
書籍『ダンとアンヌとウルトラセブン~森次晃嗣・ひし美ゆり子 2人が語る見どころガイド~』(小学館)
【画像】え…っ? 「アンヌ隊員マジすか」 こちらが『ウルトラセブン』ひし美ゆり子さんの「隊員服を脱いだ私」の姿です
アクシデントに視聴者は「?」
「ウルトラセブン」の胸には、カラータイマーがありません。昭和の「ウルトラ兄弟」が勢ぞろいすると、胸にカラータイマーがないのはセブンだけなので、当時の子供たちは疑問を感じていたと思います。
その理由については、スタッフの裏話が出ており、後年になって作られた設定も雑誌等で紹介されています。
まず、そもそも『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』は、別世界の物語として制作されていました。本来、セブンの世界にウルトラマンは存在しないので、活動限界の設定を引く継ぐ必要もなかったわけです。そのため、セブンは変身から2時間以上が経過する展開もありました。
また、セブンのビジュアルをデザインした成田亨さんも、最初から胸にカラータイマーを描いていません。成田さんは「ウルトラマン」もデザインしていますが、自分が描かなかったカラータイマーを、あとで付け足されたことの反発だったという説もあります。その予防策として、セブンの額に「ビームランプ」を組み込んだそうです。
そのビームランプは、有効活用されることになります。最初は、必殺技「エメリウム光線」が発射される部位として機能しますが、第11話「魔の山へ飛べ」で異変が起こりました。
竜型ロボット怪獣「ナース」と戦闘中、セブンがピンチの状況で、突然ビームランプが点滅したのです。映像の時間は約5秒で、色は緑のまま、警告音も鳴りませんでした。セブンはその直後にナースを倒し、空へ飛び立ちます。
視聴者は、「セブンにもカラータイマー的な制限時間があったのか?」と、驚いたはずです。しかし、ナレーションの説明もなく、点滅時間も中途半端なので、どう解釈すれば良いのか疑問が残りました。
実は、このビームランプ点滅は、一部で電極の接触不良で発生した偶然の出来事だったという説があります。セブンが背中から地面に倒れるシーンの直後なので、その衝撃によるアクシデントだったのかもしれません。

ウルトラ6兄弟を主題としたオリジナルストーリーの舞台『ウルトラ6兄弟 THE LIVE in 博品館劇場』。2019年から2020年にかけて上演された。ウルトラマン、ウルトラセブン、ゾフィー、ウルトラマンジャック(新マン)、ウルトラマンエース、ウルトラマンタロウが共演 (C)円谷プロ
エネルギーが消耗すると点滅! だけど、さじ加減は微妙
ただ、第11話がきっかけとなったのか、新しい設定が第25話「零下140度の対決」で生まれます。セブンの故郷「光の国・M78星雲」に冬がないことに目を付けた「ポール星人」は、「ウルトラ警備隊」基地周辺に大寒波をもたらしました。狙い通り、セブンには「寒さ」という弱点があったのです。
凍結怪獣「ガンダー」とカプセル怪獣「ミクラス」を戦わせ、主人公「モロボシ・ダン」はセブンに変身しますが、すぐに緑のビームランプが点滅します。ここで、ナレーション説明が入ります。
「寒さと戦うため、著しくエネルギーを消耗したウルトラセブンには戦闘能力がなかった。セブンは残り少ないエネルギーで太陽の近くまで飛び、エネルギーを補充しなければならなかったのだ」
そして、セブンは雲を突き抜け、太陽エネルギーを補充して地上に戻ると、ガンダーを倒します。極寒に立つセブンのビームランプは、すでに激しく点滅していました。
これで、正式にビームランプの点滅の設定が固まりました。番組も3クール目を迎えるにあたり、なにか新展開が欲しかったのかもしれません。ウルトラマンのように活動時間を知らせるのではなく、あくまで「エネルギー消耗」のバロメーターとして機能するようになり、これ以降の残り24話中、少なくとも5回のビームランプ点滅シーンがありました。
ただし、警告音が鳴らないので、点滅を目視できないセブンが身の危険を理解できていたのかは不明です。
ひとつ疑問なのは、誰が見てもエネルギーの消耗が激しかった最終話「史上最大の侵略(後編)」で、双頭怪獣「パンドン」と対戦した際は、なぜかビームランプは点滅しませんでした。これはファンのあいだでも、ミステリーとされています。
ウルトラシリーズとして設定が増えた
『ウルトラセブン』本放送終了後、『帰ってきたウルトラマン』からは、シリーズとして世界観がつながり、「ウルトラ兄弟」などの設定が生まれました。後年に付け足されたセブンのプロフィールでは、「カラータイマーは地球に長期滞在する際に手術で取り付けられるものであり、恒点観測員のセブンには本来必要のないものだったため、ビームランプがその代わりを務めている」という風に説明されました。ファンに対する、優しい配慮だったように思います。
余談ですが、『ウルトラセブン』本編で使用されたビームランプの機能は、「エメリウム光線」のほかに、敵の攻撃を打ち消す「無力化光線」、カプセル怪獣「ウインダム」の頭脳を正常にするため放った「エメリウム覚醒光線」の3つが確認されています。
