ビジャレアルを率いるマルセリーノ・ガルシア・トラル監督は、「ラ・リーガはラ・リーガだ」とだけ答えた。今シーズン、国内リーグでは3位と快進撃を続ける一方で、チャンピオンズリーグ(CL)ではいまだ白星がない(1分け5敗)。その理由を問われた際の言葉だ。
この「内弁慶」とも取れる現状に対して、スペイン紙『AS』の番記者であるハビ・マタ氏は、審判の判定やミス、決定力といった「ディテールの差」を要因として挙げている。しかし、昨夏にCL参戦を見据えた積極補強を敢行した結果としてのこの成績は、サポーターにとっては失望以外の何物でもない。
大手一般紙『EL PAIS』のディエゴ・トーレス記者は、より厳しい現実を突きつける。「最大の要因は、年々上がり続ける欧州大会の『競技レベルの壁』にある。ビジャレアルのパフォーマンスに変わりはない。異なるのは相手チームの強さだ。近年のラ・リーガは、プレミアリーグをはじめとする他の欧州主要リーグに比べて相対的に貧弱化し、かつての輝きを失った。そんな国内リーグに慣れきったスペインのクラブにとって、欧州の戦場は以前より過酷な地と化しているのだ」
主力を売却し、その資金で新たな才能を補強する。この循環スキームによって高い競争力を維持してきた“優等生”ビジャレアルですら、こうなのだ。 リーグ全体に目を向ければ、タレントの流出、競争力の低下問題はさらに深刻だ。フリージャーナリストのミゲル・キンターナ氏が象徴的な事例として挙げるのが、今シーズン、2部のラシン・サンタンデールで8ゴールを挙げブレイク中だったジェレミー・アレバロの移籍である。ドイツのシュツットガルトは、冬の移籍市場が開く1月2日を待って、即座に700万ユーロ(約13億円)の契約解除金を支払い、彼を連れ去った。
同様のケースは他にも見受けられる。昨夏、2000万ユーロ(約36億円)でレガネスからライプツィヒへ移り、今や市場の注目銘柄となったヤン・ディオマンデ。あるいは、アラベスから1650万ユーロ(約30億円)でストラスブールへ移籍し、二桁得点をマークしているホアキン・パニチェッリ。キンターナ氏が嘆くのは、かつてならこうした才能豊かな若手の受け皿となっていたはずのセビージャやバレンシアといった歴史あるクラブが、その役割を果たせなくなっているのが現状だ。
結果として、現在のラ・リーガにはマドリー、バルセロナ、アトレティコの3チームと、それ以外の17チームという構図が完成している。過去10年で、この3チーム以外でトップ3に食い込んだのは、2023-24シーズンのジローナ(3位)のわずか一度きりだ。そのアトレティコにしても、大型補強を繰り返しながらもディエゴ・シメオネ体制のマンネリ化が否めず、2強を真に脅かすまでには至っていない。 オリンピック・マルセイユのパブロ・ロンゴリア会長は、母国スペインの現状を憂い、次のように語っている。「かつてフットボールは、スペインの文化的・社会的生活の一部として深く根付いていた。しかし今、その繋がりは失われつつある。CLがもたらす莫大な富によってバルサ、マドリー、アトレティコとそれ以外のクラブとの間に、埋めようのない溝ができてしまった」
ロンゴリア会長によれば、スペインには今こそセビージャ、バレンシア、サラゴサ、オビエド、スポルティング・ヒホンといった「地方の雄」の復活が不可欠だという。これらの名門が根を下ろす地において、フットボールは単なる娯楽ではなく、人々のアイデンティティそのものだからだ。
スペイン紙『SPORT』に定期的にコラムを寄稿するベテラン記者、トニ・フリエロス氏は、この事態に強い警鐘を鳴らしている。「厳格すぎるファイナンシャル・フェアプレー(FFP)のせいか、あるいは放映権料分配の巨大な格差のせいか。理由はともあれ、ラ・リーガという泥舟は、至るところから浸水している」
かつてスペインではラ・リーガのことを「La Liga de las estrellas」(星々のリーグ)と呼び、世界最強リーグであると自負していた。しかし、その輝きが色褪せてしまった現状を前にして、今や現地の人々も確かな危機感を抱き始めている。
文●下村正幸
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