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体験から文化をつなぐ 大江町和紙伝承館が取り組む次世代への継承

体験が、人をつなぎ、地域へと広がっていく

紙漉き体験の間口が広がったことで、和紙伝承館の取り組みは、館内だけにとどまらず、少しずつ外へと広がり始めました。
象徴的なのが、体験型イベントや、大学・高校との連携です。

夏休み期間に行われた手漉き和紙体験では、予約不要で参加できる仕組みが用意され、小中学生や保護者が多く訪れました。
短期間の開催でありながら、年間の体験者数を上回る参加があったことは、「体験してみたい」と感じる潜在的なニーズの大きさを物語っています。

また、和紙を使ったクラフト体験や、展示説明文のリニューアルなども進められました。
展示は30年ぶりに見直され、工程が分かりやすく整理されただけでなく、英語表記や動画案内も加えられています。
和紙をよく知る人だけでなく、初めて訪れる人や海外からの来館者にも伝わる工夫が重ねられています。

こうした動きと並行して、若い世代との関わりも生まれています。
たとえば、京都工芸繊維大学の学生は、和紙伝承館の活性化をテーマにした授業を通じて、新たな商品や見せ方を考えました。
授業が終わったあとも活動が続いている点からは、単なる課題提出にとどまらない関心の深さがうかがえます。

さらに、福知山公立大学の学生による体験会や、高校生を対象にした体験型授業も実施されました。
和紙について学ぶだけでなく、実際に触れ、作り、伝える側に回る経験は、文化との距離を大きく縮めるものです。

和紙伝承館で行われているこれらの取り組みは、単に来館者数を増やすための施策ではありません。
体験を通じて人が集まり、世代を超えて関わりが生まれることで、文化が「残るもの」から「続いていくもの」へと変わっていく。
そのプロセスが、少しずつ形になり始めています。

数字が示す手応えと、これからの和紙伝承館

大江町和紙伝承館 近年の来館者数

年度202520242023202220212020
来館者数788936711734302371
手漉き体験数18347901046146

※2025年度については12月7日時点の数字
※年間開館:約120日(土日祝)

取り組みの変化は、数字にもはっきりと表れています。
紙漉き体験者数は、年度途中の時点ですでに前年度の約4倍に達し、来館者数も過去10年で最も多いペースで推移しています。
とくに目立つのが、高校生以下の来館者が増えている点です。

こうした結果は、体験メニューを増やしたことによる一時的な効果だけでは説明できません。
「自分で和紙を作ることができて楽しい」「体験してから展示を見ると、和紙づくりの凄さがより伝わる」といった声からは、来館者の滞在時間や満足度が確実に高まっていることがうかがえます。
和紙伝承館が、単に立ち寄る場所ではなく、時間をかけて向き合う場所へと変わりつつあることを示しています。

こうした成果を踏まえ、福知山市では、次の段階に向けた準備も進められています。
体験できる和紙のサイズや種類を増やすこと、和紙を使ったグッズの充実、展示内容のさらなる改善など、課題として見えてきた点を一つずつ解消していく考えです。
また、館内にとどまらず、他の施設と連携した出張体験など、新たな広がりも視野に入れています。

2025年度は「試してみる年」として、さまざまな挑戦が重ねられてきました。
そこで得られた反応や手応えをもとに、和紙伝承館は次の一歩を踏み出そうとしています。
伝統文化を守る場所でありながら、時代に合わせて形を変え、人を迎え入れる。
その姿勢そのものが、これからの地域文化の在り方を示しているようにも感じられます。

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