近年では地球温暖化の影響もあり、冬季オリンピックの開催地ですら降雪量が減少している。元々降水量が少なかった前回大会の開催地である中国・北京では、全会場の9割で「人工雪」が使用されたことが話題となったが、間もなく開幕するミラノ・コルティナ大会でも、やはり「空から降らない」雪に依存することになるという。
気候変動によるこうした人為的な操作は、自然に対して負の影響を与えることも指摘されており、開催都市選定や大会運営の柱として強調されてきた「持続可能性」に反するものであるという指摘もなされているが、カナダの公共放送「CBC」も、「ミラノ・コルティナ冬季五輪を目前に控え、気候変動の現実と大会の理想が鋭く衝突している」と報じている。
同メディアは、冬季五輪(パラリンピックを含む)は長年にわたり、雪や寒さ、山岳地帯という「安定した冬の条件」を前提に成立してきたイベントだったが、気温上昇と降雪の不安定化が進む中で、その前提自体が揺らいでいると指摘。そして、「環境の専門家からは『大会主催者は、五輪がどこまで“持続可能”であり得るかを過大に売り込んでいる』との批判もなされている」と綴った。
IOC(国際オリンピック委員会)も問題を認識しており、2024年の委託調査では、過去の冬季五輪開催都市のうち、2050年代になっても十分な寒さを保てるのは約半数に止まるという展望が示され、さらに2025年11月に公表された雪の「信頼性」を測る指標では、多くのスキーリゾートが「脆弱」と評価され、今大会の主要会場のひとつであるコルティナ・ダンペッツォもその中間に位置付けられているという。
IOCは2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減する目標を掲げており、開催都市には既存施設や仮設会場の活用を義務付けている。競技会場(雪上)についても、「過度な技術介入なしに大会を開催できる“気候的信頼性”を今世紀半ばまで維持する」ことを条件としているが、同メディアは「現実には、イタリア・アルプスの気温は長期平均を上回っており、自然雪は“当たり外れ”のある存在となり、人工降雪機や冷却機は、もはや予備ではなく必需品である」と指摘する。 二酸化炭素(CO2)の排出量についても、大会組織委員会は、2006年トリノ五輪や2015年ミラノ万博を引き合いに、持続可能性を意識した運営の実績を強調し、目標達成に自信を示しているようだが、ここでも同メディアは「排出量の算定は、主催者が直接管理できる範囲に限られており、最大の排出源になりがちな観客の移動は含まれていない」と問題視している。
巨額の予算を伴う五輪での、こうした運営側の「意識啓発」には同メディアは懐疑的な姿勢を示し、専門家のマデリン・オア氏の「2010年バンクーバー五輪でも同じことを言っていたが、今は2026年だ」「パリ五輪では持続可能で完璧だという物語に固執しすぎ、『カーボン・ポジティブ(CO2の吸収)』を誇張した後に修正を余儀なくされた」との批判を紹介している。
さらに、施設の「再利用」に対しては、主催者が会場の92%が既存施設だと説明するも、実際には大規模改修が伴い、その環境負荷は十分に反映されていないことに同メディアは注目。なかでも「コルティナ・スライディングセンター」は“再利用”を掲げながら、実質的な再建であり、森林伐採や日本円に換算すると100億円超の費用増が問題視されているという。
そして同メディアは、「こうした状況を受け、冬季五輪を限られた気候安定地域で持ち回り開催する「ローテーション案」も浮上している。「巨大な国際的スペクタクルは、本質的に持続可能と相容れない。雪や冬を“称える”ためのイベントは、今やその条件を人工的に再現しなければ成り立たなくなっているのが現実だ。冬季五輪のモデルそのものが今、岐路に立たされている」と指摘して記事を締めている。
構成●THE DIGEST編集部
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