今作はハードな要素は控えめに、ジャッキー映画を初体験するであろう小さい子どもから、ファンの大人までしっかり楽しめる明るい作風となっているのが特徴となっている。そこでMOVIE WALKER PRESSでは、老若男女問わず親しまれている “体操のお兄さん”小林よしひさに、ひと足早く本作を鑑賞してもらいインタビューを敢行!家族で楽しめる『パンダプラン』の魅力やパンダに関する思い出、ジャッキーに憧れて体操をはじめたという“体操のお兄さん”の原点話など、ジャッキーへの溢れんばかりの愛をたっぷり語ってもらった。
■「子どものころジャッキー映画を観て、身体を動かさずにはいられない衝動に駆られました」
小林よしひさは、NHKの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」に2005年から2019年まで14年間出演し、番組史上歴代最長の「体操のお兄さん」として活躍。現在に至るまで「よしお兄さん」の愛称で親しまれている。1981年生まれで、現在44歳の小林は、世間ではジャッキー・チェンが大人気を誇っていたころに幼少期を過ごした世代。そんな小林が初めてジャッキーの映画を観たのは、かなり小さいころで、勧めてきたのはご自身のお母さんだったという。

「ジャッキーとの最初の出会いは、母に勧められる形でしたね。外で遊び回って身体を動かすのが大好きな子どもだったというのもあって、母からもアクションとか好きだろうと思われていたみたいで。年齢的には6、7歳ぐらいだったと思います。まだ小さかったので、いつもだと夜の8~9時には寝ている生活だったんですが、その日は母が『よし、ちょっとこっちに来て、いまからやる映画を観なさい』と言ってきまして。その時の私は、『いつもなら寝る時間だけど、いいの?』という感じだったんですが、翌日はお休みだし母が強く勧めてきたというのもあって、そのままその映画を観たんです。それが、地上波の洋画劇場枠で放送された『スパルタンX』でした。当然ながら観たらものすごくおもしろくて、次の日から外に出てジャッキーごっこをするようになりましたね」。
『スパルタンX』は、ジャッキーが現代風アクションを定着させた時期の作品で、まさに人気が絶頂だった1984年公開の作品。盟友であるサモ・ハン・キンポーとユン・ピョウとの共演作であり、後半で繰り広げられる当時の米キックボクシング世界王者のベニー・ユキーデとの本格的な対決シーンは、ジャッキー映画でもトップに入るほどの人気を誇っている。そんな『スパルタンX』を観た幼少期の小林は、作品のどこに惹かれたのだろうか?

「物語の後半、ヒロインの女性が敵の組織に誘拐されてしまい、幽閉されている城にジャッキーたち潜入してが助けに行くという流れになるんですが、実はストーリーに関してはまだ幼かったのであまりよくわかっていなかったです(笑)。でも、子どもながら、登場人物のコミカルなやり取りや、ジャッキーたちのアクションがすごく印象に残りまして。特に、最後のベニー・ユキーデとの格闘シーンはものすごく鮮明に記憶に残りました。それを観てしまったら、もう無性に身体を動かさずにはいられないという衝動に駆られまして(笑)。次の日の朝に起きたらすぐ、家の前に芝生でジャッキーの真似をできないかとごっこ遊びをはじめました。そんなふうになにかに影響を受けて物事をはじめるというのは、その時が初めての経験でしたね。そうした経験も含めて、未だに自分にとっては『スパルタンX』はジャッキ−映画のなかで一番好きですし、いまでも大事な作品です」。

幼少期にジャッキーの魅力に一発でハマってしまったという小林。当時はビデオレンタル店が増えているタイミングであったため、そこからどんどんとジャッキー映画に手を出していったそうだ。
「レンタルビデオが流行していたので、ジャッキーのコーナーに置いてある作品を右から順番に観ていくというのをはじめましたね。それこそ、『ドランクモンキー 酔拳』とか『スネーキーモンキー 蛇拳』とか見るようになって、どんどん好きになっていきました。『ポリス・ストーリー』シリーズも好きですし、ハリウッドに進出してからの『レッド・ブロンクス』、自動車レースを絡めた『デッドヒート』なども大好きですね。ほとんどの作品を観た気になっていたんですが、先ほどジャッキー・チェンの主演作は100作以上もあると聞いて驚きました。まだまだ観ていない作品があるというのもすごいですよね」。


幼少期の小林を夢中にさせたジャッキー・チェン。彼のどのような部分に俳優としての魅力を感じているのだろうか?
「私自身、アクション映画全般が好きなんですが、アクションスターにはいろんなタイプの方々がいらっしゃいますよね。そのなかでもジャッキーは、なんとか危機を乗り越えて、ボロボロになりながら勝っていく姿を見せてくれるので、そこに一番の魅力を感じます。あとは場所や周囲にあるものを利用した、頭を使った戦い方も大好きです!加えて、ジャッキーだからこそのコミカルさも外せないですね。そうした要素が重なって、親しみやすさも含めた部分が最大の魅力なんだろうなと思っています。ブルース・リーには、偉大な存在で無敵な印象がありますが、ジャッキーは憧れというか、自分も頑張ればそこにいけそうな感じ、パルクール的に壁を越えていくような身近なアクションを『自分もやれそう、やってみたい』と思わせてくれる身近な魅力があるんですよね」。
■「安心して子どもにも見せることができる。ジャッキー映画の入門編としてぴったり」
そんなジャッキー好きの小林は、最新作『パンダプラン』にこれまで以上の“ジャッキーらしさ”を感じられる1作だったそうで、熱っぽく語ってくれた。
「今回、ジャッキー・チェンが本人の役で出演されているんですが、『本当にこれまで演じたことがなかったの?』と思ってしまいました。というのも、ジャッキーという存在は映画を観ていてもかなり身近な存在だったで、本人役であってもそうでなくても、いつものジャッキーだなと思ってしまいました(笑)。本人役の違和感がまったくなくて、きっと普段からああいう形でファンにはニコニコと振る舞って交流してているんだろうなと感じました。映画の内容もとても観やすくて、“ジャッキーらしさ”がすごく出ている映画でした。きっと子どものころの自分が観たら、『スパルタンX』と同じくすごく熱狂して楽しんでいたと思いますね」。

