・突然の失踪
そんなティオが突然いなくなったのは、約2年後の神戸公演から福岡公演へ向かう移動中のこと。神戸を出発するときにコンテナの中にいたはずのティオが、博多に到着して部屋を開けると……いない。いくら探しても、どこにもいない。
どうやら、ほんの少しだけ空いていた窓のスキマから外に出たらしい。移動前に雨よけのひさしを畳んで固定したため、本当にわずかなスキマ。でもティオなら気合いで飛び出したとしても不思議ではない。どこにいるんだ……ティオ。
1番考えられるのは、コンテナを運んだトラックが高速道路のサービスエリアで休憩した際に、窓をほんの少しだけ開けて脱出……ティオならあり得る。
すぐに女性団員たちがティオの写真を印刷し、宮島SA(広島)、下松SA(山口)、古賀SA(福岡)など、トラックが立ち寄ったすべてのサービスエリアを回って聞き込み調査を開始した。
ポスターは貼ってもらえなかったが「この猫を見かけませんでしたか?」と声をかけ続けた。しかし、なかなか手がかりは見つからず。
裏番長がいなくなったサーカスは明らかに静かになっていた。とくに飼い主のジェシーはかなり落ち込んでいたように思う。
・数カ月後
それから数カ月後。サーカスの事務所に1本の電話がかかってきた。「そちらのサーカスの猫を、うちで預かっています」って、え……?
ええええええええええええ!
話を聞くと、電話主は福岡県在住の女性。庭でたくさん猫を飼っている方で、少し前にティオが庭に現れたという。かなり疲れている様子だったが、餌をよく食べて今は元気だそうだ。ほかの猫とも仲良くやっているとのこと。
なぜサーカスに連絡をしたのか……理由はティオの首輪にあった。鈴の中に「木下サーカス(電話番号)」と書かれたメモ紙が入っていたらしい。
後日、予定を合わせてジェシーとティオは数カ月ぶりに再会。ティオは一瞬、ジェシーに気づいたような表情を見せたという。ジェシーはもちろん号泣。しばらくティオと一緒に過ごした後、ジェシーはティオが周りの猫と遊んでいる様子を見て決断した。
「もしご迷惑でなければ、ティオをこのままここで飼っていただけませんか」
相手も快く了承してくれたため、ティオは北海道の猫から九州の猫となった。
