
閉塞感漂う地方都市を舞台に、シニカルで痛快な青春を描き出す映画「万事快調 <オール・グリーンズ>」。何者にもなれない焦燥感を抱えながらも、独自の感性で世界と対峙する少女、朴秀美(ぼく・ひでみ)と矢口美流紅(やぐち・みるく)を、南沙良と出口夏希がW主演で体現した。クールな佇まいの奥に情熱を秘めた二人が、撮影の裏側や、役柄とは少し違う等身大の素顔を語り合った。
■「切れのいい悪口がたくさんあって面白い」シニカルな原作への惹かれ方
——本作は、いわゆる“キラキラした青春映画”とは一線を画す作品です。初めて原作や脚本に触れた時、物語のどういった部分に魅力を感じましたか?
南沙良(以下、南):最初に原作を読んだのですが、思想観があるのはもちろん、本当にサブカルチャー愛に溢れた作品だなと。切れのいい皮肉というか、悪口みたいなものがたくさんあって、すごく面白かったです。そういった原作の持つテンポ感の良さみたいなものが、映像やお芝居でも出せたらいいなと思いながら、脚本を読ませていただきました。
出口夏希(以下、出口):出演が決まってから台本を読んだのですが、これまで私がやったことのないような作品ですごく興味が湧いて、「やりたいな」と改めて思いました。
——お2人が演じた役柄は、それぞれ心にダークな部分を抱えているキャラクターでした。ご自身と重なる部分や、共感できる点はありましたか?
南:私が演じた朴秀美は、行き場のない怒りとか、やるせなさみたいなものをすごく抱えている女の子ですが、私自身はあそこまで卑屈ではないです(笑)。でも、「どこにも行けない」と感じるような気持ちは、私も日々生活する中で感じることがあるので、そこは共感できる部分かなと思ってお芝居をしていました。
出口:自分と似ているところって、撮影中はあまり考えていなかったのですが、今聞かれてみると、似ている部分はあるかもしれません。表では明るいけれど、本来はそこまで明るくないとか…。もちろんあんなに重いものは抱えてはいませんが、悩みがあったりもするので…。でも人間ってきっとみんなそうなんじゃないかなって思います。
■「3人ともマイペース」自由な空気感が作ったリアルな関係性
——劇中では、秀美、美流紅、そして真子(演:吉田美月喜)の3人の絶妙な距離感が印象的でした。現場での雰囲気はいかがでしたか?
出口:本当に劇中と似たような感じで3人ともすごくマイペースでした(笑)。自分の好きなことをして、話したい時に話して、寝たい時に寝て、食べたい時に食べて。まったり過ごしていましたね。
南:そうですね。みんながマイペースすぎて、私も気を使わなくてよかったというか。居心地がよかったです。
出口:1人でいても、みんなといても、変わらない空気感でした。
——監督の演出も、かなり自由だったと伺いました。アドリブも多かったのでしょうか。
南:基本的には自由でしたね。監督も、私たちのやりたいようにやらせてくださいました。
出口:台本に書いてないことも多かったです。特に3人のシーンは、カットがかかるまでが長くて、アドリブが多かった印象です。テイクごとに本当にアドリブで(笑)。すごく楽しかったです。
——その中で、特に印象に残っているシーンはありますか?
南:物語の途中で、映画タイトルが入るところ。かなり疾走感があって格好いいなと思っていてお気に入りです。
出口:風を切って走っているよね。
南:夜中の2時ぐらい。結構何回も撮り直しをしたよね。
出口:本当に走ったね。とにかく走った(笑)。印象に残っています。
——好きなキャラクターはいましたか?
南・出口:(声を揃えて)大政凛さんと櫻井健人さん!
出口:あのお2人のシーンは、一番テイクを重ねました。彼らのせいじゃなくて、私たち2人のせいで(笑)。
南:笑いすぎちゃって。
出口:教室で、2人が手を繋いでいるのを私たちが見つけるシーンがあるのですが、もう私がツボすぎて。美流紅は笑っていい役だけど、秀美は笑えないからきつかったよね。
南:きつかった、本当に(笑)。でも、すごく面白くて。
出口:表情がずるいんですよね(笑)。あのシーンは釜山国際映画祭で上映した時も、お客さんの反響が一番大きくて、みんな大爆笑していました。私たちも撮影にならないくらい笑っちゃった、大好きなシーンです。
■「できるだけエネルギーを使いたくない」演じたキャラクターとは正反対?な2人の“省エネ”な素顔
——劇中ではかなりエネルギーをほとばしらせていましたが、お2人はどんな時にエネルギーを使いますか?プライベートで発散することはありますか?
