ミラノ・コルティナ オリンピックの観戦をより楽しむために、競技の特徴や見どころポイント、ルールなど、フリースタイルスキー・ビッグエアの基礎知識をつけておこう。
■フリースタイルスキー・ビッグエア(Big Air)とは? そのおもしろさ

一本の放物線に技と戦略・覚悟を賭けた戦い
フリースキー・ビッグエアは、巨大なジャンプ台から放たれる一度のジャンプで、回転数、空中姿勢、技の完成度を競う競技だ。五輪では2018年平昌大会から正式種目として採用され、フリースタイル競技の中でも最も直感的で、迫力のある種目として存在感を放っている。
FIS(世界スキー連盟)が国際大会の基準とするコーススペックは、助走となるドロップインランプの長さが最低約30m、キッカーの高さは最低2m以上、キッカーのテイクオフ角は最低25、テイクオフからランディングの距離が最低約15mとされている。そこから繰り出されるエアは、水平飛距離が約20〜30m、大きな会場になると30mを超えるサイズにもなり、空中での滞空時間は約3秒ほどになる。
競技の本質はシンプルだ。高く跳び、難しい技をカッコ良く決める。しかしその裏側には、極限の計算と判断がある。ビッグエアでは、助走のスピード、踏み切りの角度などを計算し尽くしたうえで、滞空時間と飛距離のなかで、いかに回転やグラブを入れ、ランディングをスムーズにキメるか。ワンチャンスで一度の選択がそのまま結果になるのだ。難易度を上げれば高評価に近づく一方で、失敗すれば即転倒。
難しさは、技術だけではない。天候や風の影響を強く受けるため、空中での微調整能力が問われる。ほんのわずかなズレが、着地の成否を分ける。練習で成功していた技でも、本番では決断を迫られることが珍しくない。安全策と勝負技の狭間で、選手は常に自分の限界と向き合わなくてはならず、メンタリティの強さも試される。
ビッグエアのトリックは、今なお難易度が高まり続けている。現在の最高レベルの回転は2340、なんと6回転半なのだ。軸を斜めにずらしたコークの2160や1980といった超高難度トリックを持つ選手もいる。回転の難易度だけでなく、エアの入り方にバターなどジブのスタイルを取り入れたり、独創的なスタイルの表現が競われている面も見逃せない。
観戦ポイントは、まず技の「難度」。加えて「高さ」と「スタイル」そこに「余裕」があるかどうかに注目だ。同じ回転数でも空中で安定しているか、着地まで流れがあるかで印象は大きく変わる。空中での余裕の“間”は、”映え”にも通じ、観る者からすると完成度の高さとして映るのだ。
動画で実際の様子を見てみよう!
ミラノ・コルティナ オリンピックならではの着目ポイント
前回の、都市部で安定したコンディションで開催された北京五輪と違い、今回はイタリアの山岳エリア、コルティナが舞台となるため、天候や雪のコンディションも読みにくい。山間部で特に問題となるのは風だ。風があまりに強ければ勝負をかけるトリックも封印せざるおえなかったり、いちかばちかで打っても成功しないリスクも高くなる。勝負師たちの天候との睨めっこになるかもしれない。
さらに今大会は、予選・決勝ともに19時スタートと夜の開催。2月の厳冬期の夜となれば、会場となるLivignoの過去の統計からすると、気温が−10℃〜−15℃台と、相当に気温が下がる。雪質も日中よりも固くなり、アプローチのスピードも上がる可能性も。極寒のなかで選手たちはいかにコンディションを整えるかも勝負に影響を与えるだろう。

また、北京五輪と異なる点として、今大会ではすべての選手にポールの使用が義務付けられている点だ。ジャッジの観点から「ポールを持つ・持たない」で評価がしづらいことから、レギュレーションが統一されたのだ。(例えば同じトリック・難易度でポールを持っている/持っていないことをどう評価に盛り込むべきか、など)ポールを持っていないほうが当然グラブはしやすいため、技の難易度としては上がる。
その一方で手が空中で暴れてしまいがちで、スタイルの洗練された印象は薄くなる。どちらが高得点にすべきか? その問いを、ポール使用を義務化することで、見解の違いという不明瞭さが回避できることになる。これがミラノではどう選手たちのパフォーマンスやジャッジに影響するのか、そこも興味深い点だろう。
■フリースタイルスキー・ビッグエアの試合形式とジャッジ方式
予選から決勝まではこのような流れで争われる。
〈予選〉全員が3回ずつ滑り、各選手の高い方の得点を採用して順位を決め、上位8名が決勝に進む
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〈決勝〉予選を通過した全員が3回ずつ滑り、各選手の最も高い得点を採用して、最終順位を決定する
フリースキービッグエアはシンプルなシステムだ。予選、決勝とも3本飛ぶチャンスがあり、3本のうちもっとも高い点で順位を決める。つまり、他の2本は失敗しても、1回高得点をあげればいいのだ。予選の点数は決勝の得点には反映されない。なお、予選の滑走順は抽選により決め、決勝は予選順位の下位から順番に滑るシステムだ。
*当日の天候などにより試合形式、順位決定形式が変更になる可能性あり
