新年早々、旧知の中国東北部の共産党幹部から「娘を養女にしてほしい。謝礼に2000万円あまり用意している」という驚きの依頼がきた。
筆者はかつて中国に長く住み、様々な中国人と付き合ってきた時期があるので、中国人の「会社を一緒に経営しよう」「中国妻を1万元(22万円)で世話する」「ビザ取得のために10万円で結婚する日本人を探してくれ」とか、常識を超えた依頼に驚かなくなっていたが、正月明けの依頼にはさすがに驚いた。
その老幹部と出会ったのは、中国が高度経済成長を始めた2000年代の初めだ。日本人に知られたある都市の若手書記長に抜擢され、さらなる出世のために日本企業の進出を促したいので協力してほしい、というのがきっかけだった。
書記長の都市が企業誘致にいかに努力しているかを、筆者が携わるメディアでアピールしたり、工業団地の企業誘致見学セミナーを開催して親しくなった。
市政府の宴会に招かれた。個人的な食事会にも何度か誘われた。その際に同席した女性は東北3省の美人コンテストで優勝したほどの美貌の持ち主だったが、あとで「妾」と知った。老幹部の子供は「一人っ子の息子」だけである。つまり、養女とは妾のことだ。
それにしてもなぜ、妾を日本人の養女にしたいのだろうか。
出世街道を走った若手書記長も、今や70代を目前にした老人である。退職後も元共産党高級官僚として権勢を誇っていたが、習近平政権が発足して「賄賂と汚職」の追放に乗り出すと、甘い汁をさんざん吸ってきただけに、追及されやしないかと心配する日々なのだ。
繰り返すが、老幹部は革命第二世代である。習近平主席と同様に、両親や身の回りから毛沢東時代の権力闘争の酷さ、理不尽さを叩き込まれて育った。
それだけに、不動産バブルが破綻し、国民に経済成長という果実を与えられなくなった習近平政府がどんな手を打つか、不安なのだ。
老幹部は言った。
「国家の金庫が空っぽになっている。今後、習近平政府はなりふり構わずに、カネをかき集めるはずだ」
要するに、習近平中国は文化大革命に匹敵するような社会の構造を変える理由を並べ、富裕層の財産を没収すると恐れているのだ。それで財産を安全な日本に避難させるためにまず、妾を日本人の養女に仕立て、国籍変更を実現し、いつでも日本に逃げられるようにしたいというのである。
これが現在の中国の姿を映し出す、ひとつの側面といえよう。
(団勇人)

