人から何かしてもらったら、なぜ人はお返しをしたくなる?
互恵性と似た心理現象に「返報性」があります。これは人から何かしてもらったら、こちらもお返しをしたくなる、という心理です。たとえ義理チョコでも、バレンタインデーにチョコレートをもらったら、「何かお返しをしなきゃ」と思う。これが返報性です。
互恵性の場合、前述のとおり、その好意のやりとりに見返りを期待するところがありますが、返報性はもっと自然な心理だといえます。これはサルにも見られる現象との報告もあり、私たちの本能に根ざしたものかもしれません。
ただ、返報性がもたらすのは好意のやりとりだけではなく、敵意を示せば相手も敵意を返してきます。そのほかに「譲歩の返報性」と「自己開示の返報性」もあり、前者はいわゆる譲り合い、後者はこちらが秘密を打ち明けたら相手も同じようになるというものです。
一般に、ビジネスはギブ・アンド・テイクで成り立っていますが、返報性はギブ・アンド・ギブ。これは職場で円滑な人間関係を築くうえで重要なポイントでしょう。
商売においても、たとえば食品売り場で試食サービスを受けたら、つい「ひとつくらい買わないと」と思ってしまう。これも私たちの返報性がなせるものといえます。
同僚との所得差は多いのも少ないのもイヤ!?「不平等回避」という社会的選好
利他性や互恵性をもつ私たちは、もうひとつ、所得についての不平等を嫌う「不平等回避」という社会的選好をもっています。
この場合の不平等とは、自分の所得だけが高いケースと、周囲に比べて自分だけが低いケースの両方がありますが、そのどちらも嫌うことがわかっています。つまり、自分の所得が多ければそれでよいと考えているわけではなく、どうであれ、私たちは所得の不平等は望ましくないと考えているわけです。
こうした人間のもつ不平等回避という性質は、利他性や互恵性とともに社会的な助け合いや弱者救済システムのベースになっていると考えられます。
しかし、その一方で、興味深い報告がなされています。それは資源分配実験で、印象のよい人・普通の人・印象の悪い人の三者に対して分配の額に違いが見られることです。この実験結果では、印象のよい人は多く、印象の悪い人は少なく分配されていました。図らずもここに不平等が露出しています。
不平等回避の性向をもつ人間ですが、分配においては印象の好悪によって不平等をなす──。
行動経済学の研究は、そんな人間らしい一面もあぶりだしています。

