最新エンタメ情報が満載! Merkystyle マーキースタイル
脳トレ四択クイズ | Merkystyle
「最後のパトロン型オーナー」コンミッソ会長を失ったフィオレンティーナの未来――「財政的な不安要素は一切存在していない。問題は…」【現地発コラム】

「最後のパトロン型オーナー」コンミッソ会長を失ったフィオレンティーナの未来――「財政的な不安要素は一切存在していない。問題は…」【現地発コラム】

1月16日、かねてから病気療養中だったフィオレンティーナのロッコ・コンミッソ会長が、ニューヨークの病院で死去した。2019年にクラブを買収して以来、全権を握ってクラブを運営してきた76歳のオーナー会長を失ったフィオレンティーナの未来は今、不確定要素に満ちている。

 コンミッソ会長は、南イタリア・カラブリア州から12歳で家族と共にアメリカに渡ったイタリア系アメリカ人。コロンビア大学卒業後にビジネスの道に入り、自宅のガレージで創業したケーブルTV会社『メディアコム』を、アメリカで7番目の規模にまで成長させて億万長者になった立志伝中の人物だ。

 幼少期から親しんでいたサッカーをアメリカに渡ってからも続け、スポーツ奨学生として大学に入ったほどのサッカー好きで、1972年ミュンヘン五輪の代表候補に入っていたとも伝えられる。ビジネスで大きな成功を収め引退も近くなった2010年代後半、セリエAのクラブ買収に動いたのは「母国イタリアに恩返ししたい」という動機からだった。

 2018年には、当時中国人オーナーの手中にあったミランの買収に近づいたが交渉が成立せず、翌19年に高級ブランドTod'sのオーナーであるデッラ・ヴァッレ家から、フィオレンティーナを約1億5000万ユーロ(当時約180億円)で買い取った。

 それからの6年あまり、フィレンツェ郊外のバーニョ・ア・リーポリにイタリアはもちろん欧州でも最先端のトレーニングセンター「ヴィオラ・パーク」を建設するなど、中長期的な視点に立ったクラブの基盤強化に努めながら、UEFAカンファレンスリーグ2年連続決勝進出、コッパ・イタリア決勝進出など、ピッチ上でも一定の成果を積み上げてきた。

  不運だったのは、買収以来ゼネラルダイレクター(GD)としてクラブ経営の全権を担っていた「片腕」ジョー・バローネが24年3月、遠征先のベルガモで心臓発作に見舞われ、57歳の若さで世を去るという不測の事態に見舞われたこと。すでに70代半ばを迎えていたコンミッソにとって、フィオレンティーナを次の世代にまで引き継いで行くうえで、全幅の信頼を寄せて経営を委ねられるバローネの存在が決定的に重要だったことは容易に想像がつく。

 バローネを失ってからの2年間は、後任のGDに就いたイタリア人アレッサンドロ・フェラーリ、メディアコムの財務責任者でもあるアメリカ人マーク・ステファンの2人がクラブ経営を担ってきた。その一方でコンミッソは、ここ1年あまり健康状態が徐々に悪化し、それまでのように年に数回フィレンツェを訪れることもできなくなった。アメリカ側のオーナーシップ、イタリア側のガバナンスの双方が、それぞれ弱体化したような格好だった。

 はたして、昨シーズン後半から今シーズンにかけてフィオレンティーナには、クラブの内部で何かが噛み合わなくなったかのように、ネガティブな出来事が立て続けに起こる。チーム強化を巡る意見の相違によるラファエッレ・パッラディーノ監督の辞任(25年5月)、後任に招聘したステーファノ・ピオーリ監督とチーム陣容のミスマッチによる今シーズン前半の大不振(9月の最下位転落)、コンミッソによる買収当初から強化責任者を努めてきたダニエレ・プラデSD(スポーツダイレクター)の引責辞任(11月)――。

 コンミッソ会長を失った今、フィオレンティーナはどうなるのだろうか。チームはピオーリの後任パオロ・ヴァノーリ監督の下でどうにか降格圏を脱出し、プラデの後任には2月から元ユベントス、トッテナムのファビオ・パラティチの就任が決まるなど、立て直しは少しずつ進んでいる。クラブの財政はきわめて健全であり、負債はゼロ。UEFAやFIGC(イタリアサッカー連盟)の財務基準はすべて余裕でクリアしている。そうした面で、クラブの存続に関して不安要素は一切存在していない。

  問題は、残されたコンミッソ家、すなわちキャサリン夫人と息子のジュゼッペ・コンミッソに、今後もフィオレンティーナを保有し続ける意志があるのかという点に集約される。キャサリン夫人は夫と同じイタリア系移民で、フィオレンティーナ買収やその後の経営をめぐる意思決定に積極的に関与し、時には決定的な役割を果たしてきたとも伝えられている。ジュゼッペも父とともにしばしばフィレンツェに姿を見せてきた。しかし2人にとって現在の最優先事項は、フィオレンティーナではなく本業であるメディアコムの経営だ。

 同じアメリカ人オーナーでも、非イタリア系のフリードキン家(ローマ)やクラウス家(パルマ)にとって、保有するセリエAクラブはファミリービジネスにおいて戦略的な位置を占めるアセット(資産)のひとつという位置づけだ。

 しかしコンミッソ家にとってのフィオレンティーナは「イタリアへの恩返し」、言ってみれば「父の道楽」に近い。その意味でロッコ・コンミッソは、シルビオ・ベルルスコーニやマッシモ・モラッティ、フランコ・センシの系譜につながる「最後のパトロン型オーナー」だったと言えるかもしれない。

  コンミッソがこの6年間でフィオレンティーナに投じてきた総額は、クラブ買収費用、ヴィオラ・パーク建設費、メディアコムの胸スポンサーフィー、そして毎年の赤字補填を合わせて、およそ5億ユーロ(約925億円)に上るとされる。それを支えてきたのはコンミッソ会長の情熱であり、それ以外ではない。

 はたして、キャサリン夫人、そしてジュゼッペ・コンミッソは、それと同じ熱量(と資金)をフィオレンティーナに注ぎ込むことができるのか、そもそもそうしようという意志を持っているのか――というのは、当然浮かび上がってくる疑問である。

 もちろん現時点では、コンミッソ家は今後もフィオレンティーナにコミットし続ける、という立場を表明している。しかしそれが人的にも資金的にもきわめて大きな負荷をもたらす仕事であることも明らかだ。ベルルスコーニ家やモラッティ家、センシ家がそうだったように、「次の世代」が持ち続けるよりも手放すことを選ぶ可能性は十分にあるだろう。

 幸運なのは、フィオレンティーナがホームタウンの格、クラブの財務状況、いずれの観点から見てもプロサッカークラブとしてかなりの「優良資産」であり、しかも同じアメリカの投資ファンドを筆頭に潜在的な買い手には事欠かないであろうこと。それがいつ起こるかはまだわからないが(起こらない可能性ももちろんある)、想定されるひとつのシナリオとして考慮に入れつつ、今後の動向を見守っていく必要があるだろう。

文●片野道郎

【動画】ボローニャに勝利したフィオレンティーナの最新試合!

 
【記事】セリエA前半戦総括「伸びしろを残す」好調の4位ユベントス、「5大リーグ全体で最少失点」の5位ローマはFW2人獲得【現地発コラム】


【記事】セリエA前半戦総括 “冬のカンピオーネ”インテル、2位ミラン、3位ナポリ 戦いぶりから見るトップ3の現在地【現地発コラム】

配信元: THE DIGEST

あなたにおすすめ