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手塚治虫『アドルフに告ぐ』『どろろ』、『横尾忠則全集』を甦らせた国書刊行会・樽本周馬氏に迫る。昭和の名作を今、復刻させる意義とは?

『アドルフに告ぐ オリジナル版』

──『アドルフに告ぐ』に関しても、『どろろ』と同じように雑誌版を復刻させたという点がポイントですか?

そうですね。『どろろ』と同じように、雑誌版の扉やカットされたページを掲載しています。大きさに関しても、今まで最大で四六判サイズだったのを雑誌連載時と同じ B5 判の大判にしています。実は、『アドルフに告ぐ』は以前に手塚プロダクションの資料室長の森さんから「単行本版が完全版だから復刻はしないほうがいい」と言われていたのですが、その後復刻の企画がうちに持ち込まれたんですね。『アドルフに告ぐ』は私にとって手塚作品の中でもベスト3に入る作品なので、やはりやりたいなと……ここは私の好みを優先させてしまいました(笑)。雑誌版の 10 ページごとのリズムの取り方は、連載時のわくわく感を追体験することができますしね。森さんがおっしゃるように『アドルフに告ぐ』は単行本がかなり加筆されていて、ラストなどは数十ページにおよぶ加筆があるんです。そこで、この復刻版では、別冊に単行本版のラストも収録しています。

雑誌オリジナル版ラストのページ(左)と別冊に収録されている単行本版ラスト(右)

 

──雑誌ならではの面白さというのは他にどのような点がありますか?

『どろろ』でいうと、これはボーナストラックというか、おまけページなのですが、たとえば当時、作家さんが他の作家さんの絵を描くという企画があったのです。赤塚不二夫先生が書いた『どろろ』とか、手塚治虫先生が書いた『もーれつア太郎』とか(笑)。

──それは……貴重ですね。

この「紅白ものまねまんが合戦」という企画ページは、赤塚不二夫先生、藤子不二雄先生(FとAに分かれていない時代です)など各先生のプロダクションに許可を得て掲載することができました。ここでしか読めない貴重なものだと思います。

──『どろろ』と『アドルフに告ぐ』のどちらからも、根本的に雑誌愛を感じます。当時は安かった漫画誌ですが、今となっては懐かしいものですよね。ノスタルジックな気持ちになります。

そうですね。あくまで単行本こそ完成形ではあるのですが、雑誌版では別の楽しみ方を味わってほしいですね。

『復刻版 横尾忠則全集』

──この作品集は、1971年に講談社から出たものと全く同じものということですか?

全ページを高精細スキャンして調整して作成したもので、基本的な内容は同じですが、当時の原画データが残っている作品やポスター画像はさらに綺麗なものに差し替えています。本書は長年稀覯本として高価な古書として入手困難なものだったのですが(綺麗なものだと 30000 円以上します)、今回横尾忠則書籍担当の製版チーム(凸版の富岡隆さんがリーダーです)が 1 年以上かけて丁寧に復刻作業をしてオリジナルを凌駕する仕上がりになったと思います。この『全集』の前に刊行された『横尾忠則遺作集』という本がありまして(2024 年にトゥーヴァージンズから復刻されましたね)、それはデザイナーの粟津潔さんが構成を担当しているのですが、それが横尾さんの好みではなかったようなんですね。それで、『全集』に『遺作集』のページが掲載されたときに、その一部を横尾さんが鉛筆で落書きをしているんです(笑)。そこまでするほど嫌だったのかと(その詳細は今回の復刻版での横尾さんインタビューで語られています)。それで『全集』復刻版では、その落書きをした作品を綺麗に掲載してほしい、という横尾さんのリクエストというか指示がありましたので、全8頁分をあらたに追加しました。これはオリジナルにないページですね。

──粟津さんが知ったらどう思われるでしょうかね……ほかに今回の『復刻版 横尾忠則全集』の見どころなどはありますか?

横尾さんが厖大に刊行している作品集は、すべてご自身でデザインしていると思われがちなのですが、そうではないんです。すべてのページをご自身でレイアウトされている作品集はこれ 1 冊なのです。横尾さんは今も精力的に活動されているので、これから全ページをデザインする書籍が出る可能性もありますが、現時点では、最初で最後の作品集となります。そういう意味では、かなり貴重だと思います。また、60 年代後半から活動されていた横尾さんが 1971 年時点で「全集」を出すのは相当大胆なことだと思うのですが、それが現在から見ても本当に「全集」になっている、つまり横尾忠則の代表作がすべて収録されているのが驚きなのです。

本書には横尾忠則自身の写真もアイドルなみに大量に掲載

樽本周馬(たるもと しゅうま)
1974 年、奈良県生まれ。2000 年より国書刊行会編集部。編集担当書籍に『ポール・サイモン全詞集 1964-2016 』『ポール・サイモン全詞集を読む』『映画監督 神代辰巳』『笠原和夫傑作選』『復刻版 絵草紙 うろつき夜太』『伊藤典夫評論集成』『手塚治虫大人漫画大全』など。

配信元: Dig-it

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