このミッドウィークに、12月のスーペルコッパのために未消化だった第17節の残り4試合が行なわれ、セリエA全チームが消化20試合で揃った。第20節でトップ3(インテル、ミラン、ナポリ)が揃って引分けた一方、ユベントス、ローマが勝点3を上積みしたことで順位表が圧縮され、首位インテル(勝点46)、2位ミラン(同43)を追う3位グループにナポリ(同40)、ユベントス(同39)、ローマ(同39)が1ポイント差で固まる構図となっている。以下、前回取り上げなかったそのユベントスとローマの前半戦を振り返っておきたい(順位、勝点などの数字は第20節終了時点)。
●4位:ユベントス 39ポイント(前年比+5ポイント〕/11勝6分け3敗(32得点16失点)
OptaAIの最終勝点予想:70.92(4位)
直近6試合で5勝1分けと、上位陣の中でインテルと並んで最も好調を維持しているのがユベントス。順位も1か月前(第14節終了時点)の7位から、3位ナポリに1ポイント差の4位まで浮上してきた。
昨シーズン終盤に途中就任したイーゴル・トゥドル監督の下で開幕に臨んだものの、開幕3連勝の後3分け2敗と停滞し、ルチャーノ・スパレッティへの監督交代を断行したのが10月末のこと。それからの2か月半、少しずつ着実にチームのアイデンティティーを築き、安定した結果を積み上げてきた。
スパレッティ就任以降の直近11試合に限ると、ユベントスが挙げた勝点24は、インテルとミランの25とほぼ肩を並べる数字。ナポリが19、ローマが18に留まっていることを考えても、監督交代という決断は功を奏したと結論づけることができるだろう。ここに来て、今シーズン末までだった契約の延長話が出てきているのは象徴的だ。
注目したいのは、データが示しているパフォーマンスは、ピッチ上の結果をさらに上回っているという事実。ゴール期待値(xG)、失点期待値(xGA)、得失点差期待値(xGD)、勝点期待値(xPTS)のすべてが、インテルに次いでリーグ2位。順位表の4位という現在地は、ピッチ上のパフォーマンスと比べると下振れしていることになる。
これは、結果レベルではまだ伸びしろが残っていることを意味する。特に攻撃のデータに目を向けると、ペナルティーエリアへのパス本数、決定機創出数、シュート数、アシスト数など主要項目のほとんどでインテルに次ぐリーグ2位、さらに、アタッキングサードでのボール奪取からの攻撃回数(155)2位、シュート回数(37)1位と、プレッシングからの逆襲も機能している。
現状では、これだけ攻撃のボリュームを出しながら、それが効率的にゴールにつながっていない点が限界であり、それは上位陣ではローマと並んで唯一、得点数(32)がxG(34.24)を下回っている事実に表われている。
とはいえそれも、スパレッティ体制下で攻撃の中核に収まったかに見えたドゥシャン・ヴラホビッチが筋肉系の故障で長期離脱を強いられ、それまで十分な出場機会を得ていなかったロイス・オペンダ、ジョナサン・デイビッドというFW2人を交互に起用しながら、戦術に微調整を加えてきたことを考慮に入れれば、決してネガティブではない。
左右のWBにウェストン・マッケニー、アンドレア・カンビアーゾという、左右両足が使えて外だけでなく内に入ってもプレーできるタイプを起用し、さらに試合によって右シャドーにもドリブラータイプのフランシスコ・コンセイソン、中盤と前線をつなぐコネクターとして機能するファビオ・ミレッティ、トゥーン・コープマイネルスを使い分けるなど、攻撃の流動性と意外性を高めようとする試みが少しずつ着実に実を結んできている。
ただし、直近の好成績は対戦相手に恵まれた側面があったことも否めない。次々節(1月25日)のナポリ戦、そして2月後半に固まったインテル、コモ、ローマとの3連戦が、シーズンの行方を占う大きな山場になるだろう。
●5位:ローマ 39ポイント(前年比+15ポイント)/13勝0分け7敗(24得点12失点)
OptaAIの最終勝点予想:69.81(5位)
序盤戦から好調で、11月半ばの第12節終了時点では単独首位に立っていたローマだが、そこからの8試合は4勝4敗で順位を5位まで落としている。敗れた相手はナポリ、カリアリ、ユベントス、アタランタ。インテル、ミランも含めて上位5チームに全敗している事実に、現時点における限界が表われていると言えるかもしれない。
ここまでの戦いを支えてきたのは、セリエAはもちろん5大リーグ全体でも最少の12失点という堅守。今シーズンから指揮を執るジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督が、思い切りのいい攻撃的なスタイルで知られてきたことを考えれば、意外にも思える事実である。
そのガスペリーニの守備戦術は、ピッチ全域でマンツーマンの原則を採用し、アグレッシブなハイプレスで敵陣での奪回を狙って行く能動的かつ積極的な姿勢が大きな特徴。データを見ても、プレス強度を表すPPDA(守備アクション1回あたりに許した平均パス本数)がコモに次いでリーグ2位(9.5)、プレス開始位置の高さ(43.9m)も2位、アタッキングサードでのボール奪取からの攻撃回数(148)は3位と、「前に出る守備」の特徴が数字にはっきりと表われている。
ただ、12失点という数字が、ローマの守備の堅さをそのまま反映しているかということになると、そこにははっきりとした疑問符がつく。データを見ると、失点期待値(xGA)は失点のほぼ2倍にあたる23.48(リーグ7位)。被シュート数(207)、被枠内シュート数(73)はいずれもリーグで少ない方から5番目と、それほど傑出した数字とは言えない。
期待値よりも失点が大幅に少ない最大の理由は、GKミル・スビラールの傑出したパフォーマンス。枠内シュートに限った失点期待値(PSxG)19.0に対して失点12は、彼1人で7失点を阻止している勘定になる。これは5大リーグ全体でもエルベ・コフィ(アンジュ/リーグ・アン)、アーロン・エスカンデル(オビエド/ラ・リーガ)に続いて3位にあたる数字だ。
危うさを内包しながらも失点を抑えてきている守備に対して、攻撃は明らかな課題を抱えている。24得点はリーグ8位、しかもxG(25.5)を下回っている。シュート本数(272)が同6位、枠内シュート本数(94)が同4位であることを加味しても、攻撃のボリュームに対する決定力不足は明らかだ。
ガスペリーニ監督は、夏の移籍マーケットを通して、センターフォワードと左ウイングの補強を望んできたが、結果的にそれが満たされず、さらに前半戦を通してアルテム・ドフビク、エバン・ファーガソンというCF2人のプレースタイルが自身の戦術的要求に合致していないと嘆いてきた。
それに対してクラブは今冬の移籍マーケットで、2人とはタイプが異なるムービングストライカータイプのドニエル・マレン(アストン・ビラ/オランダ代表)、爆発的なスピードを武器とする18歳のロビニオ・ヴァズ(マルセイユ/フランスU-20代表)を獲得し、要請に応えている。この2人の新戦力が指揮官の戦術にどう組み込まれ機能するかは、パフォーマンスとして不安定さが残る守備の改善と合わせて、後半戦におけるローマの大きな課題であり、見どころだと言えるだろう。
文●片野道郎
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