“カースケ”こと津村浩介(中村雅俊)と、大学時代の同級生である“オメダ”こと神崎隆夫(田中健)、カースケの小学校の先輩である“グズ六”熊沢伸六(秋野太作)の3人は70代になり、付き合いは50年を過ぎている。ある日、カースケの工場にオメダが訪ねてくるが、すぐにその場を後にしてしまう。また別の日、カースケの工場で製作中だったポットが大量に割られる事件が起きる。その中に、かつての恋人・洋子と行った思い出の地、鳥取砂丘で買った砂時計を発見。20年前に病死した洋子を懐かしむカースケだが、グズ六から洋子が生きてると告げられ…。
世代によって感じ方が大きく変化
本連載では星の数でオススメ度を表しているのですが、今回初めてカウント不能とさせてもらいました。
というのも、『俺たちの旅』を放送当時に見ていないのです。自分は高校2年生。もっぱらラジオを聴きながら受験知識を詰め込めるだけ詰め込んでいる時期でした。
もちろん、中村雅俊、秋野太作、田中健の3人のドラマだということは知っていたものの、3人の関係や、その周りを彩る岡田奈々や金沢碧との関係は、本作で一から懸命に追うことになってしまいました。
しかし、ドラマの世界にどハマりした世代、おそらくメインターゲットの70歳前後の感じ方は、自分とはまったく違うことでしょう。
同じように学生だった自分も年齢を重ねた今、映画というスクリーン越しではあるものの、50年後の3人に再会できた感慨は、いかほどかと。
かつて青春していた彼らがジジイになって、それぞれ立場も違って、老け込み方にも差があるが、今も変わらず肩組んで友達ごっこをしている。「だったら自分も久しぶりに会ってみるか」と、行動に移すきっかけになる気がしますね。
そもそも大前提として、70代に入った3人が誰一人欠けていないから本作の企画は成立したわけです。
誰しも「自分たちなりの俺たちの旅を続けている」
3人の友人役で脇を固めていた森川正太は残念ながら2020年に亡くなりました。製作サイドは、50年目のこの機を逃しちゃいかんという感じだったと想像します。
昨年、長嶋茂雄さんが亡くなったりと、いよいよ昭和は終わったと常套句のように言われたりしていますが、実際のところレジェンドたちは、まだまだご健在です。
例えば、かつての私がTVにかじりつくように見ていた『ウルトラマン』。そのスーツアクターだった古谷敏さん、科学特捜隊のアラシ隊員役の毒蝮三太夫さん、このお2人と昨年末、トークショーでご一緒させていただいたんです。
子供の頃に熱狂した番組の出演者の方々に、60年の時を経て、実際にお会いできる奇跡を噛み締めました。
自分はいつまでも過去を手繰り寄せて生きているような人間。それこそ50年以上の付き合いのある友人が何人かいて、たまに顔を合わせては友達ごっこをしています。
先日も、奥さんを早くに亡くし、体調も芳しくない中学時代の同級生に、各方面からいただいたアダルトビデオを差し上げたりして。もう自分は持っていたってしょうがないですから。自分たちなりの“俺たちの旅”を続けているわけでございます。
「週刊実話」1月29日号より
『五十年目の俺たちの旅』
監督:中村雅俊 出演:中村雅俊、秋野太作、田中健、前田亜季、水谷果穂、左時枝、福士誠治、岡田奈々 配給:NAKACHIKA PICTURES TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中
やくみつる
漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
