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なぜケガを抱えコートに立つのか? 完勝のアルカラスが示した「レジェンドたちと同じテーブルに付く」覚悟<SMASH>

なぜケガを抱えコートに立つのか? 完勝のアルカラスが示した「レジェンドたちと同じテーブルに付く」覚悟<SMASH>

「あなたは、自分が“史上最高のテニス選手”になる可能性を、考えたことはあるか?」

 22歳にして6度目のグランドスラム優勝を果たし、世界1位に返り咲き迎えた、ジャパンオープンテニスの開幕前会見。やや唐突に向けられたその問いに、カルロス・アルカラスは目をぱちくりさせながら、こう答えた。

「そんなことは、ほぼ考えたことがない。僕のテニスキャリアの目標は、レジェンドと呼ばれる人たちと肩を並べるべく、努力を重ねることだから」

 それから4日後の、土曜日の黄昏時。“史上最高候補者”の登場を待ち焦がれて興奮し、同時に不安をも募らせた1万人の観衆が待つコートに、彼は悠然と現れた。

 アルカラスが、2日前の1回戦中に左足首を痛めたことは、ここにいるファンの多くが知っていただろう。欠場するのでは......との懸念を抱いていた人たちも、少なくなかったはずだ。

 そんな観衆の心配を吹き飛ばすかのように、彼は笑顔でファンに手を振り、ジゾー・ベルグスが待つコートに歩みを進めていく。試合開始前のコイントスの際には、ヒザを胸につけるほどに高く跳ねる、いつものルーティンも履行。ソックスの下からのぞくテーピングが、2日前のアクシデントの痕跡として、人々の目にわずかに触れる程度だった。
 「もちろん、不安はあった」と、試合後にアルカラスは打ち明ける。それでも試合前のウォームアップを終え、痛みがないと感じた時、自らにゴーサインを出した。

 アルカラスのサービスで始まった試合は、いきなりのダブルフォールトで幕を開ける。客席から漏れたため息は、セカンドサービスのミスにだけ向けられたものではなかっただろう。

 だが直後、アルカラスはエースを叩き込む。そこからは順当にポイントを重ねて、まずは最初のゲームをキープした。3ゲーム目はブレークされるも、直後のゲームでブレークバック。唸り声と共に叩き込むフォアの強打は、そのインパクト音だけで歓声を誘った。柔らかなドロップショットは、固唾を飲み見守る人々の視線を集め、ゆっくりネットを越えライン際に沈む。

 ただ、それらスーパーショットが飛び出す一方で、サービスキープには苦しんだ。互いに2つのブレークを奪って迎えた、第10ゲーム。ベルグスの2つのダブルフォールトにも助けられ、世界1位がブレークと共に第1セットを奪取した。
  第2セットに入っても、ややぎこちない試合展開は続く。ゲームカウント3-0とリードしたアルカラスだが、サービスゲームでは、足元に刺さる相手の深いリターンの処理にてこずった。

 記者席で試合を見ていた元世界46位の松岡修造氏は、いつものアルカラスに比べるとサービスのトスや着地が乱れ、その原因はやはり左足首にあるのではと見た。

 ただ、サービスゲームに苦しみつつも、ストローク戦での圧倒的優位は変わらない。ドロップショットで相手を走らせ、ミスも巧みに誘っていく。終わってみれば、スコアは6-4、6-3。試合時間は1時間19分。完勝と呼んで、差支えないだろう。
 
 試合後のアルカラスは、「足首の不安を除けば、完璧に近い内容」と自身を評する。その「足首の不安」が顕在化したのは、やはりサービス。

「足首のテーピングに頭が行き、いつものようなスムーズな動きができなかった」ことを認めた。
  その手負いのアルカラスに、「私はセルビア人なので、あえて聞くのですが」と前置きした上で、1人の記者が問うた。

「ノバク・ジョコビッチは、万全ではない時ほど力を発揮することで有名です。そんな彼から、何か学べることはありますか?」

 真摯にうなずきながら質問に耳を傾けていたアルカラスが、答える。

「ノバク、ラファ(ナダル)、そしてロジャー(フェデラー)はいずれも、キャリアを通じ、ケガや問題に直面している時ほど、レベルを引き上げてきたと思う。僕は、ノバクがケガやフィジカル面で苦しんでいる時に、あり得ないプレーをし、勝利を手にする様を、幾度も目の当たりにしてきた。真のチャンピオンとは、いかなる苦境にいる時でも考え、勝利への道を見いだし、それを実践できる人だと思う。そしてそれが、僕が目指していることでもあるんだ」

 初戦でケガを負いながらも、なぜコートに立つのかという問いへの解が、恐らくはここにある。

「レジェンドたちと同じテーブルに付く」ことが、目標だと彼は言う。今大会は、その席に座る権利を得るための、1つの試練となりそうだ。

取材・文●内田暁

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配信元: THE DIGEST

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