秋田県秋田市とJリーグの間で行われていたスタジアム整備をめぐる協議が、思わぬ形で表に出た。
秋田市議の若松尚利氏が情報公開請求を行い、市が開示した「Jリーグ協議議事要旨(令和7年11月10日実施)」の一部がXで公開されたことで、これまで外部からは見えなかった協議での具体的なやり取りが明らかになったのだ。
ここに気になるくだりがいくつかある。まずは議事要旨に記されていた、Jリーグ側の担当者の「ある発言」だった。
「Jリーグができて37年。降雪地域のスポーツ環境が全く良くなってない。コンサドーレが何百億もするようなスタジアムを造ったが、子どもたちが何かするようなことはできない。秋田のこのスタジアムで冬でもそういうことができればよい」
子供や地域に目を向けたものとして受け取れる一方で、「コンサドーレが何百億もするようなスタジアムを造った」という言い回しが、札幌ドームをクラブの自前の施設のように語っているように映るのだ。
そもそも札幌ドームはコンサドーレが自費で建設した施設ではない。建設費は約537億円。主体は札幌市で、整備や返済、維持は市の財政と切り離せない。運営は市が株主となる第三セクター「株式会社札幌ドーム」が担ってきた。札幌ドームは「クラブの所有物」ではなく、自治体が整備し、維持してきた公共施設である。
なぜこうした認識のズレが生まれるのか。
Jリーグやクラブにとって、スタジアムは試合の舞台であり、日常的に使う活動拠点である。使い続けるうちに「自分たちのホーム」という感覚が強まっていくのだろう。その過程で、所有と利用の区別が曖昧になってしまったのだ。
もうひとつの気になるくだりはというと、
「スポーツに理解のない方、興味がない方も多く、既存のスタジアムがありながら隣に新しいスタジアムを造るのは難しいということは理解している」
これはJリーグクラブライセンス事務局・大城亨太氏の発言である。
スタジアムが二つ並ぶことに疑問を持つのは、スポーツに興味がないからとは限らない。むしろ関心があり、現状を知っているからこそ「なぜ二つ必要なのか」「今ある施設では何が足りないのか」と考える。
今回、協議の中身が見えたことで、スタジアム問題がつまずきやすい理由が浮かび上がった。自治体が向き合っているのは、夢や物語だけではない。建設費はいくらかかるのか。返済は何年続くのか。維持管理費は年にどれほど必要なのか。赤字が出た場合、誰が補填し、住民にどう説明するのか。公共施設である以上、スタジアムには数字と責任が必ずついて回る。
議論の土台を再度、固める必要があろう。
(ケン高田)

