
「気まぐれを許されるほど良いプレーをしていない」マドリーを揺るがす“ヴィニシウス問題” ファンも我慢の限界で爆発、OBのクロースも警鐘「チーム全体の不利益になっている」【現地発】
それは今シーズン、サンティアゴ・ベルナベウで行われたレアル・マドリー対バレンシアの一戦でのことだった。ヴィニシウスがドリブルかパス、何らかのプレーに失敗した瞬間だ。私の隣に座り、礼儀正しく議論を交わしていたファンが、突如として怒りに顔を歪め、理性を失って私に向かって叫んだ。「ミニシウス(Minicius)!」と。その恐ろしい言葉の響きに、私は言葉を失った。
なぜそんな言葉が飛び出したのか、私には分からない。怒りは時に、人を地獄のような場所へと連れ去る。言葉遊びとは剃刀のようなものだ。正しく使えば完璧な道具となるが、誤れば自らの頸動脈を切り裂いてしまう。そのファンが言い放った『ミニ(小さい)+(ヴィニ)シウス!』という鮮やかな揶揄は、奇妙な結果をもたらした。ヴィニシウスの心を切り裂くと同時に、傍らにいた私をも、そのあまりの切れ味に震え上がらせたのだ。
私はその感覚を心に留めた。メディアの扇動的な言説に影響され、ヴィニシウスに反感を抱く層がすでに存在していることは知っていた。その理由は、アンチ・マドリーの立場からくるものや、直接的な人種差別まで様々だ。しかし、その反発は次第に膨らみ、ついに2025年最後の試合となったセビージャ戦(2-0)で爆発した。ファンの大多数はほとんどのケースで寛容だが、すべてを、永遠に許し続けるわけではないのだ。
かつてバロテッリが「狂気」を許されるほど優秀ではなかったように、2週間に一度、ホームの観衆の前に立つたびに火種を撒き散らすヴィニシウスの振る舞いも、看過できないレベルに達している。彼の最高の資質が、この一年半もの間、精神的な足枷に縛られたままであるなら、なおさらだ。今のヴィニシウスは、その気まぐれを許されるほど良いプレーをしているわけではない。
フットボールは残酷だ。そして幸いなことに、不公平である。ピッチの外には偽りの正義が溢れているが、現実はシンプルだ。自らのプレーが決定的なものである限り、ピッチの中心で監督という最高権威に反抗することも、SNSのプロフィール写真をマドリーのものからブラジル代表のものに変えてファンを挑発することも許されるだろう。
しかし、本来の能力の60%程度でプレーしている今のヴィニシウスが、ファンに対して、自身の無礼な態度や抗議、あるいは「プールへのダイブ」に対する不条理な擁護を求めることはできない。100%の輝きを放っている時であれば、圧倒的な実力が免罪符となり、周囲もその振る舞いを甘んじて受け入れ、あるいは擁護さえしただろう。だが、トニ・クロースでさえ「ヴィニシウスの振る舞いがチーム全体の不利益になっている」と警鐘を鳴らしているのだ。
18歳から始まったヴィニシウスの進化は、彼を世界最高の選手の一人へと押し上げた。身体的な成長は目覚ましい。だが、精神面はまだ「研究段階」にある。スターたちは最新のトレーニング器具を使った筋力強化や回復法をSNSに投稿するが、ソファに横たわり心理カウンセラーと向き合う姿や、自らの過ちを修正するために映像を見返している様子は決して公開されない。そして今のヴィニシウスには、まさにその『映えない努力』が欠けている。
足元の技術が最高であっても、それは何も保証しない。2021年にブレイクした後のヴィニシウスは以前よりも簡単に相手を抜き去り、得点もアシストも増やしたが、同時に、審判との議論に時間を費やし、スタンドからの罵声に過剰に反応し、派手にダイブし、激しい身振りで抗議するようになった。これは事実である。
彼は卑劣で粘着質な人種差別に誰よりも苦しんできたし、恐ろしいことに耐えてきた。カメラは常に彼を追い、その場での暴言だけを切り取る。だが、彼の反応の多くは、人種差別とは無関係な、試合中の挑発によるものだ。
マドリーは今、ヴィニシウスという問題を抱えている。周囲に悪影響を及ぼすトラブルを抱えながら、破格の条件で契約更新を求めているからだ。そしてヴィニシウス自身も、自分自身に問題を抱えている。『退団』という爆弾の安全ピンをいつでも抜ける状態で、無気力に沈黙する火薬庫と化しているからだ。2度のチャンピオンズリーグ(CL)優勝に貢献した功績は素晴らしい。しかし、今日の熾烈な競争の場において、ピッチ上で平凡な精神しか持たない技術者は、価値を失うのも早い。
残酷で、幸いなことに不公平なフットボールにおいては、足元の技術が最高であることは、何も保証しない。ましてや、マドリーでのレギュラーの座が約束されているわけではないのだ。このクラブの歴史を振り返れば、技術で劣る選手たちがその破壊的なメンタリティによって、並み居る世界的なスターをベンチへ追いやった例は枚挙にいとまがない。
マドリーにおいて、ドリブルを許されるのは「まず噛みつく(morder)ことを知っている者」だけだ。2011-12シーズンのバイエルン戦(トータルスコア 3-3『PK 3-1』でバイエルンが決勝に進出)を思い出すがいい。一人でプレッシャーをかけ続けながら、立ち尽くす他の選手たちを振り返り、激しい怒号を浴びせたクリスティアーノ・ロナウド。その瞳には、悔し涙さえ浮かんでいた。彼は時代を象徴する、別格の存在だった。
そのことを、エムバペ、君も肝に銘じておくことだ。
文●マヌエル・ハボイス(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸
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