他チームに先駆けて、2026年用F1マシンのカラーリングを発表したレッドブル。その発表は、エナジードリンクブランドらしい、アドレナリンが強烈に吹き出すようなアクロバット飛行によって行なわれた。
パイロットを担当したのは、チェコ出身で2018年のレッドブル・エアレース世界王者に輝いたマルティン・ションカ。彼は低空飛行でベールのかかったF1マシンに近付き、“コブラ”と呼ばれる急上昇を見せながらベールを取り去ったのだ。
しかしションカにとって、このスタンドはミスが許されない厳しいものだったという。その許容範囲の狭さは、まさにモナコGP並み。機体の尾翼を低く保った状態で飛行し、滑走路やマシンに接触しないギリギリのところでカバーを外さないといけなかったからだ。
準備は数ヵ月から始まっており、実際のスタント撮影は昨年11月、チェコの空港で行なわれた。つまり今回の発表よりかなり前に収録されていたことになる。
その危険な演出は段階的に作り上げられた。まずはコブラ動作の練習から始まり、次にマシンなしで小さな布を用意、その後にシートを大きくしていき、最終段階でようやく車両がそこに加えられた。
またパイロットの視覚を補完するため、レーザー照射によって対象物の距離などを計測する“LiDAR”をベースとしたシステムも導入され、地面とのクリアランスを音声と視覚の両方で知らせた。
しかし、最も懸念されたのは最低高度ではなかった。真の危険は、マシンを覆っていたシートが引き剥がされる際の挙動だ。もしウイングやミラーに引っかかれば、大事故につながりかねない。そのため、停止状態から1秒未満で約150〜200km/hにまで加速する力に耐えつつ、確実にシートを剥がせる機構が必要だった。
そして迎えた撮影当日。最低気温はマイナス3度まで下がり、暖房のない機内は極寒だった。さらにキャノピーの形状の影響で、ションカはコブラを開始する約200メートル手前でマシンを視界から見失ってしまったという。
「この速度であれだけ低空を飛ぶのは、目隠しをしたまま針の穴に糸を通すような感覚だ」とションカは語る。
「時速200kmで、地面からわずか1.5メートル。プロペラのクリアランスはほとんど余裕がなかった」
こうして完成した映像は、“モーターシティ”と呼ばれるアメリカ・デトロイトに集まった観衆に披露され、光沢仕上げのブルーがあしらわれた近年と異なるカラーリングが注目を集めた。
今季F1に訪れる大規模なレギュレーション刷新を強く意識した、華々しい演出を行なったレッドブル。フォードと共同開発する新しいワークスパワーユニットが搭載される記念すべきシーズンに向け、チームの歴史をオマージュしたカラーリングとしている。
チーム代表のローレン・メキースは次のように述べた。
「2026年は、F1、そしてレッドブルにとっても、新しく非常に重要な時代の幕開けだ」
「我々はその変化を反映しつつ、レッドブル・レーシングの原点にも敬意を払うリバリーにしたかった」

