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映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』を観る前に押さえるべき人物・相続・時代背景|6シーズン全52話を総復習

映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』を観る前に押さえるべき人物・相続・時代背景|6シーズン全52話を総復習

「ダウントン・アビー」は、英国貴族のクローリー家と使用人が暮らす屋敷を舞台に、相続問題と時代の変化を重ね合わせた群像劇。第一次世界大戦、社会の価値観の揺れ、家の経営をめぐる現実が、登場人物の恋や家族関係を容赦なく動かしていく。本作の面白さは、出来事の多さではなく“相続”と“屋敷の運営”が生む人間ドラマにある。『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』を楽しむために、舞台となる1912年からの時代背景と主要人物の動きに絞り、全体像を振り返る。

15年も続いた“ダウントン”がついにフィナーレを迎える。『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』は、2011年にTVシリーズとして始まり、日本ではNHKやスター・チャンネルでも放映されたTVシリーズ『ダウントン・アビー』の完結編。4年間制作されたTVシリーズは6シーズン52話、2019年にその続編となる映画版が始まり、2022年に第2弾の『〜新たなる時代へ』、そして3作目にしてシリーズの完結編となる本作がついに公開となる。

同じキャラクター、キャストで、一連の出来事を綴ったシリーズは、『男はつらいよ』シリーズやマーベル・シネマティック・ユニバース、『スター・ウォーズ』、『死霊館』ユニバースの作品群を除いて、10年以上続く作品はほぼ皆無 (映画『ハリー・ポッター』シリーズが10年)。しかもフィクションの物語とはいえ、現実に起きた歴史的事象を交えながら、貴族と使用人という文化の違う人々の暮らしを描き、世界が戦争に明け暮れた20世紀初頭の世俗とそれに伴って大きく動き始めた価値観が手に取るように分かる物語に。これは1本の映画だったらできないことだし、TVシリーズとしてもなかなか難しいことだ。

ただ、15年もの長きにわたって愛された作品。物語の時系列でいっても20年ちょっとの時間経過を描いた、6シーズン全52話+3作品の映画版とエピソードが多すぎて、新参者にはかなりハードルが高いのが玉に瑕。「そもそもいったいなんのお話?」と思う人がいるのも無理はない。そこで、TVシリーズからの振り返りを、TVシリーズのシーズンテーマと主な歴史的事件、そして誰に注目すればいいのかをテキストベースで簡単に行いたい(推しはいるけど、断腸の思いでストーリー主軸のキャラクターにしぼります‥‥)。

まず大前提。ドラマ版の舞台は1912年〜1925年のイギリス・ヨークシャー。架空の村を統治するグランサム伯爵家が持つカントリーハウス、ダウントン・アビー (主なロケ地となったのは、オックスフォード州コッツウォルズで村の風景、ダウントン・アビーの外観・内部・庭園はハンプシャー州にあるハイクレア城。ハイクレア城は一般見学もできるため、ファンの聖地巡礼で大人気)。群像劇のため、主人公はダウントン・アビーで暮らすグランサム伯爵クローリー家の人々とその使用人たち全員。大テーマは「クローリー家と英国貴族の存続をかけた、経済的な運営と相続人の選定」だ。当時の法律によって、財産の相続は男性に限られることが、直系の家族には女性しかいないクローリー家の存続を危うくする、という縛りがある。

余談だが、日本でのテレビ放映時に、いくつかの副題がついたことがある。NHKでは『〜華麗なる英国貴族の館』、スター・チャンネルでは『〜貴族とメイドと相続人』となっていたのだが、一番本シリーズの本質をついていたのはスター・チャンネル版だったことが、このほど公開される最終作『グランドフィナーレ』を観ると明らかに分かる。

シーズン1は7話。時代設定は1912〜1914年。大きな歴史的事件はタイタニック号の沈没事故とフランツ・フェルディナント大公暗殺事件を発端に起きた第一次世界大戦開戦。主軸はメアリーとマシューの出会い。

クローリー家はもともと先代伯爵が抱えた借金がふくらみ、一家の長となったロバートがアメリカの大金持ちの娘コーラと結婚したことで財政難を切り抜けた、という背景がある。しかも、ロバートとコーラの間には娘が3人。長女のメアリーを男系の推定相続人 (このシーズンの場合、メアリーのいとこにあたる男性) と結婚させなければ、せっかく乗り切った財政難が、将来的にも起きうる。

