ラーメンチェーン「天下一品」、通称「天一」には、店舗限定で売られている「噂のコロッケ」というメニューがあるらしい。同店をこよなく愛する筆者は、遅ればせながら最近になってそのことを知った。
元々は京都の総本店でのみ売られていたメニューが、次第に他の店舗にもちらほらと波及していったようである。その結果ちらほらとメディアでも取り上げられていて、知名度も「知る人ぞ知る」以上「定番」未満の、なかなかのものを有していると思われる。
それをあえて今さら記事にすることに抵抗がないでもなかったが、「世の中に天一のコロッケに関する情報があふれているに越したことはなかろう」という独自の理念に基づき、筆者は実食に赴くことにした。
訪れたのは、東京の新宿西口店である。コロッケを提供する店舗一覧などは見つけられず、たまたまSNS上で提供を確認できたのがこの店舗だった。
ちなみに新宿西口店は、2025年6月30日に一度閉店したのち、約4ヶ月後の10月27日、2軒隣の距離に不死鳥のごとく復活したという劇的なエピソードを誇っている。
中に入って着席すると、新規の店舗ゆえに注文用のタッチパネルが用意されていた。個人的にこの形式の「天一」は初めてであった。
初めてではあったが、同店を代表するメニュー、「こってりラーメン」を迅速かつ真っ先に選んだ。不慣れな端末でも着席からここまでわずか数秒である。何はなくとも「こってり」なのである。
そして次に、このたびの主役である「噂のコロッケ」を探す。「単品料理」の項目に無事それを見つけることができた。価格は2個1セットで税込340円だった。
注文を終えてほどなく、まずコロッケの方がソースとともにやってきた。ラーメンも揃うまで手を付けずに待っていようかと思ったが、こんがりと色づいたその見た目につられ、気付けばかぶりついていた。
衣が口の中で軽快な音を立てて崩れ、柔らかな具材がこぼれ出る。じゃがいもの甘みとひき肉の旨味が、一気に広がって味覚に染み渡る。それらを塗りつぶさずに引き立てるソースの濃度も絶妙で、そのうえ食べ応えも申し分ない。
何か異色の特徴があるわけではないが、シンプルにハイレベルなコロッケだ。「単品料理」の枠を超えて「コロッケ主菜の定食」までのし上がることを期待してしまうくらいには、抜かりの無い上質さが感じ取れる。
が、しかし「噂のコロッケ」の本領は、遅れて到着したラーメンによって華々しく開花するものであった。ポタージュ状のスープを目にした瞬間、誰から教えられたわけでもないが、気付けばそこへコロッケを投入していた。
無論、相性が悪いわけはなかった。それどころか、極めて抜群であった。
もし自分がコロッケであったなら、我が身が浸かっているドロリとしたスープをソースと勘違いするに違いない。そんな風にコロッケ側の心理をおもんぱかってしまうくらいには、自然な響き合いが美しい。まるでこの出会いは定められていたかのようである。
鶏ガラと野菜の溶け込んだスープが、衣とその中身にふんだんに絡みつく。それでいてソースと同じように、具材の味わいを損なうことなく活かす。
おまけにソースとは異なる部分もあって、「天一」のスープ特有のとろみが、コロッケに本来存在しないはずの「口どけ」と「喉越し」を与えているのである。このユニークなまろやかさが大変クセになる。この相違点こそが、「噂のコロッケ」の真骨頂だと思う。
なるほど、総本店だけにとどまらず、他の店舗に波及するのも頷ける。と同時に、我がままながら全店舗で食べられないことに口惜しさも覚える。色々と事情はあるのだろうが、「天一」にはコロッケのさらなる配備を期待したい。
とにもかくにも、本商品が一層多くの人の心をつかみ、愛される未来を望むばかりである。「噂のコロッケ」が「皆のコロッケ」となるに越したことはなかろう。
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.
