点にしたい」という新たな目標が生まれたからです。

「旅館再建に向けて動き始めてから、河内町の魅力がどんどん見えてきたんです。海が近くて自然豊かなで、便利なものはあまりないかもしれないけど、“最高の景色”がある。ゆっくりと時間が流れているように感じられる魅力的な町だなと。その魅力を皆さんに伝えたいと思うようになりました」
その想いを形にするため、スザンヌさんは現在、地域資源を活かした宿泊プランの考案にも取り組み始めています。

そのうちの一つが、地元の釣りプロ・山本高彰さんとのコラボレーションです。河内町には釣りを楽しみに訪れる人が多いことから、山本さんに釣りを教えてもらいながら夕日を眺め、釣れた魚を旅館で味わう。そんな河内町ならではの体験を、ランチセットや夜の宴会プランとも組み合わせて提供しようとしています。
「河内町の人たち、熊本の人たちと、龍栄荘として一緒に取り組めることを増やしていきたいんです。もちろん旅館として開業してから大変なこともたくさんありました。それでも、お客さまからお礼の手紙をいただいたり、『最高でした』と寄せ書きをもらったりすると、本当に励みになります。大変なことより、『この旅館を始めて良かった』と思える瞬間のほうがずっと多いんです」

今後の目標について、スザンヌさんはこう語ります。
「龍栄荘を知ってもらうことで河内町にも注目が集まり、この町が『来たら何か楽しいことがある場所』になってほしい。デビュー当時から『熊本出身』と言い続けてきたことで多くの方に覚えていただき、県から熊本県宣伝部長にも任命していただきました。私のキャリアを支えてもらった恩返しとして、河内町のようなまだ広く知られていない場所の魅力を伝えたいです」
乗り越えなくていい。モヤモヤに「寄り添いながら生きていく」
タレントとして脚光を浴び、旅館経営者としても新たな挑戦を続けるスザンヌさん。一見すると華やかに映るスザンヌさんのキャリアですが、その裏には決して順風満帆とは言えない多くの苦労がありました。
そんなスザンヌさんに、はたらくことや生きることに悩みを抱える若者へ向けた「モヤモヤとの付き合い方」について伺いました。
「いくつになってもモヤモヤは出てくるし、時には乗り越えられないときもありますよね。だから、無理して乗り越えようとせず、そのモヤモヤを心の中に飼いながら生きていけばいいと思います。モヤモヤを感じたら、ないものにはせず、『また来たか』とその気持ちに寄り添いながら生きていけたらいいんじゃないかな」
モヤモヤを、取り除くべき問題ではなく、常にあるものとして受け止める。旅館経営で想定外のトラブルを乗り越えてきたスザンヌさんだからこそ、モヤモヤの波を良し悪しで捉えるのではなく、ありのままに認めることが幸せにはたらくための大切な基盤であることを知っているのかもしれません。
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最後にスザンヌさんは、若者が「はたらく」を楽しく自分らしくするためのアドバイスをこう語りました。
「好きなことを仕事にできている人なんて、実はほとんどいないと思うんです。私も、本当は書類作成やお金の計算は苦手だけど、好きな仕事のために一生懸命やっています。好きじゃないこともやるから、やりたいことができる。そう割り切って仕事に向き合えば、自分らしくはたらけると思います」

(「スタジオパーソル」編集部/文:間宮まさかず 編集:いしかわゆき、おのまり)