で、なんと、そのいとこ一家はタイタニック号に乗っており、全員死亡したという報せを受けるところから物語はスタート。クローリー家は次なる推定相続人を探し、より遠縁の男性を探し当てる。ところがその男性、マシューは中流階級出身で貴族ではない弁護士。貴族の家に庶民を入れるのか、庶民が貴族の暮らしに慣れるのか!? というジレンマが生まれると同時に、そもそもメアリーが彼のことを愛することができるのか? といった問題が発生する。そんなときに、コーラが妊娠し、生まれる子が男性ならば‥‥と淡い期待をかけるものの、転んで流産 (ちなみに胎児は男の子だったことが後から分かる)。あたふたしまくる一家、そして気高すぎるプライドゆえに結婚には消極的なメアリーの態度から、マシューはプロポーズを取り消し。そんななか、第一次世界大戦が勃発する。

シーズン2は8話。時代設定は1916〜1918年。大きな歴史的事件は第一次世界大戦とスペイン風邪の大流行。主軸はメアリーとマシューの復縁、末娘シビルと運転手の恋。

ダウントン・アビーは戦争で揺れる国の一助となるべく、傷病兵の療養病院として開放し、クローリー家とその使用人はかいがいしく戦争で傷を負った人々のケアにあたっている (ちなみにロケ地のハイクレア城も、この当時は療養病院として開放していた)。使用人のなかにも徴兵された者がおり、第二下僕ウィリアムは瀕死の状態でダウントンに戻り、料理長パットモアの助手デイジーと結婚、そして亡くなる。一方、ダウントンを去って陸軍将校として従軍したマシュー、そして傷心のメアリーは別の人と婚約したが、お互いに新しい恋には消極的で、おまけにマシューは戦争で負った怪我で下半身不随に。やがて戦争は終わるが、その直後にスペイン風邪パンデミックが発生し、コーラと執事カーソン、マシューの婚約者が感染、マシューの婚約者が亡くなる。そんななか、貴族の生活に疑問を抱いていたシビルが、新しく雇われた運転手でアイルランド出身の社会主義者トムと恋に落ち、結婚を宣言。怪我から回復したマシューはメアリーと復縁を決め、彼らは婚約する。

シーズン3は8話。時代設定は1920〜1921年。大きな歴史的事件は戦後復興の好景気。主軸はクローリー家の経済的安定化と、マシューの死。

メアリーとマシューは結婚し、シビルとトムも新婚生活をアイルランドで送っている。そんな幸せの中届いたのは、ロバートが投資に失敗して家族の財産の大部分を失ったニュース。それを、マシューの前婚約者の父が亡くなったことで得た遺産を運用することで乗り切る。そこで問題となったのは、クローリー家の経済。キーマンとなったマシューと、庶民の感覚を持つトムが不動産運営を近代化し、戦後復興の好景気に乗って収益を出すように働き始める。そんななか、シビルが女児を出産後他界し、傷心のトムを家族として迎え入れるべく、ロバートの母である伯爵夫人ヴァイオレットの提案で土地代理人に任命。マシューとメアリーの間に男児が生まれ、これで相続人問題は解決、と思っていた矢先に、マシューが交通事故死する。

シーズン4は8話。時代設定は1922〜1923年。大きな歴史的事件はナチスドイツの出現。主軸はメアリーをはじめとする人々の隠れた才能発揮と、女性貴族のコルセットからの解放。

マシューが亡くなって半年、失意のメアリーは彼の遺言状の発見によって思わぬ才能を発揮。遺言には息子が成人するまでの間、マシューが所有した領地の管理をメアリーに任せる、というもの。そこで、メアリーはすでに一家の経営部長的立場となったトムとともに領地運営で手腕を発揮し始める。一方、メアリーと犬猿の仲の妹イーディスは新聞社で編集と文筆の手腕を発揮しており、編集者で既婚のグレッグソンとの間に子を身ごもってしまう。しかも、グレッグソンは離婚するためにドイツの市民権を求めに行くものの、国民社会主義ドイツ労働者党 (後のナチス) によって消されてしまい、残されたイーディスは海外で極秘出産。その子を養子に出す。またこのシーズンでは初めて、使用人の解雇も (トムに言い寄ったコーラの侍女)。

シーズン5は8話。時代設定は1924年。大きな歴史的事件はミュンヘン一揆。主軸は悩み多きイーディスと使用人の面々が次々に問題を解消&使用人たちも相続問題でドタバタ。

