『フォートナイト』の世界的ヒットと決済手段の多様化 —— PS Storeの更なる進化
2016年にはSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)とSNEI(ソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナル)が統合され、現在のSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が誕生した。社名から「コンピュータ」を外したのは、ゲーム体験が単なる機械操作を超え、プレイヤーやクリエイターとの関係性を軸に据える時代へ移ったからだ。ゲームチェンジャーとなったのはビッグタイトル『Fortnite(フォートナイト)』(2018年)の登場だった。
『フォートナイト』の基本プレイ無料(Free-to-Play)は、シーズンごとの継続的アップデートとゲーム内通貨による収益を組み合わせた仕組みで、現在のライブサービスゲームの定番モデルとなっている。少しさかのぼれば、日本発の『機動戦士ガンダム バトルオペレーション』や『ファンタシースターオンライン2』も同様の形で時代を先取りしていた。その流れを受けて、『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』(2019年)や『原神』(2020年)といった作品が世界的なスマッシュヒットを記録し、Free-to-Play作品の存在感をさらに押し上げた。
2020年に登場したPlayStation 5では、ネットワークに接続して映像や音楽を楽しむサブスク時代ともいよいよ足並みが揃う。スマートフォンから購入・ダウンロード予約ができ、帰宅後すぐにゲームをプレイすることが可能となる仕組みが導入され、体験の質は大きく変わった。さらにSIEは国と地域ごとの決済手段にもきめ細やかに対応し、クレジットカードが普及していない国でもスマホ決済を取り入れることでゲーム先進国はもちろんのこと、新興地域(インドやアルゼンチン、ブラジル、インドネシアなど)での市場拡大に成功した。
今やこれらの国々は、売上やユーザー数が先進国を上回るほどの成長、拡大を遂げている。一方、日本では依然として最近の『モンスターハンターワイルズ』に代表される大型タイトルが強い人気を誇りつつも、同時に小規模デジタル作品(インディーゲーム)にも支持が集まるなど、懐の広い多様なプレイヤーのニーズによって成長が継続しているとも語った。
プレイステーションとPS Storeが切り拓く未来
講演の終盤、西野氏は「PS Storeは単なる販売の場ではなく、プレイヤーにとって最高の遊び場であり、クリエイターにとって最高の出版の場である」と強調していた。今後は進化するマーケティングやAI技術を活用し、ユーザー一人ひとりに合わせた体験を提供していくことを目指す。データを活用したパーソナライズ強化はプレイヤーにとっても開発者にとっても新しい価値を生み出し、「プレイヤーとともに最高の作品を育てる場」というPS Storeの本質をさらに際立たせるだろう。
講演の締めくくりに西野氏は「待たされるダウンロード」から始まったPS Storeが、2025年現在では全世界1万2千本以上のタイトルを揃える巨大なプラットフォームへと進化したことに大きく胸を張った。そして今後はネットワークを通じてゲームが世界中のプレイヤーにシェアされ、さらに多くの人がゲームに興味を持って遊ぶ……そんなトリプルスパイラルを起こすことで、ゲーム業界をクリエイター、プレイヤーとともにまだまだ盛り上げていく強い意思を示した。
今回の基調講演で語られたプレイステーションの30年の歩みは、黎明期に起きたネットワークの不便さや社内での葛藤を乗り越えた「その先」を提示するものでもなければ、単なるハードやネットワークの進化、あるいはコンテンツ収益構造の変化にとどまるものでもない。そういった一つひとつの「点」ではなく、世界規模での継続的な成長を試行錯誤の積み重ねとして一本の「線」に描き直してみると、そこに浮かび上がるのはデジタル時代におけるエンターテインメントの在り方そのもののように思えた。
東京ゲームショウ2025(一般公開日)は9月28日(日)まで開催。なお、開会式の場で来年の東京ゲームショウ2026は同イベント初の5日間開催(ビジネスデイ2日間,一般公開3日間)となることが発表になった。
(取材・西本心)