出口:私たち、省エネなんです。
南:省エネだね。
出口:できるだけエネルギーを使いたくない、とまで思うくらい(笑)。
南:普段は使いたくないですね、なるべく。お仕事で使う分、プライベートはもう、省エネにも程があるくらい省エネかもしれないです。
——そのエネルギーは、お芝居のために溜めている?
出口:そうかもしれないですね! 太陽を浴びて光合成して、出す時にパーン!みたいな(笑)。
南:パーン(笑)。
——劇中ではまさに“青春”が描かれますが、お2人が「こんな青春を送りたかった」と憧れるものはありますか?
南:かなりあります! 私は学生の頃からお仕事をやらせていただいていたので、学生らしい学生時代を過ごしていなくて。制服のままどこかに出かけたり、何か食べながら帰ったり、友達と通学したり…そういうのにすっごく憧れていました。
出口:私、それ全部やっていた(笑)。
南:やばい! いいなあ。
出口:本当にTHE・青春でした。一生懸命体育祭で一位を獲りに行ったり、学校帰りにタピオカを飲んでプリクラ撮って原宿に行ったり。
南:超JKだ。
出口:“ドJK”していました(笑)。JKを存分に楽しんでました!
——出口さんのお芝居は、そうした経験に裏打ちされた瞬発力が魅力だと感じます。アドリブなども得意なのでは?
出口:美流紅の役は、演じていて自分でもポンポン言葉が出てきました。出ない時は全然出ないんですけど…美流紅というキャラクターが多分すごく好きだったんだと思います。でも、自分で自分のことは分からなくて、いつもマネージャーさんに言われて「あ、そうなんだ」って気づくことが多いです。
——南さんは、そんな出口さんの瞬発力のあるお芝居を隣で受けてみていかがでしたか?
南:すごく楽しかったです。私も割と感覚でお芝居をする部分もあるので。でも、美月喜ちゃんは多分すごく考えるタイプだから、3人のバランスがすごく良かったんだと思います。ありがたかったですね。
——コメディー作品ではないのですが、すごくテンポと間が良くて、漫才コンビのようなおかしみがありました。
南:監督がとてもエネルギッシュな方で、「この作品を本当に面白くしたい」という監督の思いを常に強く感じていたので、チーム全員がその意識を共有できていて、いつも楽しい空気が流れていたように思います。コミカルなお芝居も好きなので、やりがいがありましたね。
出口:監督が自由にお芝居をさせてくださるので、2人で間を含めた空気感を作れたのは楽しかったです。コメディーもやってみたいです!
■私たちを“作り上げた”もの
——登場人物たちは、もがきながらも何かになろうと前に進みます。もし俳優という道を選んでいなかったら、どんな自分になっていたと思いますか?
南:考えたことがないですね。小さい頃から女優になりたいと思っていましたし、やりたいことも他になかった。だから、このお仕事があってよかったなと思います。なかったら…大変なことになっていそう(笑)。
出口:私も、やりたいことがなくて。昔から将来の夢をもってなくて、その時その時のことで精一杯なんです。今もお仕事始めてから今後の目標を聞かれますけど、本当にその時にやっていることで私の中では、いつもいっぱいいっぱい。先のことは考えられないです。
——では最後に、そんなお2人にとって「今の自分を作り上げている」と言えるものは何でしょうか。
南:私は、うれしかったことや幸せだった瞬間よりも、今まで諦めてきたことや失ってきたもの、そういうもので自分ができあがっているな、という意識がすごくありますね。
出口:えっと…食べ物です!(笑)。本当に食べ物がないと生きていけないので(笑)。辛いものとか、ラーメンとか。何かを我慢すると本当にストレスを感じてしまうので…。好きなことをして、自由に生きているから、今楽しめているんだろうなって思います!
取材・文=磯部正和/撮影=MANAMI/スタイリスト=梅田一秀(南)、道端亜未(出口)/ヘア&メーク=竹島健二(南)、井手真紗子(出口)