イーディスは、ドイツで起きたミュンヘン一揆でグレッグソンの死を知り、彼の出版社を相続して社長に。里子にしていた娘マリゴールドを養女として迎え入れ、ロンドンに移住する (が、じきにマリゴールドが実子ということが一家にバレる)。料理長のパットモアが引退後に宿屋の経営を考え始めたことや、彼女の助手デイジーが亡き夫の父からの不動産相続を持ちかけられたことなど、使用人たちも相続・財産問題で揺れ動く。その一方で、不遇な事件に巻き込まれて逮捕されたメアリーの侍女アンナのために、メアリーをはじめ使用人たちも総力を上げて無実の証明にかかる。この騒動によって執事のカーソンと家政婦長ヒューズの恋が実り婚約。一家の経営部長となっていたトムは娘とともにいとこのいるアメリカ・ボストンに移住して、事業を始めることを決意する。

シーズン6は8話。時代設定は1925年。大きな歴史的事件は制度改革と中産階級の台頭。主軸はクローリー家の存続と、ダウントン・アビーの「家」としての再認識。

制度改革と社会情勢の変化によって、数々の地方貴族が破産。ダウントンも経費削減に待ったなしで、使用人の削減を決定。副執事のトーマス、下僕のモールズリーがダウントンを去ろうとする。トムがボストンに越してしまったことでメアリーがダウントンの不動産運営筆頭になり、レーシングドライバーのヘンリーと恋をする。一方のイーディスはロンドンで編集者・社長としての手腕を発揮して、女性の編集者を育成する一方で、ブランカスター城を相続したバーティとの恋に悩み始める。そんななか、トムが戻りメアリーとともにダウントンの運営を二人三脚で再開したときに、ロバートが病気で倒れる。庶民で交通事故の危険があるヘンリーとの結婚に悩んでいたメアリーは、ストレスもあって成功しているイーディスの秘密 (マリゴールドが不倫の末の実子であること) を暴露し姉妹仲は作中最悪に。バラバラになりかけたクローリー家と使用人たちは、それぞれに起きた幸不幸の出来事をきっかけにダウントン・アビーが「帰るべき家」という再認識をする。

駆け足で紹介したTVシリーズ全6シーズン。歴史的事象を盛り込んだマクロ的な舞台設定がありつつも、描かれるのは非常にミクロな当時の人々の生活の営みというのが、共感を高める。しかも、価値観の変容描写は見事だ。さすがに当時の人々がこれほど進歩したとは考えにくいが、この描写によって21世紀にこの作品が作られた意味が生まれるし、この変容があったからこそ今がある、と思わせるだけの脚本の力がある。もちろんここに記したことだけではない事件や人物がてんこ盛りだが、とりあえずこれを頭に入れておけば、劇場版を楽しめるはず。映画版の1作目には、冒頭でダウントン・アビーで暮らす人々のキャラクター解説がそれとなく入っているので、個人的にはこれで興味を持っていただき、映画3作を楽しんだ後でドラマに戻ってコンプリートするのが一番手っ取り早いのではないか、と思っているが、どこから手を出しても大丈夫。ダウントン・アビーは視聴者にとっても「帰る家」のようにいつでも門戸を開いているから。

文 / よしひろまさみち

作品情報 映画『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』

1930年。クローリー家とダウントン・アビーの使用人たちは、きらびやかな夏の社交シーズンをロンドンで迎えていた。しかし、長女メアリー離婚のニュースが社交界を揺るがし、一家の名声を脅かす。社交界から締め出されたメアリーの前に現れたのは、ニューヨーク出身の財務アドバイザー:サムブルック。母コーラの弟ハロルドに連れられてダウントンを訪れ、離婚直後のメアリーに甘い言葉を囁く。そして、彼はハロルドがコーラの遺産を投資につぎ込み大失敗したことを告げ、財政難に苦しむダウントンを救うために、ロンドンにある社交用の別荘を売却することを提案する。

監督:サイモン・カーティス

出演:ヒュー・ボネヴィル、ローラ・カーマイケル、ジム・カーター、ラケル・キャシディ、ポール・コプリー、ブレンダン・コイル、ミシェル・ドッカリー、ケヴィン・ドイル、マイケル・フォックス、ジョアンヌ・フロガット、ポール・ジアマッティ、ハリー・ハッデン=パトン、ロブ・ジェームズ=コリアー、アレン・リーチ、フィリス・ローガン、エリザベス・マクガヴァン、ソフィー・マクシェラ、レスリー・ニコル、ダグラス・リース、ペネロープ・ウィルトン

配給:ギャガ

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公式サイト downton_abbey_the_grand_finale

配信元: otocoto

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