フェイエノールト加入3年目、上田綺世は今、ストライカーとして充実の時を迎えている。エールディビジ第18節を終えて18得点。この爆発的な数字を前に、オランダのメディアや識者たちも、この日本人ストライカーについて語らずにはいられない。
その評価の決定的な物差しとなったのが、1試合4ゴールという驚異のパフォーマンスでズウォーレを粉砕した一戦(15節:6-1で勝利)だ。
かつてのオランダ代表MFであり、現在は確かな観察眼を持つアナリストとして知られるマルシアーノ・フィンク氏を唸らせたのは、上田がハットトリックを完成させたチーム4点目のシーンだ。
「これほど見事なヘディングシュートにお目にかかる機会は滅多にない。後方に下がりながら、ゴール隅の完璧な位置へコントロールする技術……。まさに唯一無二だ。正直、あんな芸当ができるのはルーク・デ・ヨング(昨シーズンまでPSVでプレー。現所属はポルト)くらいだと思っていたが、ウエダの技術は、今やそのデ・ヨングの域に極めて近い。彼のステップワークは軽快で、その意識は常にゴールへと研ぎ澄まされている」
バルセロナやセビージャでも活躍したデ・ヨングは、「圧倒的な空中戦の支配者」として欧州の並み居るDF陣を苦しめてきた。その名ヘッダーを引き合いに出されること自体、現在の上田にとって最大級の賛辞と言えるだろう。オランダメディア『Voetbal International』のトム・クニッピング記者は、デ・ヨングの後継者として、上田を「新たなヘディングの怪物」に指名する。
フェイエノールトの専門メディア『FR12.nl』のコラムニスト、マタイス氏もまた、上田が到達した「驚異的な領域」に目を細める。彼がズウォーレ戦の4ゴールの中で特に称賛したのは、スルーパスを引き出し、相手DFの間を強引にこじ開けてニアサイドを射抜いたチーム2点目のシーンだ。 その進化の様子を近くで見つめるロビン・ファン・ペルシ監督の眼差しはあくまで厳しい。前述の4点目が決まった瞬間に見せた、「あれを叩き込むのか」と言わんばかりの呆れ果てた表情――。それは、教え子の才能を認めた瞬間でもあったが、同時に指揮官は、ストライカーが向き合うべき宿命について、こう語っている。「一度頂点に立ったのなら、3日、4日おきにやってくる試合のたびに、その場所に留まり続けなければならない。自分自身にそれを課せるか。やり続けることこそが、彼に課された真の試練だ」
一方で、オランダサッカー界のレジェンド、マルコ・ファン・バステン氏の評価はどこまでも辛口だ。「空中戦は強く、リスペクトに値する数字だ。だが、私を完全に納得させるには至っていない。今はまだ『固め打ちの好調な時期』に見えてしまうんだ」
このミランなどでプレーした稀代のストライカーは、PSVやセルティック(ヨーロッパリーグで対戦)といった強豪を相手に苦戦した例を挙げ、上田が欧州のトップ、あるいは準トップレベルで通用するかについては、依然として懐疑的な姿勢を崩さない。「彼はもう27歳だ。もはや若手タレントと呼べる年齢ではないからね」と、手厳しい見解を付け加えている。
元オランダ代表MFテオ・ヤンセン氏も、ボックス内でのフィニッシャーとしての資質を認めつつ、ビルドアップへの関与について「突出してはいない」と注文をつける。
「ヘディングの怪物」として認められながらも、求められるのは「継続性」と、強豪をも沈める「絶対的な説得力」。 この贅沢なまでのハードルの高さこそ、上田がフェイエノールトというオランダの名門で到達したステイタスの証明に他ならない。
文●下村正幸
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