ゲストハウスで働きつつネット販売から始めた。
生活もガラリと変わった。
実家に戻り、休養がてら鎌倉のゲストハウスで働くように。インバウンド客が多いため、英語も活かせた。夜は自宅に溜まったバブアーをネット販売しはじめた。
「時間の余裕ができたし体調もよくなってきました。さらに今より円高だったのでイギリスでヴィンテージを少し仕入れ。いずれにしてもやはり英語は活きましたね」
最初はオークションサイトで。その後、ECサイトを自作し、売り始めた。サイト名は『ブリティッシュ・ワックスジャケット・マーケット』とした。今のそれだ。
いきなり大売れしたわけじゃない。それでも、たまに古着フェアやポップアップイベントに出店。すると、ある日、ポップアップストアに古着やヴィンテージを中心に扱う有名ユーチューバーがほろ酔いでふらっと訪れた。あの匂いに誘われたのかもしれない。『バブアーだけか』『高いね』『でもおもしろい』『今度取材をぜひ』。
配信されると流れが変わった。
ECサイトにアクセスが殺到。2週間のイベント出店だけで数十着が売れるようになった。利益を手に持ち、そのまま渡英。バブアーばかりあさっては、自宅でリペアして売る生活を続けた。副業のような始まり。が、気づけばオーナーとして一本立ちしていた。
コロナもあったが、むしろ勝機と大磯にショールームをつくった。着実にファンを増やしながら、2021年にコロナが明け始めると、さらにアクセルを踏む。大磯に工房をつくり、幡ヶ谷に店舗をつくった時期も。リペアと販売で正社員を3人も雇った。ややアクセルを踏みすぎた感もあった。
「夏は動きませんからね。キャッシュフローがギリギリの自転車操業。社員に苦労をかけた時期もあり、最終的に2022年に逗子の今の場所に集約を。当時の社員は辞めて、再出発したんですよ」
ただ身の丈サイズとなった今は順調だ。何度目かのバブアーブームも後押し。耐えて立ち続けていた者の勝ちだった。もはや日本で最もヴィンテージバブアーが揃う場として、誰もが逗子を目指す。
「ふんばって続けてきて良かったと、いつも感じています。お客さんに来てもらえるし、まだ出会えてない型もあるし、リペアの技も磨ききれてない。やるべきこともやりたいこともまだまだある」
ゴールの見えない旅はしばらく続く。ワックスの香りと供に。

店舗兼工房は海水浴場やマリーナで知られる海沿いの街、逗子にある。3階建ての一軒家だ。

2階は店舗スペース。右ページのようなスタンダードなジャケットを置いたスペースと、上のようにモーターサイクル系を多く置くスペースで雰囲気を変えている。当然、どちらも要チェックだ。

1階の工房スペース。クリーニング、アイロン掛け、リワックスなどの工程をココでおこなう。