
ティラノサウルス・レックスは、短期間で一気に巨大化する“恐竜界の怪物”として描かれることが多い存在です。
しかし米オクラホマ州立大学保健科学センター(OSU-CHS)の最新研究により、このイメージを大きく覆す事実が明らかになりました。
Tレックスは成体になるまでに約40年を要し、これまで考えられていたよりも、はるかにゆっくりと成長していた可能性が示されたのです。
研究の詳細は2026年1月14日付で学術誌『PeerJ』に掲載されています。
目次
- 骨の「年輪」が語る、40年成長説
- ゆっくり育つ王が示す新たな生態像
骨の「年輪」が語る、40年成長説
恐竜の年齢や成長速度を推定する際、研究者たちは化石化した骨の内部に残る「成長線」を利用します。
これは木の年輪と似た構造で、1年ごとに形成されると考えられています。
従来の研究では、この成長線の数を数えることで、Tレックスはおよそ25歳前後で成長を終えると推定されてきました。
ところが今回の研究では、初期の幼体から巨大な成体までを含む17体の標本を対象に、より精密な解析が行われました。
研究チームは、通常の観察方法では見えにくい成長線を検出するため、円偏光や交差偏光といった特殊な光を用いて骨の断面を観察しました。
その結果、これまで見落とされていた成長線が多数確認され、Tレックスの成長期間は約40年に及ぶ可能性が高いと結論づけられました。
完全に成長した個体の体重はおよそ8トンに達すると推定されており、Tレックスは長い年月をかけて、ゆっくりと“王の体格”を完成させていたことになります。
ゆっくり育つ王が示す新たな生態像
今回の研究で注目されるのは、成長期間の長さだけではありません。
チームは、新たな統計手法を用いて、複数の標本に残された断片的な成長記録をつなぎ合わせ、Tレックスの一生を通じた「合成的な成長曲線」を構築しました。
この分析から、Tレックスは急激に成体へ移行するのではなく、年齢に応じて段階的に体格を変化させていたことが示唆されました。
つまり、若い個体と成体では、獲物の種類や生態的役割が異なっていた可能性があります。
さらに、研究対象となった標本のうち、「ジェーン」や「ピーティ」と呼ばれる有名個体は、他の標本と成長曲線が統計的に一致しないことも判明しました。
これは単なる個体差の可能性もありますが、Tレックスとされてきた標本の中に、別種や亜種が含まれている可能性を示唆する結果でもあります。
ただし、研究者たちは「成長データだけで種を断定することはできない」と慎重な姿勢を崩しておらず、この点は今後の研究課題とされています。
Tレックスは、まだ“成長途中”だったのかもしれない
1世紀以上にわたり研究されてきたティラノサウルス・レックスですが、その成長の物語は、いまなお書き換えられ続けています。
今回の研究は、Tレックスを単なる巨大で凶暴な捕食者としてではなく、長い時間をかけて成熟していく「生きた動物」として捉え直す視点を与えてくれました。
恐竜研究の定説は、最新の手法によって静かに更新されていきます。
Tレックスは、私たちが思っていた以上に、じっくりと“王”へ成長していた存在だったのかもしれません。
参考文献
T. rex grew up slowly: New study reveals ‘king of dinosaurs’ kept growing until age 40
https://phys.org/news/2026-01-rex-grew-slowly-reveals-king.html
元論文
Prolonged growth and extended subadult development in the Tyrannosaurus rex species complex revealed by expanded histological sampling and statistical modeling
https://doi.org/10.7717/peerj.20469
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部