日本劇場公開主演作が100作を迎え、様々な作品に出演してきたジャッキー。小林が『パンダプラン』から感じたのは、アクションとコメディを融合させた、ジャッキーのある種の原点回帰的な要素だという。その作風から、安心して子どもにもお勧めできる点が見所であると説明する。
「冒頭から“パンダを助ける”という部分が中心になっていて、お話もわかりやすく、展開がものすごく早いんですよね。その間、笑いを織り交ぜたアクションの連続なので子どもも飽きずに観ることができると思います。劇中で、倉庫に逃げ込むシーンがあるんですが、ジャッキー好きなら『彼のホームグランドに来た!』とワクワクしますし、敵とのやり取りでも笑える要素がたくさん盛り込まれていました。敵の集団もシリアスさのなかにどこかコミカルさもあって、なかにはジャッキーの大ファンだというメンバーがいたり。格闘アクションの部分も、カッコイイけど、リアルで痛々しい表現がほとんどないので安心して子どもにも見せることができる。いまの子に対してはジャッキー映画の入門編としてはすごくいいものになっていると思いました」。

本作のもうひとつの注目ポイントと言えば、奇しくも本作の公開時期に中国に返還されることも話題となっているパンダだ。子どもたちにも人気の動物に関しても、小林は“よしお兄さん”として特別な想いがあるという。
「パンダは私がやっていた子ども向けの歌や体操のなかによく出てくる動物なので非常に親しみがありますね。子どもにもとても人気が高い鉄板の動物ですから。昔、テレビ番組で『体操に出てくる動物を観に行く』というロケ企画がありまして。その時に上野動物園さんにお世話になって、パンダを間近で見せていただきました。この映画にもシーンとして出てきますが、パンダのうんちの臭いを嗅ぐという貴重な体験もさせていただいて(笑)。笹だけを食べているパンダのうんちは、お茶の香りがするんですよ。
そんな子どもたちの大人気なパンダ、にジャッキーが加わるわけですから、もう完璧ですよね。劇中の赤ちゃんパンダはCGでしたが、役者さんの演技もあいまって実在感があってとても可愛かったです。好奇心でどこかに行ってしまうし、すぐお腹が空いて、どこでも寝ちゃう。そんな姿も見ていて楽しめるポイントでした」。

■「ジャッキーのように、いつでも『すごいね』と思われるように生きたいと思っています」
本作では役者であるジャッキーと素顔のジャッキーの両面がクローズアップされるが、そうした部分に対して、長年“体操のお兄さん”という姿で過ごしてきた小林自身との重なりについても語ってくれた。

「素のままに子どもたちや動物にも愛を持って生きている方なんだなと、今回改めて感じました。私は“体操のお兄さん”を務めることになった際に、役目を演じることがすごく大変だろうと思っていて、『このままの私でいきます』ということをオーディションでお伝えしていたんです。そのおかげで、実際に“体操のお兄さん”になっても、いつも素のままの自分なので、普段との違いを意識をせずにいられました。もちろん、仕事としてのオンとオフを切り替えるスイッチがどこかにあるとは思うのですが、いい意味で自分を偽ってなにかをするということはしたことがないんです。そこはジャッキーイズムに近いかもしれません。
実は今年で体操のお兄さんが20周年なんですけど、これも変に肩肘張らずに、普段の自分のままで体操のお兄さんをやってきたから長く続けられたのかなと思っていて。対するジャッキーは、今年で71歳。それで50年以上も皆が思うジャッキーであり続けていられるというのは、きっと同じように普段からご自身そのままだからなのかなと思います」。

話せば溢れてくる小林のジャッキー愛。ジャッキー・チェンという存在は自身にも大きな影響を与えており、その生き方も参考にしたいそうだ。
「コミカルさや人をなにとか喜ばせようとか、そういったところは最初の憧れではありましたね。それがきっかけで自分がこういう世界に入ってジャッキーのようになろうとはっきりと考えたわけではないんですが、やはり自分のベースになってるものにジャッキーがあるなとは、今回の映画を観て改めて感じました。私は『一生、体操のお兄さんでいる』というのを掲げていて、なんなら死ぬ時には棺桶に倒立しながら入りたいと思っていまして(笑)。それくらい頑張ろうと思っているんですが、そこもまたジャッキーの影響を受けている部分かもしれません。71歳という年齢になってもそう思わせない、『やっぱり、いつまでもジャッキー・チェンだ』ってところは尊敬しかありません。私自身も年齢を重ね、私をテレビで見ていた子どもたちも大きくなりましたが、いつでも『よしお兄さんはすごいね』って思われるように生きたいと思っています」。

取材・文/石井誠
